魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”

第１９章 VS飛鳥

第７７４話 ２対２が準備会合で多い理由

「という事は、本来は…宿場町抗争か…。」
　教授が頷く、教授たちは平伏しなくていい。それ以外に私が知っている中で唯一交渉が可能な…まともな大人だ。ネルさんも地味に地位はともかく話はまじめに聞いてもらえる。
「…確かに野宿の準備重い、泊まれる場所あれば便利、…そこをつなぐ馬車あれば便利。」
　元々の構想だと、一日ごとに宿場を設置、乗合馬車もそこを往復させる、一日で着く範囲だ。そこを往復させるのに本来は午前、午後の部って事だ。そしてそれを繋いでいけばいい。そうすれば、魔法の負担も低くシルキーみたいな普通の人間から毛の生えたモンスターであってもゴーレムの維持が簡単になる。そしてタクシーはこのシルキー達が帰れる範囲までとする。という事だ。
「ふと聞いていいか、ドルカスたちはあんな感じなのか、こっちが一言も発することなく納得して帰っていったんだが。」
「いや、私が向かうという話を聞いてようやく…すまないが彼らは話しているときに井原君が話していない事に気が付かかなかったそうだ。」
「…私が聞いて訳が分からなかった。」
「でもそうなると本来は、街中にも欲しいのではないか？」
「人が多いようなら増員だな。そこまでは。それに基本それ以外は本店や支店などで交渉してもらい、その場で土魔法要員を貸す商売だ。それ用にここには人員をおくが。」
「土魔法を使えるものをか…。」
　教授たちにに昆布茶を差し出す。アランも真剣に聞いているようだ。
「中々考えられた方法だな。」
「…マネするやつ出る。」
「それは構わない。私たちは宿屋だけにすればいい。」
「そう言う事か…宿屋のついでか。」
「そうだ。元々は物流発展を狙ったものだ。獣や盗賊などが怖いからな。それをこうした建物で守れれば人々が活性化して、商売にいそしんでくれる、」
　本当はＤＰ回収案としての手法だが、地味にこの宿場法は旅の休憩所としてＤＰの稼ぎがいいのだ。実際ダンジョンマスター物を見ていてダンジョンマスターが冒険者の夜営所や宿場を経営しないのを見ていて、いらつきを覚えていたのは事実だ。ダンジョン前宿屋は経営していても、大都市までの導線は確保しない。極めてもったいない。
「そうなると、こっちで絡ませてほしいという意見もある、そうだな、この話をするのは、初めてかもしれん、水木君にもだ。」
「…重要な話。」
　重要？
「最近になってきて、ダンジョンのレベルが上がったりインスタンスダンジョンという大型…というより人を殺すに躊躇ないダンジョンができてから、負傷者の数も多くなった。最初の内はハイポーションも、ポーションも、聖女水も買ってもらえたが…問題が出てきた、カンパニーの資金枯渇だ。この為に商人の中に冒険者を使って稼いでいたものの、けが人となった冒険者を捨ててカンパニー業から撤退する商人や貴族が増えてきた。」
　こっちのダンジョンではけが人は直すが、一家すなわち家族経営だ。そうなると怪我してもその人を捨てるなんてありえない。但し片手になろうが槍を持たせ狩りをする原始的スタイルだ。しかも２０人がかりで槍を投げて仕留めるとかいう、かなり原始人手法だ。が、これはある意味合理的だった。なぜなら怪我人ができにくいからだ。聞いていると、どうもカンパニーは勇者主体の魔法及び近接武器が主体だ。当然そんな訓練をすればけがは増える、ゲーム的に言えば薬草はあるかもしれないがけがで、最大ＨＰも減るためいずれ回復はじり貧になる感じだ。ダメージに対するリスクは高いが、ダンジョンマスターによるメイズの多用やインスタンスでの確殺トラップなど…様々な要因でどんどん戦えない冒険者が増えてきた。という事か。
「…また、剣闘士の怪我も…問題、」
　なんか思いっきり被る話だが、このザガートン国の闘技場の剣闘士も似た話で、俺が強いと思って闘技場に行けば必ず”商社”と灰者”が出てくる。又武器を使う以上、防具でけが人が減ったとはいえ当然瀕死の勝者や、重症の敗者なんてものも出る、そして一応剣闘士システムではその掛け金から聖女教に回復を依頼する金は確保してあるのだが・・・それでも治りきらない怪我が多い、また精神的に闘技場にトラウマになった選手へのリハビリなんてない。そうして増える引退者の多くはキャラバンの護衛や冒険者になるのだが…怪我人だけはそうならない。ただ国としてもそれなりに戦闘経験を積み、場合によってはダンジョンで戦ってきた強者を捨てたくない。そこで色んな施策を試しているのだという。
「そこで、この話だ。ギルドとして、できれば…条件を満たす者を雇ってもらえないか？」
「…お願い。これならできる、」
「私から仕事をを奪うとは考えんかかったのか？ゴーレム車の荷車のように。」
　一応ギルドは荷車を真似てコピーした過去がある。それを忘れたわけではない
「クックック。…マネできるならいい、それにだ、今君たちを排除することはできん。ただ、この件を無視する中な考えさせてもらうとだけは言おう。」
　最終的に護衛でゴーレム車御者台に２名。及び、運転手として土魔法レベル３の者がいれば雇うという話で決着した。その代わり、このザガートン国内のギルド支店でのこのシステムに対して、１割の使用料を払い、お互いをつなぐ話をした。そしてもう一つ言われた…強欲なスキュラでも手を焼く腐敗大国”リラシルト”の話を代償としてもらった。そして、この商売のもう一つの敵はこの”リラシルト商人”である。

