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蓮華の君
二
しおりを挟む個々に大きく、錚々と並びたつ木々に囲まれた昼間にもかかわらず暗がりの目立つ静かな森。
「どこいきやがった!?」
その森に下品な声が響き渡る。
「逃げ足の速ぇ奴!!」
下品な声の男たちは苛立ちの篭った足音を響かせながら森の奥へ進んでいった。
「ーーハァ、行ったか」
ほ、と胸を撫で下ろす。
「あんな足音たてて、逃げてくれっつってるようなもんだろ」
先ほどの男たちを小馬鹿にしたように笑い、
しゃがんでいた木陰からゆっくりと立ち上がった。
「この天下の喜録(きろく)様を簡単に捕まえられると思うなってんだ」
不敵に笑う男ーー喜録は軽々と木を駆け上り、太枝に立つ。
「さぁて、雇い主に渡しにいきますか」
太枝を伝い、喜録は走り出した。
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