スパダリ育成職人の仕事＜主に性的な部分で＞

９ 急所を捕らえた尋問

　ビクビクと震えながら白濁を放出をしたアレグレ狐侯爵。
　だが、マリアンヌは追撃の手を緩めない。
　男の腕を両脇に伸ばして腰横づけると、手首を固定するように土踏まずを掛けて踏んで抑えつける。そして時雨茶臼しぐれちゃうすの体勢から上体をそらす状態のまま、体を後に反らせて「反り観音」となるとさらに背を弓なりに反り、自らの会陰下へ後ろ手を伸ばして手を椀状に添えて備えた。そして腹圧を強く掛けると、女の泉から男の白露と女の蜜が混じった物が「ぶびゅうううう」と勢い良く奔出する。これを白魚の手に余すことなく受け止めて下の稲荷へ満遍なく供えるがいなや、後ろ手に手のひらでニュルニュルと宝袋を揉み込みながら蟻の門渡りをコリコリと指で押して刺激。同時に太腿を男の腿の上で動かし、付け根に向かって血流を集める様に圧を掛けさすり上げる動きを繰り返し、肉サーベルの血潮を凝らせていった。

「ふあ！一体、な、なにをした？！出したばかりで、なんで立ち上がっ？あう！」



　睾丸及び陰嚢は性的に非常に重要な役割を担っており、男の最大の急所でもあるが、それが物語の主体に取り上げられる事は１８禁の小説類にあってもこれまた非常に少ないだろう。
　この滅多に日の当たらぬ縁の下の力持ちを主題にした世紀のチン小説が、尾崎士郎「ホーデン侍従」である。ホーデンとは【Hoden】と綴り、ドイツ語で睾丸の意味である。おっちゃん諸兄が好む一杯飲み屋などのメニューには時々あるのだが、ホーデンの串焼き、刺身などは牛豚等のタマタマである。 
　この小説はある博士が２つあるホーデンの片方を摘出し、不老不死の妙薬を作ろうとするという内容。日本じゅうの男から片タマを集めようと、「今こそ一億一心ぢやなくて一億一丸だよ」なんてぶっ飛んだセリフが飛ぶ。ユーモアと諧謔味、そして下ネタ。こんな小説が、１９４９年の「小説新潮」に乗っていた。作品の第一稿は同年３月の『小説新潮』に紹介されると予想外の大反響となり、ただちに単行本になったという。
　著者は死後、文化功労者に叙せられた。そして「侍従」がいれば、当然その主人もいる、皆様もちろん予想がつくだろうが好色な「ペニス大公」である。この『ホーデン侍従』の作中作が、ペニス大公と二人のホーデン侍従が女遍歴の旅をする、というもの。
　さて小説の書き出しに作中歌がある。

ペニス笠持ち
 ホーデンつれて
入るぞヴァギナの
 ふるさとへ

　冒頭の即興詩にその場に居合わせた＜豪直、いやしくもせざる人柄＞の北原白秋が「おのずからにして湧くがごとき感興を禁じ得ざりしもののごとく、たちどころに筆をとって次韻を付した」のが

