愛してるんだけど

沢麻

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大輔(万恵パパ)⑤

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 万恵は出番の三競技を無事終え、大輔も動画を無事撮り終えた。保育園の運動会は午前中で終わるので、弁当要らずで帰る。レジャーシートを畳んでリュックに入れていると、万恵と結ちゃんが一緒に戻ってきた。二人はじゃあね、と手を振り合って、お互いの家族の元に向かったが、なんと結ちゃんのパパが来ていたので大輔は万恵にお疲れ様と言って抱っこした肩越しについガン見してしまった。美穂ちゃんはそういえば、夫婦でちょっと問題があるようなことを言っていたが、解決したのだろうか。別に仲が悪そうには見えないが、それより背が高くて知的な男で見た瞬間苦手意識が先行した。そうか、やっぱり美穂ちゃんは知的なイケメンが好きだったのか。あーあ、なんとなく大輔に好意を持ってくれているような気がしていたが、こりゃ勘違いだ。全然タイプが違うし、こちらの完敗である。するとふいに結ちゃんパパがこちらを見て、ニヤニヤした。大輔は自分の視線に気付かれたのかと思ったが、万恵の家族だからチェックしただけかもしれないと思い直した。しかし今度はいきなり手を挙げて挨拶してきたので無駄にびっくりした。横を見ると愛子が小さく手を振っている。
 「……高校の先輩だ」
 「えっ!」
 「結ちゃんのお父さんだったんだ」
 「まじかよ」
 「まぁ地元で腰を落ち着けるとよくある話かもだよね」
 確かに愛子の高校にはこの辺りの勉強の出来る人がだいたい進学している。リアルな知的だったか。
 「えっなになに?」
 万恵が話に入ってきたが愛子はうまくはぐらかし、万恵と手を繋いで家路についた。

 しかし高校の一先輩を三十五にもなった今鮮明に覚えているものだろうか。相当仲良くないと無理ではないか? 大輔の頭にもやもやと雲がかかる。部活が同じとか? あ、愛子は高校は部活やってなかったような……。あるいは委員会とか、サークル的なやつとかで一緒だったとか? まぁ確かに愛子は目立つし、結ちゃんパパも目立ちそうだからそうじゃなくても関わりが?
 「ねぇ元彼とかじゃないよね?」
 「は?」
 万恵が昼寝した後、二人で洗濯物干しを分業しているとき大輔はつい訊いてしまった。いや、たとえ元彼でも愛子が言うわけないのだが、一度考え出すと止まらない。
 「普通、覚えてないよ先輩とか」
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