魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”

第２２章 勇者大下の冒険

第１０２９話 エナリシアの旅 失敗必須

　そうして私だけが建築に回され、五日目になると、どうにか一日一件のペースで完成し、ダンジョン迄のストレートの大通りとその街道沿いの”店舗に改造できる家”そして、その奥通りの普通の家の三つの通りが完成し、…冒険者はその土地を借りた…買ったではない。というのも冒険者からすると費用はともかくここに住むのかというと微妙で、宿屋の拡充は問題があった。…宿屋を経営するには料理を作る人と酒、そして部屋を掃除するキーバーの３つをこなす下地が欲しいらしい。寝るだけのビジネスホテル。もあるのだが、それは王様に反対された。というのも…１００とか２００人だった住民がその数倍以上の冒険者を抱えたのだ。食料が足りなくなり、近隣から買っている上々だが…それも芳しくない。というのも…隣の国々も当然…軍の備蓄食料など様々に食料を要求する。そんな中で…隣の大陸から来た人間は当然”降ってわいた位飯を食う人間”に他ならない。ギルドがダンジョンからの物資や魔石を買うがその金額を持ってして”一年で定量しかない食糧”を買うには…当然奪い合いになる。が、その問題は千鳥万花はノータッチとなったというのも…
「黄泉の大穴攻略ですか？」
「そうでござる。とりあえず全員の意見を聞いてそこで考えをまとめるでござる。」
　勇者大下たちのパワーアップを兼ねた冒険はかなりいい所に言ったが…リラシルトのギルドから指名依頼が来た。それが黄泉の大穴攻略だ。これは…リラシルトの上層部殻の依頼で…しかも勇者の実力を見せろと言う…かなりあくどい物だ。危険地帯に行くのに…私達の報酬は”日当”で、アイテムの権限は全て”雇い主”に向かい、私達は最前線で戦わされるそうだ。どうも黄泉の大穴はまだ攻略されておらず、…しびれを切らしたリラシルト評議会はギルドに最高の兵士…勇者の派遣を依頼した。が、今の所フリーの勇者は大下たちだけだ。
「あの噂のアムル君は？」
　パオメイの意見に全員が頷く。アムルはこの冒険者ギルドに来た勇者であり、その実力とパーティの連携には定評がある。がそれ以上に周りとの衝突も多く、冒険者殻の評判も悪い。
「今回の件は政治が思いっきり絡むでござる。というのも、向こうはこっちを使い潰すつもりらしいでござる。なので、サボるだけさぼって、わがまま言って…引き揚げろ…それがギルドの依頼でござる。」
　全員の顔が青ざめる。
「それをアムル君…どうも正義馬鹿でかなり…そう言うのは苦手らしいでござる、そしてもう一人の勇者、クラスメイトの”大野”は…ここでギルドと戦力として駐在していて…動かせないと言われたでござる。」
「神は言っています。あほらしいと。」
「ですわね。ですけど行かねば問題はあるのでしょう？」
「その他の勇者は…こんな失敗しろと言う依頼が無理っぽいという事でござる。というより、その日当も…ギルドが補填すると言ってるくらい…格安らしいのでござる。」
「行きたくなくなりますわ。」
　レイロード嬢も怒っている、失敗しろと言う依頼は珍しい上に不名誉だからだ。
「拙者も行きたくないでござる。だけど…勇者と言えど汚れ役は必要でござる。」
「わたくしは…反対と言いたいですけど…大方ギルドも困っていると思いますの、恩を売るべきでは？」
「僕は反対。ストレスがマッハで有頂天になっちゃうよ。」
「神は言っています。仕方ないけど受けざる負えない…と。」
「命を考えたら行くべきじゃない。連中なんて保護する必要もないわ。」
「…私は賛成に入れる。行くべき。」
　流石に私に視線が集まる。
「黄泉の大穴は…ランク８の危険地帯。何が出るのかわからない。第一階層さえ突破していないという話も多い。宝箱的旨味が多いと判断します。」
「「あ！！」」
「それに…全滅の原因を探り…その上で、危険だから去ると言えば…逃れられるかと。」
「本音は？」
　田中さんは苦笑いして聞いた。
「ダンジョンでの行方不明事件は多いですね。」
「……。」
　これ位政治中枢ではいつもの事だ。いついなくなり…自分がいなくなるかもしれない恐怖と戦うのだ。だから自衛で合気道も習う。
「ならいいでござるか…生きて帰れるか…分からないでござる。」
「ただ、出発は最低でも…ダークボックスに大量に食料を蓄えてから行きましょう。備えれるだけ備える事は必須だと思います。何が起こるかわかりませんから。」
　その言葉に全員が頷いた。