上 下
928 / 1,270
第21章 薔薇と白い月(ダークファンタジー)

第920話 薔薇と白い月(2) プレイヤー的価値基準だとポーションは下火

しおりを挟む
 そして私はウサギの骨と肉を一緒にもらい、後はレシピの紙を貰い帰宅することにした。錬金術師の大釜にレシピを登録するにはこの専用の大釜と、ある条件を満たした専用の紙とインクを使った特殊な錬金術師のレシピと呼ばれるアイテムを使う。このウサギの骨を煮たてただけのレシピであっても、この貴重な紙が使われる。ただ、この錬金術師の大釜の最大の特徴はレシピであれば料理だろうが木工細工だろうが完成品の絵とレシピがあれば作ってもらえる自動製作機の機能がある点だ。但し、このレシピの紙がまず…ダンジョンからしか出ないと言われている。作れるけど。その上インクもダンジョンからしか出ないと言われている。普通のインキと一緒の物だが。ただしこの紙は水で一定時間に水で分解できれば何でもいい。インクも、その一定時間まで水に溶けないならなんでもいい。という地味に雑な物だ。これを固めて自動でチップを作成する機能が大釜側にあるのだ。それも魔導回路にあった。但し、料理工程を作成するなら、その工程に使う技術の細かい工程表と専門用語を記した辞書も作らないと機能しない。
「そうなるとのぉ…。これ…。」
「さっそく私もオウルも仕事があるぞ。まずはダンジョンでレベリングだ。ミヨちゃんも連れていきたいが…戦闘がきつそうだ。」
「ホッホッホ、休みたいですがのぉ。」
「…好きにして構わんが、3日で暇になるぞ、私も学校に講義に行かないといけないからな。その時はお前かミヨちゃんに付き添いを頼むぞ。」
「休暇が多いなら納得ですぞぉ。」
「ホッホッホ。そう言ってくれるとありがたい。まえは鳥海殿に顎で使われて、休みたくて応募しましたからのぉ。」
「あいつのやりそうなことだ。なら少し休みは多めに取ろう。」
「やはり、儂らの理解者はあなた様だけですのぉ。」
「そう言ってくれると嬉しい。明日はどうする?」
「明日動けば、体調に任せればよかろうなので、そこからさぼらせてもらいますかのぉ。」
 普通ならサボると公言している部下は頼りないように見える、だが、やる気の多くは連続した仕事の中では生まれない。休んで遊んで、そして仕事したくて禁断症状が出るまで休んで初めて休暇はやる気につながる。そこからは仕事をするのが楽しくなる。仕事している毎日が大好きになる、だから部下が休暇を申請すれば、基本通しているし、そこまで辛い仕事も割り振ってこなかった。私が動いて終わるならそれでいいのだ。

 うちに帰ると、あれだけいた魔人連合の家族たちがもういなくなっていた。各地に散り、早速レベリングを行うべく去っていった。
「シオリ。あれはつたえたのか?(シオリ殿、例の件は伝えてくれましたか?)」
「うん。(はい、ちゃんと伝えておきました。)」
 どうも外でNPCの目線が絡むところでは口調が変わり、言語も調整されるらしい。
「薬草いーっぱいとってきてくれるって。」
 そう、この世界において薬草採取は初歩の食い詰めたけが人の冒険者が、片手間でやる依頼であり、まともな薬草さえ来ない。実は薬草採取してモンスターに一切合わなくてもレベルは上がるので、ここから数日は薬草が増える見込みだ。なので…買い取りに基準を設けた。どうもあのポーションのレシピ手順はこうだ。

1、薬草をすりつぶす。その時のエキスを抽出する。
2,薬草エキスを水と設定された濃度にする。これを規定量になるまで繰り返す。
3、それを瓶に詰めて放出する。後のごみは大釜維持用のmpに変換する。

