愛してるんだけど

沙織(駿斗ママ)④

①

 駿斗は入院五日目で退院となった。入院中はエリーが随分助けてくれて、退院の日も車を出してくれた。
 「退院おめでとう駿斗。明日から保育園行けるんだよね？」
 「うん。早く行きたい」
 駿斗は食欲もすっかり戻った。ただ、美穂はハンバーグ屋に戻るのが億劫だった。暫く休んだので、もう気持ちが離れている。
 眼鏡君はどうしているだろう。
 やっぱりちょっと、好みだったなと沙織は思った。頭が良さそうだけど、女慣れしてる悪そうな男。もう多分ない。会うこともないだろう。
 ラインを送りたくて、でも踏み切れなくて、結局やめた。代わりに美穂にラインすることにした。
 《退院したよ！ 結局エックスエックスは落ちたっぽくて、でももうハンバーグ屋もなんかやる気でなくて(笑)どうしたらいいかな？ 美穂ちゃんならこんな時どうする？》
 敦子達に相談するより実のある返事が返ってきそうだ。
 「もう運動会の練習してるかなぁ」
 駿斗が呟いた。もうそんな時期か。保育園では運動会の二週間前くらいから練習を始める。
 「何やるのかな」
 「明日、楽しみだね」
 日常が戻ってくる。沙織は、何を楽しみに生きよう。
 結局、朝川と別れてからちょっと自分は荒れたんだなと思った。男がいないと生きられない。母親になって緩和されたかと思っていたけど、変わっていないのだ。
 今度は婚活アプリにしよう。沙織は婚活アプリと、就活アプリをインストールした。