魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”

第１８章 水木さんは地味に大幹部さん

第７２９話 逃げるか立ち向かうか…が問題だ。

「二つ提案がある、保護するという意味合いも込めてだ。一つは、お前たち全員がこの地を去る事だ。」
「は？」
「はっきり言ってこの地方の商売にはなんの旨味もない。しかも貴族対策を施せば…大方いらぬ虎の尾を踏む。だから無理だ。」
　これはドランとパンダ同好会の戦争話になる。例えばある貴族を義憤で滅ぼして討伐したとしても。統治を言い訳にパンダのモンスターを含む…最悪魔王軍が来る話になる、それがまずい。あのレベルの介入許可となれば個人のドランは当然勝てない。だからこそ争わない方針を取っているドランからすれば届くまで何年もかかろうが、これは火種でしかない。それに、大方このアメリカ大陸もかくやという大きさのホワルカナン北部の戦争統一なんて何年かかるか不明だ。そして得られるのは盗賊気質の村人である、統治もままならない公算が高い。これぐらいならオーガの市民をスポナーで作った方がいい。そのレベルでどうにもならない、だから連中の人材だけ得て撤退するが第一だ。
「もう一つは独立する事だ。年数を稼いで、盗賊張りの独立勢力を作る事だ。がどっちも無理だろうな。」
　これは、敵対を明確化して、民衆をかき集め、パンダ同好会と争う考えだ。北部に軍隊を送るだけで一年以上かかる長大なエリアだ。しかも責めるはドランのエリアに介入しなくてはならない、向こうからすればいらぬ戦争をするって事になる。
「そこまでしていた高くても。ゴーレム車さえあれば…。」
「ゴーレム車を貴族がすべて寄こせと言ったらどうする？人員を奪われ回収できないんだぞ。魔法を覚えて、ゴーレムを作るのは人だからな。」
「あ…。」
　あまり他人に言わないゴーレム車の欠点が実はこれだ。結局すべて個人にかかりその個人を失えばゴーレム車運輸は機能しなくなるのだ。当然人間は簡単に死ぬ、この世界は衛生概念がないなどもあり、食中毒でも死にうる、病でも、夜襲でも、大雨でもだ。実際亜人でもこっちでも７件以上こういう話があり、ゴーレム車の人員毎のレンタルを行った事例がある、これを権力や兵力を盾に奪われれば、もう事業は不可能だが。そこまで理解を貴族がするとは先ほどの代金の件にしても無理だろう。
「そんな無駄な事をする気はない。」
「…ぐ…。」
「ドランの話もある、検討は前向きにするが、今は我慢するか…先ほどの２つの案を検討しておいてくれ。」
「分かりました。考えさせてもらいます。」
　分かったのだろうか。
「今のままでは・・・ダメなのですね。」
「そうだな、どの手を打っても貴族が出てきてすべてを奪う可能性が否定できない。」
「なんで…なんで…！」
　ガースが、顔を伏せ、伏せた顔から嗚咽が響く。分かるんだが。貴族と戦う気がないなら。今のループは変わらない。そこは理解して欲しい。