という手順だ。地味に合理的なレシピだが、1と2がこのマリモッサー家のレシピ。そして3は大鍋の共用レシピだ。このところで問題なのが、薬草のエキス抽出だ。薬草のエキスは…薬草にある水分と葉と幹の部分にある。そこに傷がついていると酸化してしまい、要求された分量の薬草では足りなくなる。そうすると最終的にこの大鍋で製作されるポーションの量は少なくなる。…ついでにこのポーションは飲む専用で傷の直りを早くする効果と生命の抵抗力を上げて回復を促進する栄養ドリンクみたいな能力になっている。ついでにこれ一本50mg銀貨一枚(日本円1000円相当)となる。ただしこのオッサンもマリモッサーの先祖もこのレシピしか伝えなかった。研究用のレシピは全て息子のキールが持って行った研究用錬金術師の大釜に登録されている、あっちには国内ほぼすべてのレシピが登録されている、料理以外のな。
「でもいいんですの?ポーションは売り物でしょ?
 シオリさんの心配もわかる。
「それがこの国ではそんなに多く売れないのだ。ポーションより魔法、そしてポーションは日陰者だ。」
 実際鳥海がいうには実際のゲームでも道具屋は序盤しか使わず、それ以降は誰もノータッチだったという。武器防具があればほとんどすべて解決してしまうらしい。なので道具屋により聖女はいない。3からは錬金術が付いて自作できるので道具屋は依頼側にしかいなくなる。だそうだ。
「魔法は貴重で、使わなくても回復できるだけ強いはずなのに。」
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

辺境に住む元Cランク冒険者である俺の義理の娘達は、剣聖、大魔導師、聖女という特別な称号を持っているのに何歳になっても甘えてくる

マーラッシュ
ファンタジー
俺はユクト29歳元Cランクの冒険者だ。 魔物によって滅ぼされた村から拾い育てた娘達は15歳になり女神様から剣聖、大魔導師、聖女という特別な称号を頂いたが⋯⋯しかしどこを間違えたのか皆父親の俺を溺愛するようになり好きあらばスキンシップを取ってくる。 どうしてこうなった? 朝食時三女トアの場合 「今日もパパの為に愛情を込めてご飯を作ったから⋯⋯ダメダメ自分で食べないで。トアが食べさせてあげるね⋯⋯あ~ん」 浴室にて次女ミリアの場合 「今日もお仕事お疲れ様。 別に娘なんだから一緒にお風呂に入るのおかしくないよね? ボクがパパの背中を流してあげるよ」 就寝時ベットにて長女セレナの場合 「パパ⋯⋯今日一緒に寝てもいい? 嫌だなんて言わないですよね⋯⋯パパと寝るのは娘の特権ですから。これからもよろしくお願いします」 何故こうなってしまったのか!?  これは15歳のユクトが3人の乳幼児を拾い育て、大きくなっても娘達から甘えられ、戸惑いながらも暮らしていく物語です。 ☆第15回ファンタジー小説大賞に参加しています!【投票する】から応援いただけると更新の励みになります。 *他サイトにも掲載しています。

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

あなたがそう望んだから

まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」 思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。 確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。 喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。 ○○○○○○○○○○ 誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。 閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*) 何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

称号は神を土下座させた男。

春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」 「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」 「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」 これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。 主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。 ※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。 ※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。 ※無断転載は厳に禁じます

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!  父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 その他、多数投稿しています! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

転生調理令嬢は諦めることを知らない

eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。 それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。 子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。 最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。 八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。 それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。 また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。 オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。 同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。 それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。 弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。  主人公が酷く虐げられる描写が苦手な方は、回避をお薦めします。そういう意味もあって、R15指定をしています。  追放令嬢ものに分類されるのでしょうが、追放後の展開はあまり類を見ないものになっていると思います。  2章立てになりますが、1章終盤から2章にかけては、「令嬢」のイメージがぶち壊されるかもしれません。不快に思われる方にはご容赦いただければと存じます。

処理中です...