魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”

第２０章 それは柴崎エナリシア

第８８６話 エナリシアの旅 ゆうしゃ

　民衆をかき分け現れたのは男性一人、少し太り気味だが、それに付き従う４名の女性。それが、通りの２階の建物の上に陣取っていた。
「私の名は勇者大下！」
「と、そのゆかいな仲間たちですわ！｝
　３人の女性が勢い付けて大笑いする。その様子にエナリシアは呆れていた。
「…勇者。」
『なんでこうなるの―！？』
「おとなしく…って少女！？」
「悪人のはずですわ。そこの男を倒したのですから、ほら、そこの人も泣いて腰が抜けていますわ。」
　指さす先には先ほどの３勝の男達が泣いて…巣の場に座り込んでいた。
『どうする？』
『…私が変わります、闘う際はお願いします。』
　エナリシアは、柴咲とスイッチした。
「警告します。私は襲われただけ、むしろあなた方はその襲った側を擁護するとは…ギルドに報告しますけどよろしい？」
「おいおい大丈夫なのかレイロード嬢。」
「よくわかりませんが、そこのバンドロが一撃ならきっと名のある人です、闘って勝てば、経験値がもらえるはずです、ギルドもきっと優遇してくれるはずですは。」
「ちょっと待った…あの子…。」　
　後ろの隠れていた最後の…魔導士風衣裳の女性が止める、
「大下様…ここは引くべきかと。」
「どういう事だ、田中。」
「小さい子に手を上げたとあれば、勇者の評判が地に落ちます。もしそれが強者でも無名である限りは戦うべきではないかと、むしろ民衆の混乱を…。」
「そんなこと言って、怖気図いたの？」
「………。」
　なんか田中という人が、こっちを睨んでいる、
「はい。最悪あの子一人でこっちは全滅します。」
　田中という人は恐れる顔でエナリシアを見つめていた。
「何言っているんだ！」
「…それに…ギルドという話という事は、ギルドカードはお持ちですね？見せていただきたい。」
　渡辺は２階からジャンプで降りると、ゆっくりと近づいてきた。そして小声で
「すいません、千鳥万花の方。敵対はできないので、今は…騒動収集のために私について来てください。」
「話が分かる方ですね。」
「すいません。こちらに。」
　少し離れると、渡辺さんは大声を上げる、
「この子はギルドの金カード持ち。強いのは当り前ですわ。」
　それに合わせ、エナリシアはカードを取り出す、柴崎の名義で作られた金カードが輝く。
「な、なによ！この人が大下様と同等だというの！」
　レイロード嬢と呼ばれた人が大声で驚く
「…できれば、こちらに。」
　渡辺さんがエナリシアと手をつなぎそのまま群衆をかき分け…連れ去っていった。