魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”

どたぬき

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第24章 ドラゴニックエスタ トライアル

第1196話 いやになるくらい、逃げ癖は付きまとう

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「私の所にも難民は来る。そして…どの施策をしても…どうにもならん。」
「どういう事だ?」
「そうだな、これはある人(鳥海さん)の意見だな。国家が今まで数千年。難民対策を行ってきた。でも成功した事例はほんの少ししかない。そのほんの少しでさえも謀略でダメになる。一番いいのは村から追い払う事…だそうだ。」
「は?それはまずいんじゃね?」
 ユリアも私と同じ反応をした。そう、10万人奴隷を買って来た日に聞いた内容だ。難民対策とかどうするんだ?金払って難民受け取って…何がしたいんだと。その時の答えがこれだ。
「結局人が住める土地は少なく、戦争の多くはそう言う富の生まれる場所の取り合いだ。その中で逃げた人間が難民になる。で助けて引き入れれば、それが伝わり、それを悪用するだけ。嫌な話…難民化して逃げた奴はもうその段階で、市民としての資格はないんだよ。仕事して欲しいのに働かないで逃げた奴は逃げたという事だけが残るんだ。そして…また逃げる。逃げるという事を覚えた連中はこっちが少しきつい事を言えばすぐに逃げる。それに優遇すれば元の市民の方が嫌がるから。結局受け入れればいい事なんてない。運よくそうでない、逃げない連中ならいいんだが…。」
「なんか、それは違うかもしれんぞ。」
 ユリアでも反対意見のようだ。
「いや…結論は…そこそこ住めそうな土地だけ与えて何もしないが正しいんだ。食べ物が無ければ死ぬんだから食べ物が欲しくて市民の下に自分からくるなら逃げない。そして…しばらくして…最低限度の生活をしてくれたらそれでいい。この世界はまだたくさんの未開拓地がある。そこで暮らせば金が無くても生きていける。」
「それは…。」
「ああ‥そうだな。私もそれには違和感がある。そして…好きじゃない。だけどな。相手に”自分から仕事をさせる”必要があるんだよ。そして教育もな。貧困の
原因の多くは知識がない事だ。子供を何の教育もしないで放置した…連中が悪いんだ。元手がないのに放置した大人が一番悪い。それをたどれば先祖が悪い。…辛いんだ。私もな。」
「なんか、辛いね。」
「ああ。まあもう一個の理論の方が好きだ。」
「なに?」
「腹がいっぱいなら幸せだから誰も犯罪なんて起こさねえよ。って事だ。」
 これは土方の…源さんが言っていた事だ。ベテランのおじいさん大工で頼りになった思い出がある。だから、機嫌が悪そうなやつに飯をおごって話を聞いて…
酒を飲んで騒ぐ。彼曰くこれが最高の防犯手段らしい。人間は結局本能に引きずられて生きている。飯も食えないから犯罪を起こそうとするし、その土地から逃げる。なら、その土地で食えるようにすれば逃げないんじゃないか?たったこれだけの事なんだなって思った。その話を会議中にすると、呆れたように笑われたけど。
『飯が食えるだけじゃ、だめだわさ。安全で…平穏じゃなきゃダメだわさ。それは…政治家の仕事だわさ。それに建築もそうだわさ?』
「そうだな。だよな。」
 ニャオがつぶやいたそのセリフはあの時私が言ったセリフと一緒だった。
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