魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”

第２２章 勇者大下の冒険

第１０３６話 エナリシアの旅 無音歌唱

「でもなんでマスター、これ以上の敵が出ないと分かったんですか？」
「モンスターは…その取得にはそのモンスターの全身を構成する物質全部をダンジョンに取り込ませないといけない。モンスターのレシピはそうやって全部取り込んだ後に再構築している。で、前にモンスターたちを見た時にオーガ以上を見なかったんだ。オーガは確かに上位モンスターだが、それ以上を見ないって事は、これ以上のモンスターがいないって事だ。当然ここがダンジョンを理解して、骨とかゴミを投下した様子はない。なら、考えられるのは…数しかない。」
「確かにだとしてどうします？前に進みます？」
　そう会話しつつ私は、マスターに載せられ…マスターであるスライムは這って進んでいる、正確には風魔法で地震に浮遊を掛けて、摩擦力を消したうえで地下に行くルートを探した出してその質量で体当たりして進んでいる。
「本体に言われた目的は、ダンジョン実験である。とっととやって、私は戻して欲しいんである。」
「了解しました。」　
　そして敵が出てくるたびに体当たりして崩していくが、かなりのスピードなのに…まだ…
「分からないですね。」
「一応警戒して。でも勇者とか…あんな商人きついよね。」
「はい、一緒にいるだけで何回も殺しそうになりました。」
『…嫌いなの？』
「むしろ溢れるくらい見てます。だから、勧善懲悪の単純なラノベとか好きなんです。」
「ああ…そう言うのね。」
「でも、障害が少ないですね。」
「重さで強行突破しているだけである。ダンジョンは待機中の酸素とか取り込まないとモンスターを生かしたり、一部の物資の維持ができなのである。だから、必ず出入り口を保存しないといけないである。一応扉を閉じることもできるけど、タイムリミットがあるのである。どんどん維持費が跳ね上がるのである。」
「実験を？」
「当然さ。そうでないとできない建築があるからね。今のダンジョンの半分ぐらいの扉を閉める前提の箇所には…隠し包丁みたいな切れ込みで通気口が開けてあっていくら扉を閉じても苦しくない設定にしてある。但し、扉及び取得できる大気量で基礎収益ＤＰが変わるから…人間の数とかで維持できる数を調整しないと…完全に閉じた状態は維持しにくいのである。」
　その瞬間、ワタの体が止まる…。
「ぐ…そう来たか。」
　前方には整列した２５体のオーガ達がいる。その全員が両手を前に突き出している。その体は揺れていて押しとどめられている。
「風…魔法ですか」？」
「そうだ。風魔法を連射して止める気なんである。斉射って奴だ。」
「…ここならできる。エナリシア。準備を！」
『了解。』
「何を？」
　柴崎は天井に向かってダークアローを放ち天井に当てる。
「もともとは、もっと少ないなら…やろうとしてた事です。」
　しばらく魔法は乱射されていくが、その動きは徐々に緩慢になっていく。
「これは？」
「ララバイをハミングで撃ちました。」
　魔歌のララバイはその効果は眠らせることだ。そしてハミングは”口を閉じて、音楽を伴奏する事で歌を歌ったことにする”という物だ。このとき相手に”歌詞は理解されなくてよい”という特性が付く。ダークアローであけた穴にダークマターで作ったマスクで口を覆いダークアロー経由で音楽を聞かせることで、音楽が聞こえなくても…範囲内にいれば意識を奪う効果が発動するわけだ。その隙を突きスライムの食指が彼らを襲う事になった。