美人って

沢麻

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純粋です!

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 またやってしまった。
 猫山の車に初めて乗り、運転している猫山を見ると非常にかっこよくてスギさんのことはしばし忘れた。紗耶香は免許がない。だから車の運転自体に憧れがある。保育士仲間は紗耶香のような無免許か、ペーパードライバーが多い。金沢は車があるが一緒に行動するときはほぼ飲み会なので運転する姿など見る機会がない。
 運転している男って、リードしてくれてる感じがしてたまらない。
 本当に単純明快な思考で我ながらびっくりするが、そんなことでまたガードがゆるむのだった。結局牛丼屋からのホテルコースになってしまった。
 「ねぇ猫山さんて年収いくらくらいなの?」
 開き直って興味のあることを訊くことにした。どうせ遊ばれてるんだから、猫山のようなタイプの男の懐を探って社会勉強だ。
 「は? なんでいきなり。安いよ」
 「だってさぁ、こんな毎週外食できたり車持ってたりホテル代出したりできるとか、どのくらいの年収で出来るのか気になるじゃない」
 「四百ないよ。だいたい三百万代」
 猫山も紗耶香に見栄を張る気はないのかさらっと答えた。このドライなところもなかなかいい。しかし三百万代か。結婚相手としてはちょっと不安な金額だが、それでもこの地域で今の不景気だとこんなもんなのか。
 「へぇー」
 「紗耶香は?」
 「私の聞く? まじワープアで笑えるよ」
 紗耶香は二百ちょっと、と答える。悲しくなる。手取りは十五万もないんだから。すると猫山は思いがけないことを言った。
 「ふーん、じゃあ二人合わせれば五百は超えるんだな」
 えっ。
 どうして二人合わせた金額をわざわざ考える必要が?
 まさか、猫山は紗耶香と実は付き合っているつもりだったりして。実は結婚もありだと思っていたりして。
 いや、保育士の年収の相場を知りたかっただけかも。期待しないぞ。騙されないんだから。
 そうこうしてるうちに猫山は寝てしまった。これは朝帰りになりそうだ。紗耶香は家族の誰に連絡するかいつも迷う。両親はちょっとさすがに。弟は論外として、やっぱり亜由里がうまくやってくれるだろう。
 「ちょっと今日泊まりになる。うまいことよろしく」
 そう送って、紗耶香はスマホを放り投げた。何やってるんだろう。もう二十五歳なのに。
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