魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”

第１６章 途中退社は残された者がつらい

第６２７話 まずはあなたという徒党の数が欲しいのです。

　まずはお仕事だ・・・が、中央山地に来ると、様相の一部が変更されていた。元は中央山地は３名のダンジョンマスターがおり、３人の協調体制となっていたうち一人が陽華であり、そのエリアであるごく小さいエリア。そして村とかを持っているのがスローライフを標榜する俊三。そして接触しないままの第３のダンジョンマスターの３名だった。が、今はそこがすべて俊三のエリアとなっていて、小さいながら三つの村や町は全部俊三のエリアとなっていた。
「変わったか？」
「あ、お久しぶりです。」
　エルフの青年であり第一の部下という青年が駆け寄ってくる。
「久しぶりだな。」
「マスターが来るかもしれないと、すぐに家に案内するようにと。」
「分かった、行こう。」
　俊三じいさんはダンマスにしては珍しい老人の外見をしている、
「お久しぶりです。」
「ふむ…来ると思っておった。魔王討伐の報告じゃろ？」
　…やはり記憶はないみたいだ。
「いえ、緊急事態につき…いや、一つ受け取って欲しいものがあります。」
「何じゃ？」
「獣は渡せませんが、一つ…騙されたと思って花、亡のいずれかを選んで欲しいのです。」
　受け継がれし意志は７つある。うち、獣（シロウ）、愛（奥原）、幻（陽華）は、個人的に渡したくない。そしてもう一つ、魔は中位ファクター名ので今からやる博打には適さない。そして知。これは地味に…扱いずらいファクターだ。これもザマァされる香りがする、なので、これも吐き出したくない。そうなると二択だ。
「…それなら、死ぬより、花を選ぼうかのぉ。：
「手を。」
　私は直観ながら、この受け継がれし意志の力を知っている、手を出してもらい、その手を両手でぎゅっと握る、思いを込めてだ。
「！」
　今回の案件の…。いかなる説明よりこれが早いと踏んだ。
「一つ聞いていいかのぉ？」
「何でしょうか？」
「シロウは？」
「…往生しました。」
　なんとなく察したのだろう。
「混乱しておる、今回の魔王討伐では聖女教が大号令を発して、勇者全員を差し向けた。訓練中の勇者を攫ったからの。そして鎧騎士を中心とした勇者連合軍がと思っておった…これは…。」
「…二人とも大往生です。幸せなる生を。」
「聞いていいか、この残されし意志とやらは？」」
「文字通り、死んだダンマスの思いが詰まった…これが無いと今回の顛末は理解できません。これの所有権があるのは千鳥万花全員です。そして、今はまだ…。」
「少し待て、説明して欲しいが？」
　そこからは鳥海の説明した内容を説明した。そう、今はまだ情報のすり合わせにより、エリア等が。まだ再編成される前だ。だが、設定上あるはずの物がないなら当然あるように動く、それは俊三も一緒だ。今までは単なる地方の田舎スローライフダンマスのはずが今ではそれなり領地持ちのもはや数が少ないダンマスの一員だ。そうするとどうなるか。、当然引き抜きが来る。それならいい。ここで後ろ盾無しの場合、俊三じいさんに対して攻撃だってありうる。
「儂はシロウの件もあって、いやなんとなくと思っておったことに答えが出た感じじゃ。」
「そうなのか？」
「儂は、シロウの負け方やそれ以来のダンマスが瞬殺されていく様を見てきた。勇者の暴虐も聞き及び、そしてダンマスに加担したまちまちの焼き討ちも。」
「…そこまで。」
「勇者を保護して、儂は情報を集めておった。今は確かに経営陣を刷新したという亜人同盟じゃが、その中身にはダンマスを虐待し、勇者をのさばらせたギルドがおる。信用などそうそう出来ると思うか？」
　これが実際起きる、不信のスパイラルだ。信用できないという情報が流れるにつれ出てくる、拒否感。これを覆すには実際相当な…労力が欲しい。
「いえ…。」
　鳥海によると、交渉の難敵の一つはこの”不信の思い込み”だ。どんな利益も賞賛も、疑いの前にすべて無効化される、信じないから効果がない。これを覆すには年月か…周りからのそれとない評判改善しかない。どちらにしろ一朝一夕に解決できない。だからこそ、国家の素行は正しくないといけない。そんな不信の種は今後に絶対悪影響が出る。
「そして、もう儂はここの・・・そして大方これからいろいろ動くと…そう見ておるのだな。」
「はい。私も…これからの為にお願いしたい。」
　頭を下げる。
「ふむ、分かった、行こう。儂が千鳥万花に入ろう。でも弱小…ではないはずじゃな。そうなったのか…。」
　そう、もし認識霜害が効いているなら千鳥万花は二人だけの組織に見えるはずだ。が、その前は３名が加算した、中堅のはずだ。今は弱小組織だがな…。
「早速会談で詰めましょう、お互いの組織の為にも。同盟締結の条件を。」