黒炎のレヴィ~武器として生きる少年は愛を知る

ComQoo

文字の大きさ
上 下
6 / 18
1章 大夜会狂想曲

5話 暗殺魔法士

しおりを挟む
「今日は別に誰を標的ターゲットにしても自由でいいよ」
 あの男はそう彼に吹き込んだ。
 彼はそれに不満しかなかった。
 ただ標的を決めず誰なれ構われ暗殺したらそれは暗殺者ではなくただのテロリスト。 
 10年近くこの仕事をして、それに誇りに思っているのでどうしても誰を標的にしてもいいと言ういい加減な上の命令に承服しかねなかった。
 このけばけばしい趣味の悪い夜会の主催者レイヴロン子爵バーナード・キングラムを手にかけた暗殺魔法士レヴィ・リーヴは彼の骸を貫いた黒い短剣を引き抜いた。
 そして不満げなため息を一言ついた。
「やっぱ納得出来ない…」
 だが、そんな変なプライドは時には捨てなくてはならない時もある
 今は速やかにこの場を脱する事が急務であった。
 レヴィはすっと踵を返しその場を去ろうとしたその時だった。
「あなた…何して…」
 そこに居たのは浅葱色のショートヘアの魔血の少女だった。
 ――やば
 変なプライドを持て余したせいで判断が遅くなった
 レヴィは血が着いた黒い短剣を抜くと殺人現場を目撃して呆然している魔血の少女にふわっとそして風のように一瞬で襲いかかった
 命は――奪ってはいない。奪おうと思えば簡単にできたはずなのに何故かそれをしなかった
 ただ彼女をそのまま床に押し付けただけだった
 だが、それはレヴィが犯した失敗だった。
 彼女はその瞬間、下手したら迎賓館の外まで聞こえるほどの大きな悲鳴を上げた。
 ――まずい…!
 その瞬間、レヴィは彼女の口を急いで塞いだが、彼女はそれを抵抗するように更に声を上げる
 このままじゃ増援がくる――!
 彼女の暴走の悲鳴をとめるのは簡単かもしれない
 彼女の命をさっさと奪ってしまえばその問題は解決するかもしれない
 だが、レヴィはそれを実行することをどうしても行使出来なかった
 それは先程のどうでもいいプライドの為か別の感情か――否それを迷っている時間はない
 レヴィは一か八か彼女にある魔法をかけた
サイレンス!」
 相手は魔血だ。魔障壁シールドを使われればこちらに返されたりもするからある種の賭けだった。
 だが、詠唱妨害魔法であるサイレンスは彼女の悲鳴を止めることに成功する
 声を失った彼女ははっと金と紫の瞳を見開く
 レヴィはそのまま立ち上がると口にしーっとジェスチャーした。
 そして、そのまま彼は駆け出した――その時だった
 レヴィは時間をかけ過ぎた事を強く後悔した。
 彼女のけたたましい悲鳴は迎賓館の警備のレベルをグンと上げさせてしまっていた
 逃げようとしたその矢先レヴィの前に警備兵2人と鉢合わせしてしまう
 ちっとレヴィが舌打ちし、その手に魔力を集中させようとしたその時だった。
 立ちはだかった警備兵たちの身体がいきなりぐらりと崩れ落ちた。
 彼らの足元には赤黒い逆三角形の魔法陣。
 それは彼らの生を貪り食うかのように黒々と鈍く輝いていた
「君らしくないなあ…レヴィ」
 そう言うとその背後にいたもう1人の警備兵がその隊服を脱ぎながら彼に近づいてきた。
 その右の人差し指の先はあの逆三角形まの魔法陣が浮いていた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。

ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。 彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。 「誰も、お前なんか必要としていない」 最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。 だけどそれも、意味のないことだったのだ。 彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。 なぜ時が戻ったのかは分からない。 それでも、ひとつだけ確かなことがある。 あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。 私は、私の生きたいように生きます。

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る

家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。 しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。 仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。 そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4500文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

処理中です...