上 下
550 / 1,281
第14章 下部組織は基本押し付け

第545話 交渉現場は常にさや当て

しおりを挟む
 とりあえず来ていたのは、商業ギルドのちょっと小さそうな事務所だった。巨大な五階建てのビルがメインのワーカーギルド本部とは違いこじんまりとしていた。報告によると冒険者ギルド本部はもっと小さいが、”持ち株会社”のノリらしい。中に入ると…私も見覚えのある適当”モダンタイル”の床に、木のカウンターがある。この木のカウンターはわざと高くしてあり、顔しか見えないこれもれっきとした工夫で主に…強盗対策だ。高くすることで乗り越える事をう可能にし、且つ係員からは出入り口が注視できるようにしてある。
「いらっしゃいませ。」
 ただお客はいない。ここは商人などに対する優遇などのサポートや書類などの受付がメインで、…基本的な商談は隣のワーカーギルド本部で行う。なのだが、今回はギルドオーブの発行なのでこっちだ。
「私は予約した井原だ。支援の件のメールは送ったはずだ。」
「…はい、伺っております。」
 事務職のおねーさんが2名いるが地味にこの二人”ハイエルフ”である。ジャンの開店に関する相談できているが、うち一人がここの副総裁と聞いた時は…地味に驚いた。
「今回の件に関しては、上の会長室に向かってください。そこで。」
「分かった。」
 上に上がると木の扉がでかい、しかも間に何か挟まっている。通称”防音加工”という奴だ。
「…なんかこじんまりしていますね。」
「一応下部組織だ。基本的なのは全部本店だろうな。さて行くか。」
 私は軽くドアをノックする。
「お入りください。」 
 …これは…。私は努めて冷静にドアを開ける、そこには少女の姿だ。白い貫頭衣にどう見てもかわいらしい印象の…冷たい目の少女。
「お待ちしておりました。今回の案件は私が受けます。」
 ハーリスさんだ。
「どうしてあんたが?」
「…今回の案件で南も扱いかねると、またリューネの件もありますが、今回の作戦に関し色々後手に回っています。なので、私がある程度手伝う事になりました。」
 予想外過ぎる。
「こ、この方は?」
「・・・あ「私は、ハーリス。今回の案件の特務担当となります。皆様に対する支援について、また今回は依頼もありますので、そちらの件についても。」」
 …やりにくい。
「おかけください。」
 社長室のノリだが、商談用テーブルのソファーに座る。ハーリスさんも座ると、ダークボックスから…ポットを取り出し、妙に高そうな陶器の器に注ぐ。これは紅茶。
「紅茶・・・ですか?」
「はい、落ち着いていただこうかと。」
 実際思い出召喚で紅茶パックはある。主に鳥海さんとかだ、だがこれは?
「これは、楽園から買ったんですよ、彼女たちの中には酒と紅茶に興味のある方がいらしたようで、購入させてもらいました。」
 …これは地味に交渉がつらい、こういう高額そうなものは交渉において出鼻をくじく最大の手の一つだ。
「あ、ありがとうございます。」
 特に交渉初心者、堂島君は、当然これだけで委縮してしまった。
「さて、今回の案件ですが、そちらから。」
「ああ、今回の件は、フランチャイズによるギルドの出店をパルマキア公国にしたい。ギルドオーブを一つ、貸し出して欲しい。」
「支店出店ではないのですか?」
 この差については水木さんが聞きに行ったので、まあ水木さんもアランもこれだけ大きいギルド商店の事だから聞きに行った。フランチャイズによるギルドオーブの貸し出しは俗にいう街酒場とかで、簡単な出店を行う商売端末の貸し出しだ。カードの発行もあるし、スキルオーブの取り込みによる市場出品や、買い付けも可能だがここまでだ。それ以外はできない上に商品数はどうも普通のショップ機能と一緒の”5品”に限られる。大抵はエルフ塩、冒険者セット(弁当)AとB、ポーション+フランチャイズ店の店主が選んだ一品となる。支店が出てくる場合はこれに3つの機能が付く。それが所在国家に対する”支援金需給””王への国家カード配給”、”ゲート開設依頼受付”である。但し、地味にここも家と争ったのだ。特に支援金だ。後ゲートも鳥海は問題視していた。ゲートは支店がある国歌や都市に支店がゲートを開き、支店間をつないで、瞬間移動が可能だ。但し一回開くに6千万DP(金貨6万枚)を要求し一日だけ開かれる。これは当然あいている時間だけ、自由に通行可能だ。…非常に高いのは既存の運輸方法を破壊しない配慮だというが、実際は大陸だろうが危険地帯だろうが渡れるのだ。しかも一日開いている。荷物の運輸もし放題だ。支援金は…どうもこっちの税率は無効の想定税率より高い上に言い方が”特産品(品名は貴族指定))3割+その商会の純利益の3割がうちの税率である。それに対して、向こうは国家規模に応じた固定金額となっている。がギルドは国際企業、当然収益も莫大だ、これの7%取ると言っても、この金額を軽く突破する。それを3割である…確かに多い。
「それは問題がある、主にそちらとザガートン国に対してだ。」
 ここで問題なのが、ゲートの開設部分だ。敵国同士でつなげればそこを通過して兵士を送ればいい。一日立つ10万人はゲートの大きさにより運べるだろう…そんなものが自国にあるなんて誰が欲しがる?敵兵十万が沸くゲートの設置ポイントの代わりに金がもらえる…というのはどれだけもらったら割に会おうのか、計算できない。それはザガートンも一緒だ
「…だからですか?」
「ああ、いい落としどころだと思うが?」
「私たちが降りると思いませんか?」
「そちらは、ある程度、彼らを支援するはず…だよな?」
 少ない言葉ながら、かなりの空気だ。堂島君の目が…泳いでいる。
