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第22章 勇者大下の冒険

第1056話 建築家は基本ミニマリスト

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 井原は緊急で黄泉の大穴を仕上げると、ダンジョン運営側で投票が開始されていた。次のイベントを決める投票だ。その間を仕事に追われ、書類整頓に追われ…。
鳥海に任せるだけ任せて、処理をした。ドラゴニックエスタにはやはり大量に入ったが、ドルカス提唱のSFもかなり強く、現代ものも票が集まった。やはり帰りたいという思いはあるんだろうが…そこは組織票を固め、どうにか…辛勝した。
「きついだわさ。で、ドランはどうしただわさ。」
「ドランは今ダンジョンを仕上げてるからな。」
「どういう意味だわさ?」
「ああ、何か勇者をゲットするための事前交渉が失敗してる。まあ、対策はつかんだが…勇者利権をつかむために…ドラゴンっぽい建物を建築中だそうだ。」
「井原が行けばいいだわさ。」
「それがな…私は…波長が合わないから…無理だと断ったんだ。」
「どういう意味だわさ?」
「私はコンパクト、すっきり、装飾なしが大好きなんだ。それに対してドラゴンらしいというと過度な装飾や竜の意匠など様々な物を入れないといけないんだ。しかもこの世界にはそういう”竜の伝説”がないんだ。だから意匠にこだわっても落書きにしか見えない。」
「あ…。」
「飛鳥の意匠の時もそれを思う存分考え、装飾をこだわった。○○づくりの○○っぽい装飾と言われても、気が付かない奴がいればそれは落書きや意味不明な造形のオブジェなんだ。だから、それっぽいと言って思いつくものはない。」
 実際江戸中期や工期の大工は教養として源氏物語などの作品の知識が欲しく、それ以外は禁止だった。浮世絵師の…装飾などもダメだ。そう言う意味では装飾は常に見る側にも知識が要求される。作る側ほどではないが見る側にも知識が欲しい。そしてこの世界には教育も本も作品もない。あってダンジョンマスターだけだ。そうなると、そこに向けて作るだけなら私でなくてもよい。装飾はその相手に合わせた物でないといけない。そうでないなら無い方がいい。それは一貫してる。それはルーティの家具職人も一緒だ。最近だと香草の葉っぱの絵柄を真似た椅子の装飾や器の彫りなど、そう言う物を作らせている。まあ、そう言うのがある場合、気分的に無地よりは綺麗というだけだ。まだ、獣などのモチーフは早い。
「そう言えばそうだわさ。」
「まあ、ドラゴニックエスタが勝って。それに合わせたイベントができるだろう、前みたいなバグまみれのゲームにはならんだろう…そうだといいな。」
「何言ってるだわさ?バグなんてあっただわさ?」
「ん?なんでこう言ったんだ?分からん。」
 最近こういう無意識で口から出る言葉も多いな。
「どっちでもいいだわさ。ダンマスSNSは予想外の結果に驚いているだわさ。でも思ったように…男女の…思想の差が出てくるだわさ。」
 確かに得票はそうだが…男女の差?
「男女は地味に…考え方に差があるだわさ。ダンマスになろうがそこは変わらない可能性があるだわさ。」
「あの作品群を見て、アチシは実はドラゴニックエスタは無理だと思っただわさ。でも確かに…理解できない作品で、薔薇と白い月みたいな・・シナリオを知り尽くしていないとダメなギミックがあれば…危ないだわさ。実際女子会とかで聞いてみて…ギミックが理解できず、普通に中世っぽいで暮らしてただけのダンマスとか多かっただわさ。水木もそうだったらしいだわさ。そこで感じたのは…”世界観の知識の有無”だわさ。」
 確かにな・・・。世界観知識の有無は大事だろう。
「そうなると、SFは、怖いだわさ。そして現代社会も…この作品は地方のゆるキャラとキャンプだわさ。それ以外が禁止されているとしたら?そう考えると、怖いだわさ。」
 ・・・怖い。確かにそうかもしれん。
「普通がここまで力を持つ事例をアチシは知らないだわさ。そしてこれは。ある意味思い知っただわさ。」
「そう思うな。確かに。」
 普通の良さ…普通である安定感。普通っていいな。
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