来たかヴァギナの
 このふるさとへ
ペニス笠とれ
 夜は長い

　であったと伝承されている。雅味あふれる文人同士の艶笑滑稽のやりとりがおもしろい。
　二十六音都々逸仕立て、白秋がしたたかに酔ったおりの作と伝えられている。簡明にして直截、軍歌の行進歌のごとく堂々としていて、さほど色情を感じさせない。「からたちの花」や「ゆりかごのうた」でもおなじみの天才詩人が、手遊てすさびにこういう戯ざれ歌を作ることもあるのだと思うと、なんとも人間的な魅力を感じられることだろう。
（完全に余談だが、筆者は出典はどことはっきり記憶していないが、さらに続けて　
あわれホーデン　待ちくたびれて　まだかまだかと裏戸をたたく　
　などという結び歌を聞いた覚えがある。「金玉の根元涼しき女房の屁」などという古川柳からすると、裏戸とは女性の菊の御門の事であろう。当時はかなりの反響と聞くので、その際に物語を見た第三者が二次創作的に作ったものかもしれない）
　このホーデン、男の精力に重要な部分をマッサージすることにより精力増強を促すのが、タイ古式マッサージ「ジャップカサイ」である。
 　約２５００年前に、ブッダの主治医シヴァカがタイに伝えたとされる。なかでも優秀な熟練のセラピストだけに伝授された奥義で男性が男性に施す真面目な秘技といわれている。睾丸はもちろんだが、睾丸周辺のリンパの流れを刺激することで、精力増強、肝機能の回復、腰痛にも効果があるとされているもの。
　正確にはいきなり睾丸マッサージのみを行うのではなく、自律神経を促しホルモンの働きを活性化させる為に全身を施術していき、最後の１０分～１５分が睾丸マッサージの施術となる。陰茎には手を触れないで行うのが特徴的だ。
　日本では真面目にジャップカサイを行っているサービスもあるが、回春マッサージのサービスの一部として取り入れている店もある為、どうしても「女性の性的サービス」と誤解してしまう男性も多い。
　大事な急所なので適当に行うと不快感がある。それ以上に力を掛けすぎたり捻じったりすると、睾丸が痛む場合があるのできちんとした知識をつけ、優しく行うのがよいだろう。
　以下ざっくりした施術方法である。しっかり知りたい各々方はインターネットを活用してほしい。
　全身を施術した後に下半身へ行う。
　仰向けで足を広げ、ローションやオイルなどを使い太腿から鼠径部に向かい優しくリンパマッサージ。
　暖かいタオルで陰嚢を数分間温める。
　温められた陰嚢は緩み柔らかくなる。
　潤滑ローションを陰嚢に塗り、やさしく睾丸を後ろ側から持ち上げて表面を軽くなでたり、陰嚢を引き伸ばしたりする。
　陰嚢は通常時の何倍も引き伸ばされるので、初めて受けた人は「股間をうった時の鈍痛が続く感じ」「全身にビリビリと電気が走った」「味わったことがない股間への刺激」と言う人もいるほどだという。
　最後に一般の方々は熟練のセラピストではないので、安全のために睾丸への刺激は長くても２分程度に留めるようにされた方が良いだろう。



「なんだこれは、あう！ぐ、は、ひ、まて、まて、あぐう！」

　狐侯爵が味わう今までに無い感覚！肉玉とそれを収める袋には性感帯は無い。よって男の急所を捕らえられたが故の不安感がゾクゾクと肉宝玉から背筋を侵して脳髄に達する。しかしそれだけではなく、袋根本を伸ばす様に揉まれることで痛みと同時に凝りを解される様な爽快感が与えられ、さらに会陰部からは突き上げるかの様に性の快感も込みあがった。追加で腿からの血流が強制的に加わり力が集約されて行く。
　それら複雑な操作を１度に腰部の敏感な複数個所に受けて堪らず、悶えて腕を自由にしようとするが、それを許す甘い女ではない。動きを止めると、男の皮巾着袋の根本を引き掴み、キリリと力を込めて直ちに制圧を完了した。王手詰みならぬ玉手詰みである。

「お静かに、あなたの大事な宝玉は今、私の手中にあるのですよ？」
「ま、待ってくれ、ああ！袋、そんな伸ばしたらあ！ぐうう！」
「駄目ですわよ、お仕置きはこれからなのですから」

　狐侯爵は３０代である。通常は１度の放出で１時間は充電時間が必要なところだ。いわゆる、不応期と言う射精する男性にのみ存在するもので、オーガズムを感じると一気に性欲が落ちて触るのも嫌になる。しかし１度目からも間をおかず２度目を解放したのに、マリアンヌの足技と手技により陰部の血の巡りが上昇し、信じられないほどの短時間で３度目の臨戦態勢が整ってきた。しかし、達したことで敏感になった体を合間を置かずに攻め立てられたことにより陰部は疼痛を感じている。

「は、く、やめ」
「彼にどうして高価な花を教えることにしたか、本当の心は？」
「くう、いう、いうから手、弱めて」
「ふふふ、素直でよろしいですわ、ちゃんと仰って頂けたら、そう、ご褒美も差し上げますわ……」

　マリアンヌは貴婦人らしく優雅に男を見下ろすと、いっそ慈悲深い声で彼の告白を促したのだった。