魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”

どたぬき

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第23章 それでもやっぱり領地開発したい

第1112話 情報は価値が高いが、それがいい事とは限りない。

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 その間にやれることはない。図面を上げて・・・スキュラとの交渉待ちだが、これは遅れる見込みだ。というのも、スキュラから金目の物を全部貰った後なので、…払う代金は存在しない。でもダンジョン一個分の建築となると私の経験だと2億DP前後を貰う契約になっている。例の豪華客船より安いんだが今回の建築のフロア数とか…美観の分を合わせると、ほぼ突貫になるその為にタミさんに頼んで建築部隊の再編を進めている。…これには”魔王バトル”の開催時期を私たちが主導するためには…一番建築が遅い方がいいと鳥海が言い出したからだ。私たちがダンジョン建築を終えて…そしてバトルが始まる方が、準備もできてよいと。だが…。
「どういう事だ?」
 ドランとの会合後、鳥海と夕食を共にすることにした。報告会を兼ねてだ。
「建築を焦るより、戦略的に万全を期す方がいいだわさ。」
 そう、魔王バトルに挑む亜人以外の組織の多くは…前例である”月光の崩壊”と今は呼ぶ…あの組織崩壊の方を恐れていた。私達…千鳥万花は大丈夫だと確信できる、”利益”でつながっているからだ。大方スキュラは4人だけで結束力の方を優先しているから大丈夫だ。が魔人連合は無理だ。あそこはダンマスの数だけなら亜人に次ぐ2番手で、崩壊が懸念される。だからこそ…
「万全を期す?」
「3位というのは地味に一番取りにくいだわさ。狙うという意味では。」
 一番はがむしゃらにやればいい。2番は最後にだけ手を抜けばいい。4番もとことん手を抜けばいい。3番はほどほどに勝つという塩梅が難しい上に4番にはならないように立ち回る必要がある。だからこそ一番難しい。
「それは分かる。でも手加減程程でいいのでは?」
「…いや、よく考えて欲しいだわさ。負けてもこっちの評価を下げないでいる…方向性が難しいだわさ。しかもアピールという上では最高の舞台だわさ。強くないことも。そして…建築の良さもだわさ。」
「そうか?」
 アピールなんて必要あるか?こうして依頼も来るんだぞ?
「正確には人間側にだわさ。」
「ん?」
「あそこにはギルドが正体を明かしている4人の王が来ることが書かれていただわさ。」
 パルミダーク公、エクトネーゼ王、ザガートン王、そして?
「今ナギサたちがいる…例のザガートン南部の国だわさ。あそこの王が来ることになっているだわさ。」
 それで4つか。
「でもあそこは新進気鋭だな。まああそこは国が分かれていて、今は各国で内乱を治めて力を蓄えている。いつ戦争になってもおかしくない、下手すれば野盗の方が国より大きい場所だからな。」
「そうだわさ。その中で冒険者という強力な手札を持つあの王は統一という観点ではかなり大きいだわさ。其れにダンマスが肩入れしている公認されている国は4か所しかないだわさ。うち二つが亜人同盟所属。そしてあと一つが草原同盟だわさ。そして最後がギルドが直接治めるの国だわさ。」
「…私達はカウントに入れたほうがいいのでは?」
「それを入れると6だわさ。でも、おおっぴらにダンジョンは開設してないだわさ。」
 というより、ギルドが出て来てから、砂漠との入り口の国で憑依による上位層懐柔と子爵国での結婚…の二つで国を支配している。ただしあまりに遠すぎて同盟宣言や統一宣言は無駄なので様子を見ているところだ。というより格好でつまみ食い状態の支配率をしているために、覆しにくいのだ。月下無き今。支配に動いてもいいんだが…実は人口問題で動けない。正確にはどの土地の国家を動かしても自分の国であるザガートン国に利益は全くない。DP利益上はザガートン南部はこのままの方が楽で貿易大国を果ての領土の子爵国(ド田舎)があるのでどっちも要所だけ抑えて様子を見て、平和的に生きるほうがいい。俗にいう戦国物とかですぐに降伏する第3国的立ち位置だ。こっちの支配が揺るぐなら、裏から潰せばいい。そう言えばリラシルト国内の黄泉の大穴もあったな。今は。
「そろそろ…。」
「というより今後も・・大方公表できないだわさ。あの魔王たちに勝てるとでも?」
 そう、ここまでして隠れている理由はギルドの裏にいる魔王軍の勢力が強すぎて戦いたくない。というのもある。それこそ…この魔王バトルのもう一つの特徴である”戦力畏怖”だ。魔王軍の軍力を示すことにより他のダンマスの人類侵害を抑える役目だ。そして私達の立ち位置は、そう言う意味では敵対勢力だ。平和でありながら平和でない…という状況だ。それが1年程度で覆る…筈もない。一定レベル以上は適度に強い冒険者を招き、部下と戦闘をしてもらって訓練するしかない。その為にダンジョンの発展という事だ。
「確かにな。」
「そう言う意味でこれ、頼みたいだわさ。」
そう言って鳥海が取り出したのは数枚の紙だった。
「今回のイベントは現地人及び、他の異世界人であっても参加可能だわさ。これをジャンや大下たち、エナリシアに渡して欲しいだわさ。その時にシートの書き方の指導を頼みたいだわさ。」
「いいのか?」
「特にジャンはいつもあそこで店長だわさ。少しくらい何かさせてもいいだわさ。」
「そうだな…。」
確かにジャンはここ半年くらいずっとイーハ商会のリンシュメルト支店で店長をしてもらっている。
「報酬という意味も込めて、色々こっちが出すだわさ。」
「報酬か…島原もか。」
「それは引き込むための金だと思って、払うだわさ。」
 結構大盤振る舞いだな。これでまた各地を回る必要があるのか…。
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