16 / 35
純粋です!
①
しおりを挟む
またやってしまった。
猫山の車に初めて乗り、運転している猫山を見ると非常にかっこよくてスギさんのことはしばし忘れた。紗耶香は免許がない。だから車の運転自体に憧れがある。保育士仲間は紗耶香のような無免許か、ペーパードライバーが多い。金沢は車があるが一緒に行動するときはほぼ飲み会なので運転する姿など見る機会がない。
運転している男って、リードしてくれてる感じがしてたまらない。
本当に単純明快な思考で我ながらびっくりするが、そんなことでまたガードがゆるむのだった。結局牛丼屋からのホテルコースになってしまった。
「ねぇ猫山さんて年収いくらくらいなの?」
開き直って興味のあることを訊くことにした。どうせ遊ばれてるんだから、猫山のようなタイプの男の懐を探って社会勉強だ。
「は? なんでいきなり。安いよ」
「だってさぁ、こんな毎週外食できたり車持ってたりホテル代出したりできるとか、どのくらいの年収で出来るのか気になるじゃない」
「四百ないよ。だいたい三百万代」
猫山も紗耶香に見栄を張る気はないのかさらっと答えた。このドライなところもなかなかいい。しかし三百万代か。結婚相手としてはちょっと不安な金額だが、それでもこの地域で今の不景気だとこんなもんなのか。
「へぇー」
「紗耶香は?」
「私の聞く? まじワープアで笑えるよ」
紗耶香は二百ちょっと、と答える。悲しくなる。手取りは十五万もないんだから。すると猫山は思いがけないことを言った。
「ふーん、じゃあ二人合わせれば五百は超えるんだな」
えっ。
どうして二人合わせた金額をわざわざ考える必要が?
まさか、猫山は紗耶香と実は付き合っているつもりだったりして。実は結婚もありだと思っていたりして。
いや、保育士の年収の相場を知りたかっただけかも。期待しないぞ。騙されないんだから。
そうこうしてるうちに猫山は寝てしまった。これは朝帰りになりそうだ。紗耶香は家族の誰に連絡するかいつも迷う。両親はちょっとさすがに。弟は論外として、やっぱり亜由里がうまくやってくれるだろう。
「ちょっと今日泊まりになる。うまいことよろしく」
そう送って、紗耶香はスマホを放り投げた。何やってるんだろう。もう二十五歳なのに。
猫山の車に初めて乗り、運転している猫山を見ると非常にかっこよくてスギさんのことはしばし忘れた。紗耶香は免許がない。だから車の運転自体に憧れがある。保育士仲間は紗耶香のような無免許か、ペーパードライバーが多い。金沢は車があるが一緒に行動するときはほぼ飲み会なので運転する姿など見る機会がない。
運転している男って、リードしてくれてる感じがしてたまらない。
本当に単純明快な思考で我ながらびっくりするが、そんなことでまたガードがゆるむのだった。結局牛丼屋からのホテルコースになってしまった。
「ねぇ猫山さんて年収いくらくらいなの?」
開き直って興味のあることを訊くことにした。どうせ遊ばれてるんだから、猫山のようなタイプの男の懐を探って社会勉強だ。
「は? なんでいきなり。安いよ」
「だってさぁ、こんな毎週外食できたり車持ってたりホテル代出したりできるとか、どのくらいの年収で出来るのか気になるじゃない」
「四百ないよ。だいたい三百万代」
猫山も紗耶香に見栄を張る気はないのかさらっと答えた。このドライなところもなかなかいい。しかし三百万代か。結婚相手としてはちょっと不安な金額だが、それでもこの地域で今の不景気だとこんなもんなのか。
「へぇー」
「紗耶香は?」
「私の聞く? まじワープアで笑えるよ」
紗耶香は二百ちょっと、と答える。悲しくなる。手取りは十五万もないんだから。すると猫山は思いがけないことを言った。
「ふーん、じゃあ二人合わせれば五百は超えるんだな」
えっ。
どうして二人合わせた金額をわざわざ考える必要が?
まさか、猫山は紗耶香と実は付き合っているつもりだったりして。実は結婚もありだと思っていたりして。
いや、保育士の年収の相場を知りたかっただけかも。期待しないぞ。騙されないんだから。
そうこうしてるうちに猫山は寝てしまった。これは朝帰りになりそうだ。紗耶香は家族の誰に連絡するかいつも迷う。両親はちょっとさすがに。弟は論外として、やっぱり亜由里がうまくやってくれるだろう。
「ちょっと今日泊まりになる。うまいことよろしく」
そう送って、紗耶香はスマホを放り投げた。何やってるんだろう。もう二十五歳なのに。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
傷痕~想い出に変わるまで~
櫻井音衣
恋愛
あの人との未来を手放したのはもうずっと前。
私たちは確かに愛し合っていたはずなのに
いつの頃からか
視線の先にあるものが違い始めた。
だからさよなら。
私の愛した人。
今もまだ私は
あなたと過ごした幸せだった日々と
あなたを傷付け裏切られた日の
悲しみの狭間でさまよっている。
篠宮 瑞希は32歳バツイチ独身。
勝山 光との
5年間の結婚生活に終止符を打って5年。
同じくバツイチ独身の同期
門倉 凌平 32歳。
3年間の結婚生活に終止符を打って3年。
なぜ離婚したのか。
あの時どうすれば離婚を回避できたのか。
『禊』と称して
後悔と反省を繰り返す二人に
本当の幸せは訪れるのか?
~その傷痕が癒える頃には
すべてが想い出に変わっているだろう~
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる