美人って

沢麻

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結婚します!

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 猫山とは毎週会っていたが、丸一日一緒、というのはあまりなかった。日曜日猫山が用事あるから、と土曜日は日帰りしたので、紗耶香は久しぶりに花怜を誘ってランチからのショッピングに行くことにした。花怜は保育園近物件から引っ越して今は実家住まい、求職中でたまにバイトをしているという。保育士なら求人は溢れているが、まだ抵抗があるようだった。
 話題には事欠かずランチだけで三時までかかってしまった。待ち合わせしたビルを出て、狙い目の安くて可愛いショップに向かう途中、紗耶香は思いがけないものを目にした。
 猫山が、小さな女の子の手を引いて歩いている。
 花怜は遠くから猫山を判別できるほど彼をよく知らないので気付かない。猫山はそのまま雑貨屋に入っていく。せっかく花怜と二人で久しぶりにショッピングだから、余計なことは考えたくないのに……。
 どうして猫山が小さな女の子といるの?
 どうして猫山が小さな女の子と?
 ひょっとして、ひょっとしたら、猫山が既婚子持ちだったってオチ?
 よくあるよね、既婚なの隠して付き合っててって……
 「あ、ここちょっと見たい」
 「え?」
 花怜がよりによって猫山が女の子と入っていったショップを指差した。
 「ええっ? あっちのほうがいいじゃん」
 「あっちってどこよ」
 「いや、だからほらあっちにさぁ」
 早くここから離れたいような、中を覗いて確かめたいような、いや、離れたほうがいいに決まってる!
 「ほら四丁目のほうの!」
 「あれ、紗耶香」
 「!」
 店の前でもたもたしていたら、猫山が出てきてしまった。しかも話しかけてくるってどういうこと? 女の子とは手を繋いだまま……
 馬鹿にしてるの?
 花怜は猫山に会釈して女の子を見ると、即座に状況を理解したらしい。花怜を置いて走り出した紗耶香の後を追いかけてくる。
 「えっ待てよ」
 猫山が何か言っている。待てよって、待てよって何。その女の子は何なの!
 「紗耶香、待って」
 花怜が息を切らして追い付いてきた。紗耶香は路地に入り、座り込んだ。心臓がうるさい。あぁ、失恋だ。猫山のことが、いつの間にか好きになっていたんだ。
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