魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”

第２１章 薔薇と白い月（ダークファンタジー）

第９５９話 薔薇と白い月（２） 奇襲される日々は平和になれるとつらい

　それから、武器を全員持った声が聞こえると…３F入り口を超える。
「ここからは、口伝の情報しかない！注意じゃ。」
　ドランは全員に警告を放つ
「このフロアは、ゴブリンしかおらん、正確にはミニゴブリンと、ゴブリンじゃ。問題は…ゴブリンの性質じゃ、…奇襲、不意打ち、武器、これをらの好む。」
　ゲームと現実のゴブリンの差を上げろというと、大抵のものはこれを言う、実際のゴブリンは強敵であり、その理由は体格の低さと獰猛な性格による、奇襲だ。頭の悪さが、撤退という思考を消し、食欲にまみれた目は、どこからでも攻撃してくる、そして…。
「何で、それが怖いんです？」
「…どうもここから連携スポナーが出るのじゃ、３体ずつなのじゃが…それが最大６体迄リンクさせおる、そいつらは味方と認識して…必ず連携を取るのじゃ。只程度が低いかもしれんがのぉ。」
　この裏には…元の世界の方では木の棒でさえ防ぐ防具は稀有で木と革で作った防具でさえ爆売れする世界だ。こっちは鉄の防具などがあるが、それらは額面通りの防御力しかない。
これは単純な理由で…聖女が主人公のゲームなので、聖女以外”防御力のある服が着られない”ことだ。ドランのリリアはそう言う意味では特典が存在しており、普通のナイフではなく
木の棒と魔石で作った”初心者のロッド”とかの魔法が使える人間でさえ意味のないファッションアイテムが、魔法の攻撃力を上げる機能のある武器として機能してしまう。これも世界において”聖女”以外の主人公がいないためだ。それ以外は”本人のレベル”で上昇した防御力以外意味がないのだ。ある意味忠実にゲームを再現しており、それは検証班によって、検証されていた。主に鳥海が検証したらしいんだが…。どちらにしろこれはいい意味でも悪い意味でも…高い金払って武器防具を整える意味がなくなったのだ。どんな固い武器でも、その辺の木の枝でもモンスターに与えるダメージの差がないなら…拳でもいいのだ。結局。
「そいつらが連携してこっちをボコるのじゃ、通称”ソロの壁”じゃよ。」
　だがそうなると、有効なのはレベルと数となる、その観点において…６体のゴブリンは最初の壁となるのだ。
「じゃから、武器を持って投げて、数を削った上で、対処するのじゃ、後これじゃ。手に一個は握り込んでおくのじゃ。」
　渡されたのは適度な石だ。これはドランが移動中、土魔法の石作成で丁寧に作った、投石用の石だ。少し重みがあり、武器として機能しうる。
「これと棒で作る石斧でもよかったのじゃがのぉ、蔓がないのじゃ。ここで問題は野は部屋じゃ、連中の多くは隠れてこっちを狙うのじゃ。なので…そのことを肝に銘じて動くんじゃ。」
「という事は…歩いても敵が出ないんですか？』
「いるかもしれんが…それは囮の可能性もあるのぉ。じゃから、ここからは相手は騙してくる前提で動くのじゃ。」
「は。」
　そしてドラン達が歩き始めると、それに合わせて…全員が進む。
「というかぁ、階段は？」
「どっかの部屋じゃと思うんじゃ、だから最低でも一回はここで戦闘しないといけないのじゃ。そして、ここが人気ない理由もこのフロアじゃ毎日奇襲で構えるゴブリンと戦闘しないといけないのじゃ。こんなフロア毎日往復したら…気が狂うのじゃ。」
　それに全員が呆れてしまう。確かにそうだ、奇襲が分かっていても通るたびに設置され、その対応となると無駄な戦闘をしないといけないのだ。但し体力はゴブリンが小学生、ミニゴブリンが３歳児なので奇襲さえしのげは弱いのだが。それは”防具が機能している場合だ。
「ここからじゃ、」
ドランが適当なドアを開ける…全員が身構えるが…。
「ふむ…ないのぉ、」
　ドアを開けても…臭さも襲撃音もしない…この部屋には何もなさそうだ。
「確認だけするのじゃ、」
「無いですね、クリア！」
「では次のドアに行くのじゃ、ただ、連中も警戒しおる、確認するのじゃぞ。」
「はっ。」