魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”

第２３章 それでもやっぱり領地開発したい

第１１０３話 やらかす時は認識の相違が多い

「おい、あいつ追いかければいいんだよな？」
　エヴァリントン商会のナンバー２であるエヴァリントンｊｒは元々この国に対岸の国の商品を届ける雑貨屋の主要取引先だ。その中で最近評判で…エヴィイシル侯爵家の坊ちゃんがお気に入りというシードル酒の行方を求めてこの国に来た。そしてイーハ商会にたどり着いた。が個数限界があり、大規模に買う事は叶わなかった。そのために、イーハ商会トップのイーハを待つことにした。場所を吐かせて
独占するために。ただし…その時に聞いた噂は…何回棍棒に殴られても立ち上がる。ギルドで”金カード”持ちは基本”魔法使い”という事だ。それ以上の情報は向こうの業者から入らなかった。そしてシードル酒はザガートンでは最近売れている酒だという。…酒みたいな生物をあの喚問を越えて運ぶことが奴にはできたのだ。それが分かればもっと…いや業界を。だが、イーハは予想と違う方向にゴーレム車を走らせた。それが街道から外れた平原を超え、山に一直線に向かう…山のふもとの開拓村に向かう道だ。そして何より…ゴーレム車は早すぎて、こちらは全速力でないと追いつけないが。そうすれば気が付かれる…。が、あえて全力で馬を走らせることにした。奴でも夜になれば野営もする。そこを狙って…捕まえて吐かせればいい。そして部隊を二つに分け、手勢をかき集めさせる部隊と…監視する部隊に分け自分は監視する側に回った。夜になる頃にはどうにか奴も野営を始めたようだが。こんなところに何がある？

　井原は偽装の為にあえて分身から報告ではどうも連中はこっちの行き先を探っているらしいが、何か…様子がおかしい。というより…。
「そう言えば私に襲撃される…そう言う事態は珍しすぎて経験ないな。」
　ダンジョンに引きこもるか、安全地域にいることが多くて、こういう時に相手が取りうるパターンが分からない。報告待ちにしよう、人が監視するなら、偽装は解除できない。…カードに連絡か。ミヨちゃんからかだ。
『マスターの分裂体から連絡。なんか様子がおかしい事になったみたい。総勢１５００人になる模様。なんか人をかき集めに言った連中が他の商人に見つかってそいつらも手勢を…南の町の全商人の護衛隊合わせて１５００名が争うようにこっちに来てる。』
　はぁー！？ふざけるなマジで。確かに連絡しない…というか二手に分けたうえで増援を剥ける予定が、それが想定外に膨らんだのか。メールでダンジョン設置の連絡を飛ばす。そして幻覚を自身に掛けてステルス化してさっさとゴーレムをダークボックスにしまうと撤退する事にした。はっきり言って。ここで戦えば…被害は市民に多大な影響を及ぼすレベルで甚大だ。なお倒すことはできるが倒せば大きな問題になる。そして分隊はそのまま支店経由で帰還命令を…届けてもらった。そして…偵察部隊を一体派遣してもらいここの顛末の監視を命令して帰還する。はっきり言って更に情報収集が欲しい展開になってきたようだ。

　ミヨちゃんのダンジョン（簡易）経由で自分のダンジョンに帰ると一息つくことにした。どうもエルドア氏の言っていた”密輸経済”が成立しており、新たな密輸ルートは死活問題だったらしい。大方あの王妃もこの手に出ただろう。ダンジョンが物を出して人を寄せる。その狂気の片鱗を見た気がした。あそこで、そう言うダンジョンを作れば人がうなるようにやって来るだろう。ただし…それが…普通の
ダンジョン物ではない。一つの商会に独占される恐れもある。計画書を上げないとな、あの地域で収益を上げる算段を考えないといけない。いや、そのとっかかりをやっとつかんだ気がした。