魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”

第１７章 ドランの領地視察旅

第６７４話 あれは地味にオーパーツなのじゃ

「ふむうむ。」
「大体こんな感じですな。どう思いましたかな？」
　聞いた話を総合するとこうだ。この地方は俗にいう侯爵３人が贅沢でけん制し合うのだが…その原資というのがこの商会が独占する三つの産業がある、それをお互い融通し合う事で、結託もしているらしい。その三つが、小麦、塩、薪の三つだ。小麦は南部への輸出の為に３侯爵の一人の元へ売り飛ばす、これは国としても南部や東部の
戦線に送るため、毎年交渉されるものの一定額で国に買われる。塩は西部から買い付け売る。余り必要ないかもしれないが、塩は特に食料保存及び”塩分供給”の観点で開拓には必須となる、その為にある侯爵の独占販売となっている、この運送には兵士が用いられ、最重要任務とされている、そして一番ショボそうだが、実際は必須のある意味地産地消の物が、薪だ。地方都市から買い上げた薪を都市に売る仕事になる、特に都市は中世の石作りの建物であり寒い。特に冬は寒い上に都市の人間は森まで遠い事もあり煮炊き用含めた燃料の薪が不足しがちだ。その為、この商店が、各地方の地方都市に支店を置き薪と材木を購入、地方経済を助けつつ３番目の重要産業となっている、
「そう言えば、ここの食事は基本麦粥じゃから…。」
　麦粥を作るには燃料の”薪”が都市においては必須となる、
「それ以外に材木は武器の材料にもなりますし、家の建築にもなります、こうして数百年木々の販売を続けて…我が家が儲かっているのですよ。当然薪や木は重い。
ただ、今のホワルカナン国は全て南部および東部優先。わが方に来るゴーレム車があれば…。」
「確かに…お主たちがゴーレム車に右往左往する意味が分かるわい。」
　この中で唯一”重い”薪や材木を扱うこの…。
「新た貯めて聞くのじゃ、おぬしたちの商会は？」
「普段は材木問屋の頭目、ペルオリと申します。」
　なんとなく、名前だけであり、姓を名乗るのが許されない規則の事を思い出した。その辺で階級が定まっているのだろう。
「ふむ、ただ難しいのだか…分かって蝋のか？」
「どういう意味で？」
「もう一回運び込まれたゴーレム車と、後職人を呼んで聞いてみるのじゃ。大方…再現は不可能じゃ。」
「…一度見せてもらっても？」
「解体してもいいのじゃ、ただし代金はもらうがの。」
「…この件は後で何かでお支払いします。よろしいです？」
「分かったのじゃ。どうせ儂はいつでもそれを呼べるからの、」
　そう言うとバルアリとベルオリの二人は外に出て行った。残されたのは…。
「金…ではないんですー？」
「あれは”何か大きなことを融通するから代金はそれで”という意味じゃ。お願い券じゃな。これは。」
　エルミンがそわそわしている、
「どうせ、数時間はかかる、向こうのショップで買ったりんごジュースでも飲んでおけ。」
　ギルドカードのショップで購入したリンゴジュースを手渡す。
「でも―？ゴーレム車、もったなくないで―？」
「まあ、無理じゃ、儂でも再現は無理じゃった。」
「どういう意味で―？」
「あの車輪と車軸が無いと…少しでもゆがみができれば、あのゴーレム車は成り立たん。そしてあの車軸を作れるのはダンジョン特性からして建築有利な”測量”でしかできない。…工業品を超える最高傑作じゃ。今は木じゃがの。いずれ黒曜石のシャフトと留め金で作ったブラック仕様の物を作るかもしれんと言っておったわ。」
「車輪がですー？」
「真円に近い車輪というのがいかに鬼畜か。その為の研鑽にどれくらいかかるのか、全部不明じゃ。その上シャフトのゆがみも…揺れに直結する上によく見るとあの木はどうも”大森林”の巨木が用いられておる、しかも芯の部分のかなり固い車軸じゃ。３万の値段の鑑定結果も頷ける。見た目よりもずっとシンプルに職人仕様のゴーレム車じゃ、」
「ひえー。じゃあ、コピーは？」
「亜人が作る際にはどうも、このゴーレム車を型にして、木製の枠を作って無理矢理当てはめて作ったそうじゃ。が、これも相当技術がいるらしくてのぉ。だからこそ無理なのじゃ。普通に作るにはオーバースペック過ぎるのじゃ。」
　エルミンはグイッとリンゴジュースを飲み干した。ただドランはご増していっているが、実際はこの工程の後に”枝の祝福で語内部に木を生成し流し込む”。”ダンジョンで肩からとったものをDPで生産し品質を均一化させる”という工程を挟んでいる、その為に非常に完成度は高いが。コピーが人間には不可能という意味でもオーパーツな物である。
「そんな事ー…。」
「ダンジョン特性というやるがいかに重要かよくわかる内容じゃの。これもダンジョンの特徴じゃ。そろそろ来るかのう。」
　どすどすとある低来る複数の音にダークボックスに飲み物をしまっていく、
「あれは、あんなもの！」
「そうじゃろ、そうじゃろ？｝
　６人の人たちが部屋に入ってくる。
「第一あんなものどうやって！」
「儂が聞いて居る限りあれと同じ物は無理じゃ。材質は木なのじゃがの。」
「・・・。どうしたら…。」
「今は儂から買うしかなかろうな…。」
　６人のおっさんが意気消沈している、というより意外と早いな、この人たち。