　リラシルトには５人の商人がいて、それが”合議制”で納める”商業国家”だ。似た感じで魔王国の隣の”商業連合”という国家体もあったがそれをさらに権力を深めた物だ。こっちも似た感じだが商売において、通り沿いの有利な地形は全て５人に許可を得た商人以外は建築できず、この５人は塩や鉄、小麦、娼婦や傭兵団などで構成されている、そしてその連中が持つ１００枚の割符、まあ、自由で開かれた商売というために数人の商人もいるがそれらをしのぐ権力で、その１００枚の割符を買うための商業的戦争がリラシルトでは頻発している、法律も商人有利、その為、各地の小麦は安くこの大陸のサンディーンやザガートンに流れる、彼らを潰せない理由。それがこの”商業主義”で出来た安い小麦販売だ。他の商人が付け入るスキのない…安さで他のライバルの入る余地を消しているのだ。なお国土は豊かな川を込とした黒土に近い肥沃な大地だ。ダンマスが武力で攻めることも聞いた話…スキュラも計画していたがそこは問題だらけのスキュラ、地上部隊に有利な奴はいなかった。しかもこの体制のままだと人が逃げない。人が逃げればこの肥沃な大事があっという間に雑草まみれにされて使い物にならなくなる、その為、人口を減らさず、人民を安心させつつ占拠するでなければ…意味をなさないらしいのだ。しかも国の制度自体はこの５人に賄賂を送れば何でも通りそうなダンマスにとっては有利な政治体形という…。”利用しやすい馬鹿”であるというのが私の思った感想だった。
「で、その連中が来ると、」
「ああ、只警告は出しておくが…」
　ただ、土魔法を使えるだけならいいのだが、ゴーレム車を作れるとなると…。商売的にはかなりの有利となる、その為に魔法の規制をおこなっていたがその理由が”魔法使いが貴重すぎて喧嘩なぞで死んでほしくない、”という理由だ。喧嘩で暴れられて魔法に対する排他理論が起きたりする前に規制する。その為に市井の者に魔法学校を開き、資格制にする、そうでないと問題が起きる、がザガートンにはもう一個の考えがあった。こうして囲い込んで
リラシルト商人に”魔法使い”を奪われないためだ。また、リラシルトについた魔法使いに対して使っただけでとらえれ奪う。という事らしい、その為にこっちが弱小だと思えばちょっかいを出してくる可能性がある。との事だった。向こうも大容量運輸は重要だからだ。
「スキュラが、土魔法使いを出せばいいのではないか？又はパンダがな。」
「向こうは警戒しているのだよ、リラシルトの馬鹿がそう言う乗り物とかを得ることで、何かをしかねないのを。ギルド側としても何人も黄泉の大穴に向かう冒険者を連中に攫われたりしている…。」
「そこで乗合馬車。」
　教授の考えていることが分かった。攫われているなら”護衛”を足せばいい、当然エルフとかを載せる手もある、そこでこっちが雇ったことにして、見えない護衛を配置したいんだな…でも連中攫うとか…平気でやるのか…この先に入るのが怖くなってきたぞ。