魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”

第２３章 それでもやっぱり領地開発したい

第１０８３話 圧倒的損をする存在の有無

　思ったよりも多い肉開放の話にやはり違和感を感じていたが、たんぱく質不足という状況はもしかして様々に問題があるかもしれないと思えてきた。そして、書類が積まれていたのは様々な保留案件だ。箇条書きにすると

１．産業都市の視察
２、魔王バトル向けダンジョン作成
３、パルマキアのダンジョン関連
４、奴隷市でイーハ商会の出品物
５、ゴーレムの関連開発を急ぎたい

の５つである。二つ目はまずコンセプトさえ思いつかないから無理。そして、１番はフェルミィかワタが毎日やってくれている。その情報を統合すればいい。後はパルマキアの国関連だが実は、パルマキアの北部に”転生者”がいる。しかも砂糖や小豆を使った料理を作っていると報告がある。その謎を解いてみたい。そして４番目については…
「これでいいのか？」
　ジャンはある意味転生者であり、信頼できるイーハ商会リンシュメルト支部のトップでもある、器用であり礼儀もわかる…それでいてドライなのが…かなり頼れる。
「一応二つ出す。一つはゴーレム馬車のキャンピングカー。こっちはドラン側にやってもらう、そしてあと一つはせっかくの祭りだ。フェスをやってみたい。」
「フェス？」
「音楽があるだろ、この町には。わざと乗っかる形で、こっちであの子たちを売り込みたい。そうする事で、奴隷の市場において…せめて平和的な流れが作れればいいな。」
「という事はこっちは水飴？」
「そう、まあ鳥海の指令だがな。」
「何だそれ？」
「鳥海式経済理論だ。どうも彼女が言うには”圧倒的な損をする存在”がいる業界や場所は活性化する。まるで水を汲んで飲むがごとくだ。それがダンジョンでもある、ただし現在のダンジョンは装備費という観点でかなりの足かせでもある、このままだとリンシュメルトは…衰退するというのが鳥海の考えだ。」
「初めて聞いたぞ。」
「私もダンジョン改装時に聞いたんだ。負傷者が多くてどうも装備を革鎧さえケチる傾向にあったらしい。ギルドは装備のレンタルなども行っていたが商人側が、装備などをけちるって事だ。」
「最悪だな、装備屋はあるんだぞ。それに結構人が来るけどな。」
「でだ。」
　私もお互い昆布茶を出してもらう。
「一応、何考えてるんだ？」
「でだ、ダンジョンは私が改造したもののデータは提供した。だからいずれ大丈夫だろう。となると冒険者の金の使い道を作る必要があると思っている。」
「使い道で音楽？」
「そう言う事だ。音楽のなる箱の販売をしたい。」
「でもあれはまだ衝撃に弱いだろ？」
「それもある、だから高くする。」
「は？」
「扱い方は説明するが、声を録音するのはダンジョン産にする。だから壊れる可能性もあるし、壊したら自己責任と言えばいい。」
「でも、そんな声が出る魔道具なんでるのかよ？もっと録音するのがあるだろ？例えば聖女教の演説とか、疑われるぞ。」
　確かに普通に録音できる魔道具があったら普通買うのは聖女教や国のはずだがダンジョンから出た設定でも
「…いや、ギルドでライターとか売ってるだろ？あれ…。」
「確かにな。仕方ない、交渉行ってくる。」
「分かった、例の馬車とかをこっちに作ればいいんだな。見た事無いけど。」
「頼む、吟遊詩人の馬車だぞ。」
「分かった。」