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第20章 それは柴崎エナリシア

第860話 交渉は常に生死を掛けて

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 一時間後、実務者協議でハーリスさんと教授がワンセットで来ていた。私達も書類を抱えてだ。
「まとまりましたか?」
「そっちは30兆どうするだわさ?」
「現金でもいいのですけど、条約などの権利関連でいかがです?」
 ハーリスさんの意見もわかる、こう来たか。金で受け取る真似はしない。
「一つ聞きたいだわさ。相手のファクターの管理権限の委譲は?」
「…無理ですし、却下します、共有化もかなり不利な条件です。」
 ん?その間に教授と、私達にも、コーヒーが置かれていく、
「権利として条約にはかなり時間がかかるだわさ。その価値の換金なんてそれこそ時間稼ぎではないだわさ?」
「クックック、確かにそうだな。」
「そこで、亜人同盟の初級モンスターとファクター利用権利でどうだわさ?その代わり、このスキュラ向けの債権をそっちに渡すだわさ。」
 その時のハーリスの!いや、殺気‼殺気が凄いんだが!…鳥海さん。大丈夫か?
「それはできません。確かに大金ですが…。」
 声は普通に落ち着いているんだ。だが、こっちも威圧で動けなくなるほどに…ハーリスさんの眼光が鋭い。
「待ってほしいな、ハーリス君。確かに債権をこっちが買い、その分こっちが払う事で、向こうは借金の債務から離れたいんだよな。」
「その為に…。」
「まだ交渉の初期段階だぞ、ハーリス君、それは…あの人の思うところかね?」
 教授のたしなめで、ハーリスさんの殺気が収まっていく、交渉としてこの人も…結構辛いな。
「確かに、確かに。あの方の事を考えればそうですね。」
「だからこそ、君たちの債権をそうだね、これでどうだね?その分をそっちへの報酬に足すという事でいいね」
「…債権お買い上げの金額とかは精査するだわさ。」
 でも怖いのが…ギルドの資金力よ、30兆とか現金で払おうとした…その金額よ、それだけでも全然違う資金力だ。はっきり言って怖い。そしてあの威圧に平然とした教授もだ。
「大体の所が決まったところで…これである程度、方針が決まってよかったよ、借金はしたくないね。」
 本当に、債権を持つというのも今後避けたいと思ってしまうほど、これは怖いね。私には交渉が怖すぎる、

 ギルド側は、まあ2割は減額されたが見事債権を受け取ってくれた。そしてその分63兆DPから減額され59兆Dp分のおねだり、なのだが、債券購入の際に”ダンジョンのリスト関連の要求の禁止”言われてしまった。ついでにスキュラカンパニーはこの30兆の借金を…”領域共同利用権”で減債。25兆分を帳消しにされ後6兆の内4兆は…ギルドへの出店地優先権で帳消しに、後の2兆は30年債権として無理のない範囲での返済となった。領域共同利用券は私はこの屈辱的な権利の取得は断固反対しただろう。スキュラの領域の全てに亜人同盟が”出入口の設置”及びダンジョンの設置ができる。というものだ。配置変更でモンスターを送り込むことも可能だ。但しダンジョン内は除く。怖いのがこのダンジョン関連の条約は”即時発効”なのだ。なおこの権利の返上は交渉の上という事になった。単純にギルドはスキュラの生死を握ったのだ。いつでもお前らのダンジョンにモンスターを送る権利って事だ。只例の条約があるので、…これなら従属契約でも結んだ方がまだましだろう。ただそれだけは何故かギルドが断っていた。分からん。で、問題はリスト関連以外だと何を要求したらいいのかわからんって事だ。領域にしても今の南の領域のレンタルで十分リンシュメルトにも…全大陸に手は伸ばせる、だから領域関連に魅力はないのだ。
「それに関してはあちしが粘り強く、妥協点を見つけるだわさ。」
 確かに、そのままDPで貰う・・・。
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