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第15章 オペレーション:ハッピードライブ

第620話 ちゃんと銃をホルスターにしまえるだけの知性

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「どういう・・・。」
「とりあえず、避難させないと、3体とも倒されただわさ。」
 そう言うと、こっちにやってくる騎士団に命令を下し、表上は魔王討伐として、各部隊を引き上げにさせた。が、その影は、幻覚を張り付け、さも消滅させた要に見せ、いまだ保たれていた。
「あんた。」
「アチシからすれば…。」
「クックック、そういう事か、最後まで…。ああ、少し待ちたまえ、ここは魔王軍スタイルと行こうではないか。」
 教授が構える中、ネルがやってきて、枝の祝福でテーブルと椅子を設置して、茶菓子を置いていく。それに南、教授、鳥海が座る、
「どうして?」
「ネル君。すまないが、魔王討伐が終わり次第、パーティの準備を指示してくれ。ミーアもだ。」
「了解。」
 二人はそう言うと、離れていった。
「アチシは最後の…いや覚悟として聞きたいだわさ。」
「何をだ?」
「あんたらにとって、勇者とは、ダンマスとは何なのだわさ。」
 実際今までの冒険や…日々を見る中…この疑念は鳥海の頭を常によぎっていた。自分たちは何なのか。万能の神に近い力があり、知っている限りそのすべてをDPで作ることができるシステム。が、これは何なのか。阻止て今回のミッションにおいて、こっちのハッピードライブに対して”さらに踏み込む”という事で対処を狙ってきた。そして勇者システムを知っている人間からすればこれは”世界の全ての勇者と、世界の全てのダンマス”を消滅させるための物に変貌した。彼らは聞いている限り、モットーとしていた筈のダンマス保護も、勇者保護もそぶりを見せない。この齟齬を見誤っていた。そう2週間の行軍で考えていた鳥海は相手の真意を…測りかねていた。
「それは…。」
「南君にとってのダンマスは、都合のいい男子がいればいいだけだ。」
「教授!」
 教授は余裕ある感じで
「第一考えて見よ、このダンマスの多さを。そして、勇者の多さも…すべて、計算外だった。」
「どういう意味だわさ?」
「クックック。ここでどうしてダンマスが増えたのか…そして、勇者がこんなに多いのか。その話をしよう。」
 
「じゃあ、そのモートリアとかっていう国のわがままが原因だわさ?」
「そうでなければ、私と南君たち以外の勇者は生まれる予定もなく…それさえも計算外とも言えよう。ダンマスは各大陸一人、いやその大陸さえも放置されもっと成熟した時に開放されたかもしれない。」
 教授の言う話によれば、勇者が乱発して召喚され、対応した”ダンマス”もまた乱発的に生産された。勇者耐離陸におけるパワーバランスと小国の見栄の為に
「じゃあ・・。」
「そして大量のダンマスがこの勇者大陸で生まれ、勇者に消されていた。私の調査によれば200以上の勇者が戦死し、そしてダンマスもこの勇者大陸で戦死した。私の推測だとそこで神は考えた。それが”他大陸にダンマスを作る”だよ。瞬殺されない位置にダンマスを生み、君たちを保護する考えだ。」
「ぐ…。」
「一応、ウォールで囲んだから…でも…確かに…。私がこの大陸に3年間生きていられたのは、何もしなかったからよ、それは事実、目立てば即死って話。」
 鳥海が思っていたよりこの勇者大陸でのダンマスは過酷な環境だったらしい。そして、本来のダンマスの役割が”勇者のライバル”としての立ち回りだと教えられた。
「しかもその多くは誕生して一週間とか、2週間生きていればよく…端的にいえば我々は被害者だ、勇者乱立して召喚しまくった…ある国のな。」
「じゃあ…。」
「よく考えて見たまえ、こんな凄い神様みたいな能力を持つダンジョンマスターが200体以上も乱立し、成長してこれば、どうなるかわかるだろう?」
 教授の意見で、思い当たってみてわかる、今はまだその能力は弱いがいずれ強くなる、私達と一緒位、そうなれば当然お互い領土の取り合い、戦争となるだろう、今はいいが、いずれ…ダンマス同士が争い…それは大陸を戦火で包む、より暴力的な形で。
「だからこそ、今回の判断は好機と判断したわけだ。ダンマスも、保護する勇者もすべて…ただし彼らの何割か、今までの統計だと…半分くらいは元に戻る。」
 鳥海もテーブルに置かれた一緒のリンゴジュースを飲む、
「何だわさ?」
「この世界では大抵元の世界よりいい身分となっている、帰ってもいい事は…現代社会の利便性位しかない。ダンマスは特にその利便性にある程度は身を浸せる、だからこそ、その半分であろうが、消滅できる可能性にかけたのだよ。平和的な敵対者の排除手段。そう思えないかね。」
「…でも…。」
「多すぎるのだよ、ダンマスも、勇者も、この世界は狭すぎる。」
 南はじっと聞いていた。そして。
「確かに…。」
「まあ、そう言われても私たちは人間のやることも支持している、って事よ。」
 いつの間にか、神様と、ハーリスも座っていた。
「来ていたのかね。」
「ここは正念場よ。まあ、あれが爆発すると、ちょっとまずいからね。まさか人工太陽にここで手を出すとは思わなくてね。」
「やっぱり?」
「だから、急ぎできたわけ。対処も当然知ってるでしょ、」
「それを出す引き換えに聞いただわさ。まあ、思ったより嫌な現実を知っただわさ。対象となる勇者がいる…かもしれないだわさ?」
「そういう事だ。但し他大陸まで行って冒険するわけにもいかんし、もう誰が誰なのかわからん。それにそれがいなくても魔王さえ討伐されれば話は終わる、」
 鳥海からして、この神様が否定してないって事は、これは真実なのだろうとも思った。勇者を召喚した代償として自分たちがいる、が生まれた生き物に罪はない。分かっているが、複雑な感じだ。確かに、魔王軍…なのか?旧魔王軍のもくろむ先もわかる、
「先生。」
「今はその国家もなくなり、もっと緩やかなペースになる…はずなのだがな…そして、まだ召喚されざる勇者たちが270名以上残っている、」
「え…。」
「クックック。勇者の絶対数が減らない限りこの物語は終わらない。勇者も、異世界人も、ダンマスもだ。だからこそ、いや、だからこそ、魔王討伐にダンマスも参加させる。そうすることで、皆は納得して”死ねる”のだから。」
 鳥海はぞくッと来ていた。南もだ。確かにダンマスは”死ねない”システム上コアが破壊されるまで死ねない。それと同時に自分も、今はどっちも同時に死なない限り死なない。いや、死ねない。そう考えたことはなかった。
「だから、今回の案には私は支持していた。我々は勇者に討伐されるその日まで死ねないのだよ。」
「何か…。後、これでいいだわさ。」
 鳥海は、ダークボックスに手を突っ込み、指だけを影の内部に入れる、そこで”集熱”に”冷却”を連携させ、熱を反転させた。
「昔聞いた、自由になった作られし者を思い出しただわさ。副産物とは、恐れ入っただわさ。」
「まあな…。」
「でもね、生きる権利はみんなにあるの、私はそう思ているわ。」
 神様の真摯な顔がいたたまれなさに
「少し雑談してから送迎するだわさ。もう少し冷却しないと中和できないだわさ。」
「器用なのね。」
「アチシは平和が好きだわさ。ちゃんと銃をホルスターにしまえるだけの知性は持っているだわさ。」
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