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第20章 それは柴崎エナリシア

第891話 エナリシアの旅 診察所の客人

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 今では古いように見える建物で、町の郊外に立つ少し立派な二階建ての建物。それが診療所だ。
「ここ。」
「誰もいないの?」
「今は、ここを閉鎖している。私がいないから。」
「え?」
「ここで診療をしている。」
 エナリシアが無造作に開けるとそこは広い部屋に木の長椅子が壁に置かれ。無機質とさえ感じられる、
「しなくていいの?」
「ここでする治療は有料。でないと怪我を恐れない。だからここでする治療は高額な魔法治療。しかも最近は水魔法を教わった治療師が多い。だからここは最終手段。第一本当に必要なら・・。
「わしとかが来るからのぉ。」
 声の方を見ると、奥の扉から一人の少女が現れた。その衣装はゴスロリ衣装であり、勇者衣装でも珍しい。そしてこれはある人物の特徴的な
「わしも時々ここでアルバイトしておるのじゃぞ。」
「ドラン様。」
「やっぱり。」
 田中さんが、身構える。 
「ふむ、お主…お姉様の弟子じゃからな。大方お目付け役ではないのかのぉ?」
「あなた!私に…。」
「手を出す気はないのじゃ。儂はもうトスは送ったのじゃ。それに目的はお主じゃ。お主と勇者じゃ、どういう事になったのか…その昔話が聞きたかったのじゃ。」
「…それは第2の町ではいいのでは?」
「それに…あのパオメイ…気が付かなかったじゃろ?お主は。」
「…ん?」
「…そこまでは…。」
「ギルドとは協議が終わっておる。そこも理解しておる。パオメイはパンダからの回し者じゃ。獣人が人気という事で、大方話が来たんじゃろ、獣人を作れるのは今はパンダ同好会のみじゃからのぉ。」
 田中初枝を出すが、ドランは構えるそぶりも見せなかった。
「そこまで…でもあんたは、指名手配されているはず!」
「そうとも言えるがのぉ。まあ…儂まお姉さま…リューネの話とかも聞きたいのじゃ。」
 で招きされて、エナリシアも奥の部屋に行くので田中が奥に行くと、そこには場違いな白黒タイルで包まれた部屋だった。そしてその真ん中にはテーブルと、お茶が。
「でもなんで…。」
「わしはこう見えてそう言う話が好きでのぉ。そして今後の放送の糧にしたいのじゃ。場合によってはダブルドラゴンコラボとか、やってみたいのじゃ。そこでお主に繋ぎを持っていてもおかしくあるまい?」
「…これは聴いていない。」
「だろうのぉ。儂も興味を持ったからじゃ。それにお主からは苦労性の香りがするのじゃ、」
「…ぐ…でも!私に手を出せば!」
「勘違いしておるな。儂は聴いてみたいだけじゃ。それにほれ、それは儂が作ったクッキーじゃ。それを食うてみい。ほどほどに甘いはずじゃ。そして昆布茶もある、懐かしいはずじゃ。エナリシア、おぬしも食え。」
「…了解。」
 そう言うとドランとエナリシアは椅子に座り、お菓子をつまんでいる、
「…本当に?」
「そうじゃぞ。後パオメイは呼んだ方がいいかのぉ。」
「あの子にはお金を与えておけばいいけど…でも本当に…。」
「ギルドとそこまで詰めておいたわい。今回の枠の件も譲ってもらったのじゃ。」
「ですよね。」
 勇者の従者は特異系スキルを手に入れられる。その上レベル上限がいるだけで10上がる上に円満退職ならその上限解放は残るので、勇者はスキル的に優良物件とされている、ただし前回の勇者大量消失事件で、多くのダンジョンマスターは従者的特異スキルを得ており、そこまで欲しいわけでもない。がダンジョン幹部クラスを従者にさせればラスボス候補までありうるので、その為これに関してもある協定が各ダンジョンと結ばれた。それが”勇者優遇法”である。勇者に指定されない限り勇者の従者合計の枠は各団体の取り決めに従う。そして、大下の従者枠は協定取り決め時には参加していなかったので不問とされていて、実際はパンダ。聖女教、旧魔王軍の三つで枠を取り合った。後余り一つは本来は山岳同盟がドワーフを送るつもりだったが、急に人材の余裕がなくなり延期されていた。そして勇者からの指定があり、エナリシアが参加することになったわけだ。但し各所との調整が必須だった。
「でのぉ、スキュラはその権利を借金返済で放棄したからのぉ。で魔人連合は…おぬしらの欠員がいなくなってからでいいと言いおった。」
「…あんたら。」
「第一、そんな死ぬほど無茶しなければいいのであろう?」
「だ、確かに。」
 田中は、分かる範囲、機密を守れる範囲で話をした。大下がザガートンを旅して各地のダンジョンを回り、食肉ダンジョンを探していたことをだ。その間にインスタンスダンジョンを調査したり、色々手配とか、その類は田中が行っていた。
「ふむぅ、おぬしも苦労しておるのじゃのお。」
「はい、ですからあなたは…。」
「確かにまずいのぉ。儂も特権は欲しいがのぉ、今の現状の全てが許さぬ気がしておる、エナリシアはこう見えてかなり有能じゃと聞いておる。。」
 聞かされた話は大下は基本ハーレム系勇者を目指しており、この世界をゲームと思う風潮が強い。という事だ。その為いらぬ騒動に巻き込まれその尻拭いは田中が行っている、パオメイも勇者と一緒にいればいいと考えるところが多く、苦言を呈する側には立っていない。そして、テンプレ女性をそろえたがるコレクター気質がある。
「そうなんですか?職業的には?」
「狩人。」
 黙々と江成足亜はクッキーをリスが齧るように小さくかじりながら食している、田中も食べてみるが意外と柔らかいクッキーだ。
「じゃあ、遠距離で。」
「そう言えば勇者は遠距離なのかのぉ?」
「確か大下君は光魔法とアイテムボックスだから。後鑑定は私から渡したわ。」
「そう言えばそっちではスキルは買えるからのぉ。」
「高いけどね。」
「…スキル買えるの?」
「らしいのぉ。」
「…頑張る。」
「どうも大下とやらは危険人物らしいからわしは引き上げるかのぉ。後お主の苦労は変わってやれん。それはそこのエナリシアも一緒じゃ、そこはすまんのぉ。」
「それはどうも…。」
 それでも田中は警戒していた。昔修行自体に見せてもらった暇つぶし動画に出ていた有名人。それがドランだったからだ。頭の回転が速く、それでいて強い。油断しない。そう言う意味ではまったく強者そのものだったからだ。そして、ドランは部屋の奥の扉から去っていった。
「エナリシアちゃんはドランの部下?」
「…いや違う、あの人は…アルバイト。金稼ぎに来る。後、部屋の準備できた。簡単なベットと、個室、後は待合室でいいならそこで食事もできる。私が作る。」
「作れるの?」
「簡単な物なら…後部屋を出る、部屋を台所にする。」
「…あ、了解。」
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