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第17章 ドランの領地視察旅

第673話 民の概念さえ無いのじゃ

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 そうしてついた侯都は言うなら、よく見る中世っぽい小さいドイツ風の町だ。ちょっと小綺麗で…スラムもあるが…それだけののどかに街並みが並ぶだけの町、商人の数もまばらで商店が数件あるだけで、露店はない。
「ふむ、あまりここが中心都市とは思えないのぉ。」
「言うなよ、もう少しで、本店だ。」
「でも本当に―?」
 ゴーレム車は人々の奇異の目を引きながらも中央の…ある角地の大きな店の前に到着する。
「ようこそー!」
 見た感じ太った感じの恰幅のいい商人という感じだ。
「大旦那。」
 バルアリが飛び降りると、それまでの微笑みは絶やしていないが、顔を上げた。。
「何だ、バルアリか、どうした、支店は?」
「これの影響で―。」
「…これの?」
「ガースの旦那、こいつの事で話がある、おい、お前ら、中から材木を取り出してくれ。」
「よくわからんお嬢さんだが…。」
 ちらっとこっちの衣装を見る、エルミンは村人みたいな皮の服だが、ドランは途中から偽装の必要なしと、いつものゴスロリドレスを着ていた。
「こちらへ。」
 ここからが勝負だ。ただ、モンスターだからと言って人間を侮れば利益は出ない。気合を入れて、ドランは店の中に入っていった。

 店の中は…この辺では普通だろう少し細工の入った橇のある木椅子があった、それに全員が座る。礼儀については効いてあるので、これで無礼ではないだろう。
「ふむ、バルアリ、確かにゴーレム車は珍しいが…。」
「部族という意味もあるが。説明させてくれ。」
 そして途中で水を秘書から貰いつつ、バルアリは一生懸命説明した。ついでにドランが本当の主人という話もしてもらった。あれはプレゼンと言っていい、ただその詳細を聞くにつれ・・・
「南部が入れるという…ギルドにおける…英雄…彼女が?」
 金カード扱いについてはドランは説明したが、その時に説明に要領を得ないので実際に金カードを見せる、
「まあのぉ。これによりある程度の権限があるのじゃ。」
「…そんなお方が何でここに?」
 自然とガースは頭を少し下げる、無意識的に見える感じだ。
「うむ…この辺地域の発展が遅いと聞いてのぉ、その原因を探るのじゃよ。」
「発展がですか?」
 もともとのきっかけは領地大きさの割にDP収益が低い事。その為の調査だった。が思った以上に平和でかつ腐敗した政治だった。
「うむ、このような美味しいものがあるのに、こういう物もない、そして山賊蔓延り、モンスターが闊歩すると聞いておる。」
「あれは大森林からの…。」
 ドランも実際なんであんなに素直にスタンピードを起こして住民が家を捨てて逃げたのか、不明だった。が、バルアリから聞いてみると”大森林の部族が人間を食べに来た”という話が下地にあり、その為、全員が逃げ出したからだ。そしてもう一つは…北部の兵士の頼りなさは異常と言っていい。その中での大森林越えのモンスターの出現(本当はドランが起こしたスタンピード)は逆に南部の求心力が北部で薄れつつあるとの事だった。
「大森林からか…ふむぅ…。そうなると対策を立て、安心させねば民の安寧はないのぉ。」
「民…ですか…。」
「うむ、お主も家族が好きじゃろ、お主は商会の商会員が好きじゃろ?」
「はい、」
 ドランは周囲を見る、タミという考えもないとか…少し遅れているとかという次元ではない。
「その発展系じゃ、みんな周りの人間がよくなれば、そいつが物を奪う事もなくなるのじゃ、余った者は分け与え、足りない者は奪わず分かち合う、それは子にするように…まずは身近でやっていけばいい。それが統治者となると、タミという感がになるのじゃよ。」
「ふむ…そう言う物ですか…。」
「での、儂はこの北部を豊かにしたい。そうすることで、儂らはいい商取引がお主たちとできると思っておる。」
「富ませる…ですか…。」
「うむ、おぬしたちが優先じゃが、商売には”損をして得を取れ”という言葉があるのじゃ。商売は物の価値に合わせた売り方もあるがの、まずはその辺の一般人相手に…。」
「と言っても私たちは…高い材木と薪の問屋です。」
 なんか話し方に敬語が混ざってきてる、
「じゃからのぉ、薪の値段とかじゃよ。後、おぬしたちに今日の縁もある、まずは儂がその見本を見せるとしよう。」
 そう言うドランの笑みは…エルミンが見ても悪だくみした、黒い笑みだった。
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