隣の彼女

沢麻

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偽善者

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 しかし万夢の問題は、クラスの女子全体に拡がっていた。万夢と同時期に、つまり六年の夏休みにスマホデビューした女子はかなりおり、その中で階層ができつつあった。もともとユヅキのグループにいた万夢はリタイヤしたが、他の数名の女子はスマホ組に入り、クラスの女子が大きく三つに別れた。ユヅキのスマホ女子組、スマホ女子離脱・あるいは持っていても入らない組、持っていない組だ。もともとあった仲良しグループがシャッフルされた格好になっており、万夢は浮遊霊のように離脱組、スマホ組、関口をループしていてかなり気疲れしている様だった。他の女子でも同様だが、同様の仲間を見つけて固まっているので万夢程は不安定には見えない。
 という流れは全て潤二郎が男子に流している。ユヅキらはどうやら中学生の手引きで、自撮り画像を渡してお小遣いをもらう怪しいバイトを始めたらしい。どういう自撮り画像なのかは潤二郎にも明かされていない。これが嫌で万夢は抜け、これがありな女子たちが加わった。
 別に何をしようが勝手なのだが、優吾は何故か胸が痛んだ。同じクラスの、一緒に育ってきた友達が、どうしてそんな風になってしまうのだろうか。男子はスマホによる分化がそこまで明確でない。女子は恐ろしい。
 「優吾もスマホ持ちなよ。絶対楽しいよ」
 二学期スマホデビューのアイラが言う。欲しいよ。欲しいけど、怖い。
 優吾はキッズケータイを持たされていたこともあったが、結局携帯しないので四年のときに解約してそれっきり携帯には縁がない。しかしガラケーやキッズケータイ組も、メールでスマホと連絡が取れるらしくて持っていなくてもそれなりに仲間に入れたりするようだ。
 「なんか、俺がガラパゴスだよね。ケータイとか怖いからね」
 優吾が言うとアイラは爆笑した。アイラも、変な自撮りを誰かに売って、小遣い稼ぎをしてるんだろうか。誰が買うんだろう。ロリコンの大人か、中学生か。
 「不審者が昨日も出たようなので、皆さん帰宅時間は確実に守りましょう」
 先生が言ってる。不審者も怖いけど、誰かもわからない変態に自撮り売ってるんだぞ、こいつら。どうする。なんだがもやもやする。

 雨だったので今日は公園はなしだ。優吾は傘を振り回しながら男子たちと帰った。関口と話したかったが、雨なのでなんとなく忘れ物作戦が億劫だった。
 関口はうちのクラスをどう思うんだろう。どこにも属していないから、客観的に見ているんじゃないだろうか。
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