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第20章 それは柴崎エナリシア

第882話 エナリシアの旅 ヤッキ

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 新たなる体を貰った少女エナリシアと柴崎さんの朝は早い、二人とも分離して寝ていたものの、普通に朝早く起きる。ソウルドールの頃は眠くないが…それでも
思考整頓の為にじッとすることが多かった。それがこうして睡眠に代わった。
「おはようございます…そうですね。朝・・・食べますか?」
 柴咲さんは結構饒舌だが…私もウルフェ様も、柴咲さんも無駄な時の会話を嫌う。だから私は軽くうなずく、そしてそれを見た柴崎さんは台所に引っ込んでいく。そして私もじッと…一応私も柴崎とつながっているから料理できるんだけど。なぜか私が料理するのを好まない。そして見学する。柴咲さんは台所に置いた窯に最近出回り始めた木くずのチップ材をばらまくと発火の魔法で火をつけていく。どうも柴咲の考えによると元々何でも異世界んテンセイモノーとか言う。謎の話にある魔道具で火をつけることを考えていたそうだ。それがタミさんとか言うメイドさんが言うにはありえないと言われた。発火の魔法があっても煮物などの長時間欲しい類には発火の魔道具とかは役に立たず。結局燃料を集めてこないといけないらしい、その時の解釈ではライターとか言う書く人の事とマッチとか言う人物の事が
思い出したらしいが、全然意味が分からない。それ以来私たちは町で安く売っている木の皮をハンマーで砕いて乾燥させたウッドチップをダークボックスに気にならない範囲で入れていく、そしてそれを窯に入れると火を入れてその上に鉄板を置く。
「コンロを売ればもうかりそうですけど。どうですか?」
 カノジョの思考が入ってくる、これがコンロという物か?
『運びにくい。後衝撃に弱いと徒歩で運ぶから揺れに強い必要ある。』
「…確かに、そうですね、揺れを計算に入れてませんでした。確か思い出召喚にそれに対応したガスコンロがあったはずです。試してみましょう。」
 窯の上に置かれた薄い黒曜石の…彼女が言うには、空飛ぶパン?とか言う物らしいけどそれの上に、肉を置いていく、ダークボックス内は時間が経過せず生肉を置いておいても腐らないらしく、それを焼いていく、ただ、この村以外で…実は生肉を保存する人はいない。ついでにこの辺は加工肉のきれっぱしを貰って来て、それに洗浄をかけ食べれるようにしてから火を入れて焼いて食べる、なおメッチャングの塩を振る。ただ彼女からすると時間経過のないこっちのほうがいいらしいのだが…その意味が薄い事に嘆いていたっけ。こっちで普通に店に売られているのは運搬に楽な塩漬け肉、それか燻製肉だ。なので保存の意味が薄い。しかも評価はこっちのハムとか、スモークハムだっけ?とっちの方が味が付いていると人気でこれでない肉は未加工肉として安く買いたたかれる。
 なので、狩人の一門には専用の”燻製士”がいることが多い。それで余ったきれっぱしの肉を買って食べるのだ。ついでに内蔵は捨てる。これはこの町の前身ができた時からの儀式だ。後でウルフェ様に聞かされた話だと、それはダンジョンに還り、また獲物になるという。だから捨てるように指示を出したらしい獲物が。帰ってくる、いい事だ。そうこうしている間に肉片焼きタレ付けらしい肉と、釜炊きご飯のおにぎりを並べる。窯はどうもダンジョンの売り物入り欄にあったので購入してそれを焚いて保存したものだ。ただここまで、フレンチ料理というスキルを持っているのに使わないのは使うより、市販のたれをかけて食う方がいい。だそうだ…料理を作ると、二人で皿を運び、テーブルで…手を合わせて
「「いただきます、」」
 彼女が好きな食事の祈りだ。私も習う。狩人の一門というモアレ様にこの辺の事を、昔聞いたことがある、それによると狩人の一家には大抵”ジンクス"とか縁起担ぎをして獲物を探すことが多いという。獲物が見つからないと、食料の危機とか…事故など狩りには常に命の危険が伴う。その為一家に伝わる儀式とかある方が普通だそうだ、彼女もそうなると狩人の一門かもしれん。そして”ヤッキ”とか言われる料理を食べる。箸を使ってだ。橋は彼女が作った熱いものを食べるための物だ。確かに便利で、すぐに慣れたので私も持っている、今では腰に括り付けて備えてある、後暇だと、木を削って箸を作っている、おっと、そしてそれで村の子供の小遣い稼ぎの定番串焼きの簡素番である”ヤッキ”を食べる、単に肉をパンで焼いてそれにたれをかけて食うだけだ。それだけなんだが非常に旨い。なんという奥深い脂の味。そしてほぐれる肉、
「これこそ、フレンチの真髄ね。エナリシアちゃん。」
『市販のたれ、本当?』
「記憶によると、暴論式フレンチの真髄はスーパーで焼き肉のたれを買ってきて肉にぶっかけて食う。だそうよ。」
『簡単すぎない?』
 おにぎりは触感がうまい、パンでもいいが…かゆもいいんだけど、この固いおにぎり好き。
「フレンチはソースというタレが肝なのよ。で、たれはある程度加工してあるなら何でもいいのよ、そう言う意味では出来合いの日本のたれでも成立しちゃうのよ。私自身もこんな考え方になるとは…。で、タレさえよければ素材は焼いただけとかの方がソースを生かすうえでいいの。だからこの焼き肉のたれと焼き肉は暴論的に言えばフレンチなのよ。」
 柴崎も考えることがあるらしい。
『うーん、分かっているけど…暴論。』
「まあ…暴論よね。」
 暴論らしい。よく分からないが、飯はうまければ何でもいい。それが現状だと思うよ、
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