愛してるんだけど

沢麻

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沙織(駿斗ママ)②

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 眼鏡君は同じ界隈にあるバーに居た。朝川と付き合う前に、よくアフターで利用した店だ。
 「もっと話したいって言ってたから、待ってたよ」
 眼鏡君はウイスキーを飲んでいた。沙織はここではよくわからないが見た目が可愛いカクテルをいつも頼む。
 「ごめんね、さっき」
 「べつにサリーが悪いわけじゃないし」
 沙織は「サリー」という源氏名で働いている。エリーとサリーで揃えて、もう一人もまりなという名前なのでマリーだ。
 「俺、ああいう二次産業的な人達と永らく接してないから、扱い方がわかんなくてね」
 二次産業とはなんなのかよくわからないが、眼鏡君もさっきのことは気にはしているようだ。意外と繊細だったりして。
 「ママがうまくやってくれたから。ねぇ、めがねっちはさ、どうしてあのアプリしてたの? 彼女が欲しいの?」
 もう待っていてくれた時から、色々とハードルが下がった。お互い酔っているし沙織は攻めの姿勢で臨むことにした。
 「そうに決まってるじゃん。仕事と関係あるとこで彼女作ると面倒だからね。サリーは?」
 「結婚したくて」
 眼鏡君は吹き出した。
 「ちょ、もっと婚活っぽいアプリあるでしょ」
 「男と別れたばっかでそこまで頭回んなかった」
 「まじ。俺とはテンションが違うわけね」
 やっぱり眼鏡君は、結婚したいわけではないのだ。
 「重いか」
 「重いな」
 「あたし、軽くてもそれはそれでいいんだけどね」
 「おっ。強がり始めたか。そういう演技するからちゃんとした奴と付き合えないんじゃないの? 女が一人で生きてくなんて大変でしょ。素直になって、真剣に恋愛しなきゃ」
 遊び目的のくせに、なんだか説教くさい。しかし、強がりと言われればそうなのかもしれないと思った。沙織は朝川の前で、いつも演技していたかもしれない。
 「そんなこと言っても、あたしのことどうにもしてくれないんでしょ? 口ばっかりだと説得力ないよ。いいよ、無理なら無理って言ってくれても。あたしは、めがねっちイケメンだし好みだけどね。だから今、イケメンと飲んでるだけでちょっと気分上がる」
 沙織は笑って見せた。自分が何を言ってるのかよくわからない。
 「サリー可愛いから、俺待ってたんだけどね。結婚はしてやれないけど、軽めの付き合いならしたいけど」
 ……駄目だ。こいつ駄目な男。都合のいい女、探してるだけだ。絶対他にいる。結婚してるか、彼女いる。でもやりたい。寂しい。深みにはまらなければ、本命が出来るまでの繋ぎとしてこっちも利用すれば、それもあり?
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