魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”

第24章 ドラゴニックエスタ トライアル

第１２１６話 木材が必須な石材建築

「これは何でござる？」
「いえ、なんかすごいのは分かるんですが。」
「木材が必要だったからな。」
「「どこが！」」
　そう言われても困る。一応１週間かけ完成させ大下邸に持ち込んだのがこの風呂桶だ。
「一応風呂の見本だ。一人用だがな。」
「その･･･それは素材は何でござる？」
「黒曜石だ。」
　そう、ガラス成分が含まれている黒曜石は加工さえできれば万能素材だ。
「ついでに土魔法サンドウェッジによる加工済みだ。」
　ストーンアローとかの形状を変化させる攻撃魔法の”形状矢”で砂の形にして吹き付けて作った天然の”砂やすり”を細かくして掛ける事で鏡面加工となり、つるつるに仕上げた。
「どこに木材つかったらこうなったでござるか！」
「ここ。」
　指さした先はこれを固定する木の台座の方だ。
「だから！」
「…ジョークだ。」
「やめてほしいでござる。」
「ただし他の貴族に見せる時はこっちの方がいい。高級感あふれる風呂になる。なお本気で風呂は風呂桶の材質は風呂の性質に関わる重大問題だ。で、一般用はこっちだ。」
　ダークボックスから取り出したのはもう一つの方だ…。
「これは？」
「ちゃんと木材だけで作った、風呂桶だ。」
「いや、木がつながってるのではないでござらんか？」
「ふざけないで貰おう。ちゃんとこっちはもらった木材で作ったぞ。一応後で…。」
「ですね、確認させてもらいます。」
　その…この倍にいないはずの第３者の声に弾けるように見つめてしまった。そこには金髪の少女がいた。
「確かに…これは？」
「組木造りの合わせで組んだ風呂桶だ。これでないと木材の風呂は漏れる可能性がある。ちゃんと湯を入れてやってある。」
「え？へ？この方は？」
「…今は少々お待ちを。」
　金髪の少女、ハーリスが風呂桶を見つめる。
「松…ですか？」
「代理だ。檜もあったが奥過ぎて採取に時間が係る。その上丸太からの生成は難しかろう。」
「いえ、そこはなんとか…ふむ…。マスターに上奏後、設定に組み込めるか確認してみましょう。では。」
　そう言うと少女はとぼとぼ、建物の裏手まで歩いていった。
「何者でござるか？」
「あ…あの方こそ、運営の一部だ。」
「運営‼運営…なんなんですの？」
「この世界を…こっち側だな。上もかもしれんが、その双方の制作にかかわった…神様の僕だ。」
　その言葉に二人は凍った。
「大下君とかもこの世界に召喚された時、神様に会ってないだろ？」
「その筈でござる。」
「その…神様側だ。そしてそいつが見に来ていた…という事だ。」
「さっきのお姿は…どの聖女様でもありません事よ？」
「それより上だと思う。」
　そして、メールに緊急依頼の文字が出た。
『ベースパターンを組むために檜の風呂の制作を依頼します。又黒曜石の風呂に関しても回収させてもらいます。製作後、その場所に放置いたしてくだされば
私が回収いたします。』
　その文章を…二人に見せる。
「…なんかすごい事になったでござる。」
「…そんな凄い方がいらっしゃるのですね。」
「ダンジョンの運営…恐ろしいものだ。」
　急ぎで作らないと精神に悪そうだ。早速作るとしよう。
「ではそこで待っていてくれ。今から、ヒノキの風呂を作る。