VS お義母さん

さよなら、お義母さん

②

 「どうやらね、男の子みたいなんだよねー」
 葉子が夕べ電話で嬉しそうに言っていた。男の子。男も女も育てたことがある道子の感想としては、男の子の赤ちゃんのほうが正直可愛いと思うので純粋に喜んだ。
 男の子の子育てか。和馬が赤ちゃんの時を思い出す。こんなに可愛い生き物があろうかと思った赤ちゃん時代。やんちゃで素直で甘えん坊だった幼児時代。元気な小学校、急に無口になった中学校、あぁ、全てが懐かしい。
 もう道子の気持ちは、葉子たちとの暮らしに向かっている。杏奈に買ってもらった布団や、自分で買った食器は持っていこう。もともと身一つで来たものだから、出ていくのも気楽だ。せっかく瑠璃夏と仲良くなれたが、まぁ一生会えないわけでもないし。
 口惜しいのは波多野さんである。今月で辞めると話したら、寂しそうな顔をしつつ、「今までありがとうございました。ほんとうによくやってくれたので、惜しいです」とまで言った。頑張って余計なことまでしてよかったと思った。しかしこれはもともと叶わぬ恋。いい機会なのだ。
 「……」
 ちょっぴり杏奈のことが気になった。しかしすぐに打ち消した。杏奈は道子を追い出したがっていたではないか。きっと今は喜んでいるはず。今後のこの家庭の食生活やら掃除やらが気がかりであるが、まぁ杏奈は逞しいので道子などいなくてもやるだろう。
 でも何か、最後にしてあげたい。明日はショッピングモールに行って来よう。