50 / 57
大輔(万恵パパ)⑤
④
しおりを挟む
ブルルルル……
「あ、電話だ」
なんとまぁ、こんなタイミングで愛子のスマホが振動した。愛子は洗濯を中断し通話を始めた。大輔はがっくりして、一人虚しく洗濯物を干す。なんとなく糖尿ぽい話をしているから、仕事の関係者か。愛子にとっては大輔より万恵や糖尿の方が優先順位が高いんだ。どうせ。
「大ちゃんおはよ」
洗濯物を干し終わった頃、なんと万恵も自主的に起きてきてしまった。運動会で疲れたからいつまでも寝るのではないかという予想は外れたかっこうだ。
「おやつは?」
「おやつか。アイスバーかな。冷凍庫にあったような」
「今日楽しかったぁー運動会!」
体力がついたんだな。大輔は気を取り直して万恵とアイスバーを食べた。そのうち愛子が戻ってきて、三人で食べた。
いいか。これでも。これでも幸せじゃないか。
愛子は先程の話はなかったかのように、いつもどおり振る舞っている。アイスの棒を片付け、冷蔵庫を見て夕飯を考えているようだ。大輔もテレビでも見ようかと立ち上がった時、万恵がふいに言った。
「ねぇねぇ、うちはもう赤ちゃんはうまれないの?」
「え!」
「え?」
え。
「らんらんの家がね、春になったら赤ちゃんがうまれるんだって。それにさぁ、みうちゃんや礼雄には弟がいるし、しーちゃんには妹も弟もいるし。うちには生まれないのかなーって」
「……」
大輔と愛子は顔を見合わせた。そして、どちらからともなく吹き出してしまった。
でかした万恵。
「生まれないかなー」
万恵はそう言いながら立ち上がり、自分の部屋へ上がって行った。
これで展望が開けた。大輔はすかさず台所の愛子のところへ移動して、思いきり抱き締めて耳打ちした。
「……そろそろセックスしようぜ!」
愛子の顔が怖くて見れなかったが、すぐに腕の中で爆笑しているのがわかって、なんだか長年の雲が晴れたような気持ちになった。まだ目的は果たされていないっていうのに。
「あ、電話だ」
なんとまぁ、こんなタイミングで愛子のスマホが振動した。愛子は洗濯を中断し通話を始めた。大輔はがっくりして、一人虚しく洗濯物を干す。なんとなく糖尿ぽい話をしているから、仕事の関係者か。愛子にとっては大輔より万恵や糖尿の方が優先順位が高いんだ。どうせ。
「大ちゃんおはよ」
洗濯物を干し終わった頃、なんと万恵も自主的に起きてきてしまった。運動会で疲れたからいつまでも寝るのではないかという予想は外れたかっこうだ。
「おやつは?」
「おやつか。アイスバーかな。冷凍庫にあったような」
「今日楽しかったぁー運動会!」
体力がついたんだな。大輔は気を取り直して万恵とアイスバーを食べた。そのうち愛子が戻ってきて、三人で食べた。
いいか。これでも。これでも幸せじゃないか。
愛子は先程の話はなかったかのように、いつもどおり振る舞っている。アイスの棒を片付け、冷蔵庫を見て夕飯を考えているようだ。大輔もテレビでも見ようかと立ち上がった時、万恵がふいに言った。
「ねぇねぇ、うちはもう赤ちゃんはうまれないの?」
「え!」
「え?」
え。
「らんらんの家がね、春になったら赤ちゃんがうまれるんだって。それにさぁ、みうちゃんや礼雄には弟がいるし、しーちゃんには妹も弟もいるし。うちには生まれないのかなーって」
「……」
大輔と愛子は顔を見合わせた。そして、どちらからともなく吹き出してしまった。
でかした万恵。
「生まれないかなー」
万恵はそう言いながら立ち上がり、自分の部屋へ上がって行った。
これで展望が開けた。大輔はすかさず台所の愛子のところへ移動して、思いきり抱き締めて耳打ちした。
「……そろそろセックスしようぜ!」
愛子の顔が怖くて見れなかったが、すぐに腕の中で爆笑しているのがわかって、なんだか長年の雲が晴れたような気持ちになった。まだ目的は果たされていないっていうのに。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説

地獄の業火に焚べるのは……
緑谷めい
恋愛
伯爵家令嬢アネットは、17歳の時に2つ年上のボルテール侯爵家の長男ジェルマンに嫁いだ。親の決めた政略結婚ではあったが、小さい頃から婚約者だった二人は仲の良い幼馴染だった。表面上は何の問題もなく穏やかな結婚生活が始まる――けれど、ジェルマンには秘密の愛人がいた。学生時代からの平民の恋人サラとの関係が続いていたのである。
やがてアネットは男女の双子を出産した。「ディオン」と名付けられた男児はジェルマンそっくりで、「マドレーヌ」と名付けられた女児はアネットによく似ていた。
※ 全5話完結予定


隣人はクールな同期でした。
氷萌
恋愛
それなりに有名な出版会社に入社して早6年。
30歳を前にして
未婚で恋人もいないけれど。
マンションの隣に住む同期の男と
酒を酌み交わす日々。
心許すアイツとは
”同期以上、恋人未満―――”
1度は愛した元カレと再会し心を搔き乱され
恋敵の幼馴染には刃を向けられる。
広報部所属
●七星 セツナ●-Setuna Nanase-(29歳)
編集部所属 副編集長
●煌月 ジン●-Jin Kouduki-(29歳)
本当に好きな人は…誰?
己の気持ちに向き合う最後の恋。
“ただの恋愛物語”ってだけじゃない
命と、人との
向き合うという事。
現実に、なさそうな
だけどちょっとあり得るかもしれない
複雑に絡み合う人間模様を描いた
等身大のラブストーリー。


極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる