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第22章 勇者大下の冒険

第1060話 エナリシアの旅 資金

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「そして…もう一つの投資は文字通りお金じゃ。悲しいかな、この世界には…あらゆる限界があるのじゃ。」
「…それは即物過ぎませんか?」
「そう思うがのぉ、この二つの件、どっちが使いたいか…見せるのじゃ。」
 ドランが掌の亜空間から2本の剣を取り出す。一つは銀の剣、そして…もう一本は金の剣だ。
「これは?」
「わしが知っておる…最大級の…名剣じゃ。魔法用の杖のレシピもあるがのぉ、欠点が多くて悩んでるのじゃ。」
 メイロードが手に持ってみると、二つとも全然違う…金も銀もそうでないように見える。
「これは?なんでござるか?」
「見た事無い剣ですわ。」
 二つのお柾は露骨に違い、銀の剣はあまりに軽く、そして金の剣は本来の金より…硬いのだ。
「一つは儂が知っておる…最大の金属・・・チタン超合金製の剣じゃ。只形をとらせるには非常に多くの魔力が必要でのぉ。これは軽いが、今市販されておるドワーフの剣である、鋼鉄より軽く、そして固いんじゃ。だけどの。大方殺傷力などを言えば…これはドワーフの剣には勝てないんじゃ。」
「…重さでござるな。重さがないから、切れ味だけだと…。」
「そうじゃ、そうなるとこいつを、鋭くする職人がおらん限り…こいつは武器にならん。」
「こういうふうに、原石がいくらよかろうが、職人、果てはいろんな土台がない場合…それは無駄になるのじゃ。」
「…。」
「それは…。」
「確かにそうだけど。」
「それは今のお主たちの状態の事を言っておる。お主らに…いったいいくらかけたのじゃ?」
 その言葉に弾けるように顔を上げた。
「エナリシア、おぬしはどうじゃ?」
「私は、私自身ではないですが…すこし。投資額聞いてみますね。・・・。」
「うむ、おぬしらも自分にどれだけ投資したんじゃ、考えてみぃ。只言っておくのじゃ。」
「何でござる?」
「…備えは常に裏切らないのじゃ。努力と投資は変わらないのじゃ。特にスキルという、自身の能力を上げるシステムに金額を出して…強化ができる世界じゃ。当然それは視野に入れねばいけないのじゃ。」
「投資・・・ですか。自分の装備とかにお金をかける…ですか。」
「そうじゃ。儂もわかっておる限り、儂に金貨にして・・・・500万以上は掛けておる。そこまでの稼ぐロジックや…チャンスも欲しいのじゃ。だけど…それは今の現状まで金を掛けてそして…それを生かすのじゃ。」
「神は言っています。…死んだらスキルは意味がないのでは?」
「武器も劣化すれば意味がないのじゃ。それは備えるものすべてがそうなのじゃ。そこで、欲しいのが…知識への投資じゃな。これだけは呆けん限りは失われにくい…財産なのじゃ。勇者含む異世界人の多くはここで下駄を履いておると…わしは見ておる。」
 その言葉に、大下も田中も何かに気が付いたようだ。
「簡単な計算と言語、そして…科学的知識。なんで物を投げれば落ちるのか。とか、様々な事が分かる、」
「え?理由があるんですの?物を投げて落ちるのに?」
 メイロード達はそこに首をかしげていた。
「そう言う意味では、勇者は恵まれておるんじゃ。どこに投資すれば…勝てるか分かる知識はあるんじゃ。分かるかの?」
「投資・・・でござるか…?」
 ドランがメイロードが持ってた剣をしまうと、出入り口の方を見つめる。
「来た様じゃの。お姉様がな。」
「そう言わないでよ、結構騒ぎになったのよ。今回。」
「師匠!」
 大下たちが見た先にいたのは、チャイナドレスの女性である…リューネの姿だった。
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