魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”

第２１章 薔薇と白い月（ダークファンタジー）

第９８９話 薔薇と白い月（２） 強いネゴシエーターより馬鹿なトップ

　マリーの雑貨屋というのは…俗にいうエリーのケーキ屋などの薔薇と白い月とは違う会社の有名乙女ゲーだ。スチルも少ないが、家具を買って、店を経営する経営系だ。ただファンタジー要素があり、その全部の作品に”錬金術”要素があるのも有名で、マスコットの”小人ウサギ”、が有名だと…教授のメールには書いてあった。いや、現実逃避に近いんだが。私は最低限度のゲームと建築以外興味がないから…建築が出ないゲームにはほとんど興味がないんだ。
「とはいえ、そこはきついわね。私はいいわよ、親切でいいんだから。でもね。宮廷力学が変わると、あいつら何をするのかわからないのよ。」
「が、それならわしが独立運動起こしてもいいのかのぉ、儂はケチではないんじゃ。」
　そう、このメールを読むことができる程度に暇なんだ。目の前の二人はタイマンで、ホワルカナン国北部量についての会議中だ。問題は南部の首都以北がすべてドランの領域である。という事だ。お互い開発費用を払わせて、上前跳ねたいというのが徳永から見え見えなんだ。かといってドランも２２もの都市や各開拓村、その他もろもろの改革費用や時間となると膨大だ。そしてそんな費用を払えば、当然ドランは弱くなる。が、ドランも警戒しているのは…例えば”改革後”にパンダが占領しに来た時に…市民はパンダの味方をするという、この微妙な関係だ。人間的にはパンダ同好会すなわちホワルカナン国が持っているって事だ。まあ、最初はドランは市民から行商改革を狙ったが…北部を統括する３人の侯爵がどうにもならないほどの…市民を無視した見栄張りであるというのが、問題だった。その為に市民の生活は無視している事、強盗まがいというより、強盗そのものに近い精神構造も挙げられる。まあ、ドランは鳥海に”憑依や差し替え”を含む改革案の提案もした。が問題は急激に変わったとして、それをパンダに察知されれば、差し替えをしてくる可能性があるって事だ。だから、北部の領域をせめて安定させるには…パンダとの講和と、公爵を束ねる地位の創設が欲しかった。なお独立も、鳥海は検証していたが…それは単純にパンダとドランの共倒れの可能性が一番高くなる。それが南部大森林の浅層が知識のあるダークエルフやオーガの縄張りで、人間の弱体化を察知すれば、猛攻を掛けることが見え見えだからだ。どちらにしろ事を構えるならどちらか一方がいい。なんか講和って気がしないが、お互い利益があるからこそ…提案にのるかそるかと言わせられるのだ。
「でも、上納５割はどうよ？」
「お主、欲張りすぎじゃのぉ、儂が聞いておるの限り、西部で１割じゃぞ、北部だけ５割とか、アホじゃろ、しかも物資の運搬もあるんじゃぞ？」
「でも私達の領地内よ。」
　ただ、これも鳥海のある話を思い出した。交渉を行う際に最も手ごわいのは…頭のいい外交官ではなく…頭の悪いトップである。という事である、どれだけ頭のいい外交官が死ぬ気で交渉纏めても頭の悪いトップが一蹴すれば、又やり直しである。特に欲に目がくらんでいるときはお互いの妥結案を無視して再交渉にさせられることもある、ついでに一回双方納得の妥結案を出すのに一か月ホテルに泊まり込み、徹夜で会議とかもざらにやるのに、結果を聞いた上層部が一蹴することも多い。しかもこっちのトップが頷いても、向こうがダメなら破棄なのだ。だからこそ外交は成果が出にくい。こういう時に軍力や利権、力が物を言うのだ。又イメージ戦略やプロパガンダ。情報のリークなどを使い相手の印象から操らないと…金を持っていると思えば、その金を全部奪うまで納得しないとかひたすらに多いんだ。だからこそ、鳥海はいう”会議はする前に９割の結果が決まっている”そしてそのために…鳥海は動いてきた。但し決めるのはドランだ。頑張ってほしい。