魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”

第２０章 それは柴崎エナリシア

第９０５話 恩義で得られるものの多くは情報である

「ご報告遅れて申し訳ありません。」
「いえいえ、ジャン様に肉を緊急で用立てていただき、感謝しています。」
　春宮一家のうち３名がそろい、あいさつに出迎えてくれるとは。確かに決済にはＤＰ放出のお肉の件が書かれていたわ。あの権だけでよぶ？
「その為にいくつかお礼を今のうちに言っておきたいと。」
　綾香さんの優しい声と裏腹に剣呑な物を感じた。
「今のうち？」
「はい。どうもイベントの方に異変があって、早期終了が見込まれるそうです。先日その連絡があって、それを千鳥万花にお伝えしようと。」
「貸しを返すと。」
「はい。そのつもりです、今までの付き合いもあります。」
　パークボアとかのお肉に感じては融通し、後外に出していない”鶏系”に限りは出していた。ブルなどの牛肉系は予定があるらしかった。
「ただ、できればいくつか席を譲ってもいいかと。」
「どういう事？」
「南が言うには…イベントが終わると次からは”ダンマス全体の選挙”で次のイベントの舞台を決定するそうです。」
「そ、それは。」
　イベント自体の決定権。それはかなり大きい。どうも報告によると、かなり原作に忠実にした世界観の再現と訓練場所。そして魔界チケットなしで固定期間のダンジョン訓練施設。飲食も快適で、鳥海もどうもかなり暴れているらしい。そこでやってみたい世界観を言えば…そのための作品があるならば。その世界観で一定期間遊べるという。ミラージェは冷静ならがも、ある意味ＴＲＰＧゲーマーや乙女ゲーなどのプレイヤー垂涎の報酬であることが分かった。それに金を吐く連中が多い可能性も高い。そしてここからダンジョン連合はある意味…別の意味の戦争になる。それが”選挙戦”シフトだ。しかも勝てば一か月は最低でも
利益を得ることができる。もし向こうで何か学べる世界観の本などを出せば、その世界で遊べる。…学習書だとどうなるんだ実際。検証もしてみたい。
「でもこの話をするのは何でですか？」
「ナオが言うには…。神様対策だと。神様はこういう時の談合を非常に嫌うそうです。なあなあだと、何らかで打破してくる可能性があると、ですので私と数名の票を渡すことで、それを防ぐと。」
「…神様対策。」
　これはどうも重要な話が出てきたぞ。神様対策をしている？ギルドが？神様直下運営が？全然意味が分からない。
「ですので、できれば作品の選定をできれば二日か三日以内にすませてほしいのです。」
「分かりました、報酬は受け取ります。ただしどうなるか不明ですよ。」
　あっさり引き下がったものの、爆弾発言の束で、頭が痛くなってきた。
「あれは、ひどい、御用聞きとはこういう感じですのね。これは確かにきつい、無理難題言い過ぎ、しかも話が飛び過ぎ。私も一応建築家です。」
「そうはいってもねぇー。ねぇ。商会長。」
　フェルミィがひじをつつき、戯言を言うのが、好きではあるがこういう時はつら…
「確保！」
「捕まえたぞ、どうする！」
「ナギサ‼そのまましょっ引くのよ！」
「分かった、すまない両名。」
　なんか視界が暗くなると、一気に私たち二人の視界が低くなり…何かに抱えられているのが分かる。
「撤退！」
「本当にすまない。君たちを待っていたんだ。私たちが。」
「…。できれば早く降ろすか…連れて行ってください。」
　私体はいつの間にか、ナギサに小脇に抱えられていたようだ。いつの間にか過ぎて、全然わからんかった。こうして私たちは…三日月ナギサに攫われたのだった。