美人って

沢麻

文字の大きさ
上 下
6 / 35
重めです!

しおりを挟む
 「えっ猫山さんとやったの!?」
 休憩時間が同じだった野坂美紀に昨日の顛末を話すとオーバーリアクションされてしまい、同じクラスの担当の藤川智也が思いっきり反応したので紗耶香は先輩をバシッと叩く羽目になった。
 「声がでかいって!」
 「あ、ごめんごめん、つい。だって早くない? 出会って二日? 紗耶香ってどうしてそうなの?」
 「どうしてもこうしても、まぁつまりうまく利用された感じですよ……」
 「えっ付き合うとかじゃないってこと?」
 「……」
 
 紗耶香と猫山は本当に色々とうまくいかなかった。ことが終わったあと、愛を語り合う等々期待していたのだが、猫山は
 「保育士ってほんと遊んでるんだなー」
 とにやついてさっさと服を着て煙草を吸い始めたのである。さっきまでやっぱり猫山さんかっこいい~というモードになっていた紗耶香はここでついにキレた。遊んでるって何。保育士の名を出されてバカにされたことも許せなかった。
 「それって酷くない? 遊んでるって……私別に遊んでないし、保育士全般に遊んでるみたいな言い方ってないけど!」
 「え? 怒った? ごめんごめん。だって結構みんな言うよ。保育士可愛いけど軽いみたいな。だって会って二日目でこの展開なら俺も普通に遊ばれた系でしょ?」
 「はぁー? 遊ばれたって何? それこっちのせりふだし! 二日目で手出してきたそっちが軽いんじゃない」
 「あ、意外と重い系だった?」
 ……。駄目だ、完璧に遊ばれた。しかも同じ系統の人間だと見られてる。下手したらこのままセフレに持ってこうとしてない?
 「私二十五だよ? 今恋愛するなら遊びとかなしの重々希望に決まってんじゃん!」
 「あ、そっかぁー。女だもんなごめんごめんハハハハ」
 そう言うと猫山は爆笑しながら紗耶香の頭をぐりぐりと撫で回した。
 
 「それで、また会う約束したわけ?」
 美紀は顔をしかめて訊いてきた。藤川智也が聞き耳を立てていそうで気が気じゃない。
 「しませんでしたよ。もうこのまま消え去ろうと思ってるけど」
 「……なんていうか、あれだね。紗耶香、もうちょい大人にならないと」
 美紀はすっかり呆れ返っている。これは花怜に報告したところで同じ反応だろう。もうなかったことにしようと思い、とりあえず美紀に口止めをする。
 わかっていた筈なのに。実は紗耶香は、自分では重いつもりでも軽い女なんだろうか。
 十代の頃から嫌というほど同じようなパターンで、もう今更傷付かない。このままじゃ結婚はおろか、彼氏だって出来ないままだ。やっぱり合コンじゃ駄目なのか。結婚相談所とかそれ系なら、まさに結婚希望の男ばかり集まるからその方がいい? 悩む。
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

元カノと復縁する方法

なとみ
恋愛
「別れよっか」 同棲して1年ちょっとの榛名旭(はるな あさひ)に、ある日別れを告げられた無自覚男の瀬戸口颯(せとぐち そう)。 会社の同僚でもある二人の付き合いは、突然終わりを迎える。 自分の気持ちを振り返りながら、復縁に向けて頑張るお話。 表紙はまるぶち銀河様からの頂き物です。素敵です!

私達の世界はタイトル未定。

宝ひかり
恋愛
【はじめに】 病気の症状に関してだけは、自分の実体験を元に書いております。 なので、一概には言えません。 ◎その他の物語は、全てフィクションです。 ~~~ 『喉頭ジストニア(こうとう じすとにあ)』 という、声が出づらい障害を持っている鳰都《にお みやこ》。 病気のせいで大人しく暗くなってしまった都は、大学の学生課の事務員として働く25歳。 一方、クールで感情表現が苦手な、奈古千隼《なこ ちはや》は、都の務める大学に通う、一年生。 * あるきっかけで出会う二人。 だが、都は人と関わることに引け目を感じ、中々前に進めないでいた。 自分は社会のお荷物だ、家族の厄介者だ、必要のないものだと、ずっとずっと思っていた。 * 「一歩、一歩、前を向いて歩こう。鳰さん、俺と一緒に歩こう」 執筆期間 2018.10.12~2018.12.23 素敵な表紙イラスト ─ しゃもじ様に許可を頂き、お借りしました。

【完結】愛も信頼も壊れて消えた

miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」 王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。 無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。 だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。 婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。 私は彼の事が好きだった。 優しい人だと思っていた。 だけど───。 彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。 ※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました

宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。 ーーそれではお幸せに。 以前書いていたお話です。 投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと… 十話完結で既に書き終えてます。

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

【完結】愛に裏切られた私と、愛を諦めなかった元夫

紫崎 藍華
恋愛
政略結婚だったにも関わらず、スティーヴンはイルマに浮気し、妻のミシェルを捨てた。 スティーヴンは政略結婚の重要性を理解できていなかった。 そのような男の愛が許されるはずないのだが、彼は愛を貫いた。 捨てられたミシェルも貴族という立場に翻弄されつつも、一つの答えを見出した。

処理中です...