上 下
592 / 1,270
第15章 オペレーション:ハッピードライブ

第586話 ノリは、社員旅行のパックで大衆演劇。

しおりを挟む
 パーティ会場に来ると、急に会場が2Fの大聖堂に変更されていた。ここはクラウドドラゴン戦でもパーティを行った巨大会場だ。まあリンシュメルトが宗教国家なのもあり、巨大な大聖堂が存在していた。ただ、ここは何かあると閲兵式とか、又はパーティ会場にできるように移動可能なテーブルや椅子で構築されていた。
「おおー!」
 入ってきた勇者たちとお上りダンマスたちが驚くのも訳はない。普段は田舎でスローライフであり、閉じこもることが多いダンマスにとって王宮の華やかな晩餐会はある意味憧れだ。ここ最近魔王バトルでも豪華な食事が出たが、それに引けを取らない豪華な食事だった。
「これ、食っていいのか?」
 最近出始めたウサギの丸焼きを指さす、その傍には壮年の美男子風給仕が、待機していた。
「立食だからな。そこだけは注意してくれ。」
 …表向きのパーティではダンスパーティも用意されており、ミーアによる演奏も計画されていた。が、まずは飯であり…全員がテーブルの食事に群がる。
「でも、これで俺達はお別れかな…。」
「いや…。」
「イーハ商会とかどうだい?」
「あなたは?」
「私はイーハ商会”アーリアサン共和国支店”のマッサー・ミッツだ。私の所は、風光明媚でね。」
 各所で勧誘合戦が開かれていた。勇者を見た8割以上の人間は時々メモをチラ見しつつ、勧誘に明け暮れていた。
「お久しぶりです。」
「久しぶりだな。」
 こっちに北は鎧を着て、警備を担当してる音無、葉隠。飯垣の3人の勇者パーティだった。
「一応、やっておきましたけど…。」
 息を潜め、音無がヒソヒソと囁く。
「後でうちに来てくれ、」
「はい。パーティの護衛が終わったら…。」
「…ちゃんとな。」
 今回の件に対して、水木福美リンシュメルト滞在メンバーにはあることを頼んでおいた。
「でも本当なんですか?リンシュメルトにいれば、大型の仕事が得られるって。」
 音無たちが頼まれたのは冒険者、主に”勇者専用掲示板”にある噂をばらまくことだった。それが”パーティ当日に護衛などの大型案件が来る可能性があるので待機しておくと大金を得られるかもしれない。が憶測が多い”という内容だった。
「そんな事は言わねえ。だろ?」

「何者!」
「我輩は魔王ンジェモロンバルンガング!そこの勇者どもは魔王である我輩の邪魔である!死ね!」
 ダンマス一同が感心した声で歓声を上げる、めったに見ない古典的な魔王登場だったからだ。そう、出てきたのはタキシードを着た魔族風の男だった。そして、その魔王の書劇を南がかろうじて弾き飛ばす。
「え?あ…魔王、んじょもろばるんが…ああ!言いにくい!そこの雑魚魔王!何の用よ!」
 ただ、南の伝説を知っているダンマスからすると、この劣勢はむしろ驚いていた。聞いた話、敗北確定雑魚魔王の予定だったからだ。
「頭が悪い聖女。まだ、ミドルネームのフォーリキッドカインドネスラウンドフォー・クリプランドニアセカンドコルワンナイーブゾロアスターを入れていない親しみやすい方で…」
「うるさい!」
「そこの勇者の束どもを殺せば我輩は生活が安泰である。だから、ここで勇者ども死ぬがいい!」
「私がさせるか!」
「そうだな。」
 そう言うと魔王は近くの女性、里中をを指さす。
「貴様!我輩と来るがいい。」
「嫌よ!」
 南はかばうように前に出…ようとしたところ、里中の姿はもう魔王の手の中にあった。一部拍手もしているように見えたが、勇者たちの狼狽もすごいものがあった。
「人質を取れば、きっと手出しはできまい…。出すやついるかもしれないけど。」
 ちらっと護衛を見つめる、ただ、音無含め全員動けなかった。正確には動けるほど隙が無いのだ。その位早く、そして、目の橋で周囲をけん制していた。
「卑怯な!」
「我輩は紳士的なのだよ、」
 魔王は里中さんを肩に引き寄せる。やっと正気に戻ったのか…兵士たちが会場になだれ込んで来る…。
「う…さすがにこの数となると相手が面倒である…。なので、これで撤収するである。人質は取ったので、助けてほしくば、わが居城の魔の森までくるである、さらばだ!」
 そう言うと魔王は彼女をふっと消し、龍に変身する。そして…バルコニーから悠々と飛び去ってしまった。そう、これこそが、ダンマス歴に名を遺す最悪の”狂乱”の始まりだった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

物語の悪役らしいが自由にします

名無シング
ファンタジー
5歳でギフトとしてスキルを得る世界 スキル付与の儀式の時に前世の記憶を思い出したケヴィン・ペントレーは『吸収』のスキルを与えられ、使い方が分からずにペントレー伯爵家から見放され、勇者に立ちはだかって散る物語の序盤中ボスとして終わる役割を当てられていた。 ーどうせ見放されるなら、好きにしますかー スキルを授かって数年後、ケヴィンは継承を放棄して従者である男爵令嬢と共に体を鍛えながらスキルを極める形で自由に生きることにした。 ※カクヨムにも投稿してます。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

あなたがそう望んだから

まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」 思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。 確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。 喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。 ○○○○○○○○○○ 誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。 閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*) 何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

称号は神を土下座させた男。

春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」 「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」 「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」 これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。 主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。 ※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。 ※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。 ※無断転載は厳に禁じます

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

あの味噌汁の温かさ、焼き魚の香り、醤油を使った味付け——異世界で故郷の味をもとめてつきすすむ!

ねむたん
ファンタジー
私は砂漠の町で家族と一緒に暮らしていた。そのうち前世のある記憶が蘇る。あの日本の味。温かい味噌汁、焼き魚、醤油で整えた料理——すべてが懐かしくて、恋しくてたまらなかった。 私はその気持ちを家族に打ち明けた。前世の記憶を持っていること、そして何より、あの日本の食文化が恋しいことを。家族は私の決意を理解し、旅立ちを応援してくれた。私は幼馴染のカリムと共に、異国の地で新しい食材や文化を探しに行くことに。

処理中です...