「確かに、そうですが…オーブだけなので?」
「そっちが例えば支店開設に、ゲート開設を除外するとか言えば違うだろうが、そうはならんだろ?」
 もう一個効いたギルドの姿勢は”基本中立”と”金を払えば依頼としてどっちにも向く”というある意味拝金平等性だ。だから、こっちがたとえ最初はパルマキア公国にゲートを開く契約が無くても、ザガートンが金を摘んだらゲートを開けかねない。それが怖い。まあ、領域をいただいてあればいいんだろうが、計画には支障が出る。
「よくわかっている事で。」
「だから、フランチャイズのみだ。」
「分かりました。それは認めましょう。さて…私の方からも。」
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

側妃ですか!? ありがとうございます!!

Ryo-k
ファンタジー
『側妃制度』 それは陛下のためにある制度では決してなかった。 ではだれのためにあるのか…… 「――ありがとうございます!!」

【完結】そして、誰もいなくなった

杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」 愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。 「触るな!」 だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。 「突き飛ばしたぞ」 「彼が手を上げた」 「誰か衛兵を呼べ!」 騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。 そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。 そして誰もいなくなった。 彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。 これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。 ◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。 3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。 3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました! 4/1、完結しました。全14話。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

あなたがそう望んだから

まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」 思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。 確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。 喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。 ○○○○○○○○○○ 誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。 閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*) 何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

転生調理令嬢は諦めることを知らない

eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。 それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。 子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。 最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。 八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。 それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。 また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。 オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。 同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。 それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。 弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。  主人公が酷く虐げられる描写が苦手な方は、回避をお薦めします。そういう意味もあって、R15指定をしています。  追放令嬢ものに分類されるのでしょうが、追放後の展開はあまり類を見ないものになっていると思います。  2章立てになりますが、1章終盤から2章にかけては、「令嬢」のイメージがぶち壊されるかもしれません。不快に思われる方にはご容赦いただければと存じます。

処理中です...