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第14章 下部組織は基本押し付け

第535話 勇者召喚はどうしてここに?

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「で、だ。ふむ…。」
 今回はドルカスを指定しての会談だ。というのも今回は正々堂々の行き先についてもあるが、パルマキア公国の…実は、大臣に”交渉担当”がいない。そして、外側。特にザガートン国側は、誰も交渉も対策も考えていない恐れがある。となると、今回のプロジェクト”密輸トンネル”の為にまずほしいのは…パルマキア公国側に行く”密輸業者”向けの受け入れ態勢の構築だ。主に、ザガートン国側に対してだ。向こう側は、道路があっても占拠するにしても、大っぴらでいい。ついでにこの山脈、約7000m級の山々であり、普通にやると越える事さえ難しい、なので…。対岸を見る事は空を飛ぶ以外不可能に近い。がその中において今回のトンネル案は、地味に盲点だ。
「大丈夫かこれ?」
「こっちとしては受け入れの為と監視を兼ねて、わざとこの辺に村を建築して欲しい。そこまでを開拓用に物資を運べば…我々が獣道でも作っておく。」
 今回のプロジェクトは、3段階の…致命的な交渉を必要とする。一つはこの”対岸の許可(見逃し)”だ。これが無いと、ダンジョン領域を這っているので、地味に警備兵一人置かなくても領域をコアに監視させれば、行き来の阻止は可能だ。だからこそ、相手側にまずは許可を取る必要がある。これが相手にとって都合がいいのか悪いのか。それを聞きつつ、お互いが責任を取れるところに落とすのが一だ。
 二番目は。今回の計画のほぼ全部を正々堂々側にさせる事だ。できるだけ手を貸さないようにする。但しダメ出しは行う。これは鳥海が言うのだが…こういう時に口を出し過ぎると、会社として成り立たないほどに、依存体質になる。そうしたら最後、下部組織としての意義を失うお荷物にしかならない。そこで、宥め賺して褒めたたえ、相手のやる気をまずは育成する。そして独立機運を取ってもらう。そのために、原審の闘士以外はできる以外しない。
 3番目は、ダンジョンを建設させ…向こうの王国に認知させること。できればダンジョントライをしてもらい、ほどほどにお宝を巻いて、DPを効果的に稼げる素地を作る事だ。ただ今回はここにいくつかの。トラップを仕込む予定だ。
「…これさ、草原諸国にばれたらどうするんだよ。」
「一応、その為にこのマップだ。」
 一応私の下手な…ではないな、地味に角ばった絵面のマップを見せる。
「これは?」
「空撮した草原諸国内の層下の同盟のエリアマップだ。」
 こういうところで、地味に役に立つのが、ミヨちゃんの凄い所だ。
「…これ。くれるのか?」
「いや、無理だ、今見せるのは可能だ。」
 しかも結構場所は、ぼかしてある。ただこの世界でのマップは地味に重要だ。ダンジョンバトルでなく、本拠地に攻め込むとかを可能とするからだ。このマップによると草原諸国は24名の初心者というか、普通のダンマスがいて、それがお互い不戦協定を結んでいるだけの組織だ。がその多くは議会が開かれる中央国と、海側に開かれた河口側の3国に集中している。結構温暖なうえに、雨も多く、大紗河からの熱風で出来る台風がこの地域を”多雨地域”と化させている。これが地味に、ダンマスの防衛に強くなっている。というのも場所次第では水はけもあり陣地を這って街を作っても雨で押し流される。そしてダンジョンはDPを払えば雨も降らせれる。…これがいかに防衛しやすいかわかる。国を挙げた大型の討伐は無い上に自然からの水の配置さえ計算してしまえば、自然の水攻めが勇者たちに可能だ。その上この国家間では冒険者という概念が無く、ヘイしか、国軍しかダンジョンには来ない。その為、非常に防衛が楽な地域なのだ。その為…他への侵攻しなくていい、又は…山奥の貧困国へのマークは薄かった。だからこそ、パルマキア公国は逆転を狙った勇者召喚を行ったのだ。
「でもこれだとよ、国境は…。」「
「そうだ、ダンマスの手は入ってない。が今後は…。」
 一応草原と山岳同盟はお互い名前は似ているが、お互いを嫌い合っている。草原派が言うには山岳は国に取り入って侵略してきた。山岳に言わせれば、ちょっかいを出して攻めてくるのは向こうだ。そのためか、火所に…この論争だけでも結構掲示板を潰してきた。その為ドルカスと、草原同盟は書き込み禁止状態になっている。どっちかが出てくれば非難の応酬で。論議や情報が消えるからだ。
「だから、このトンネルを抑えておくことで連中と交渉を行えるようにしておく。そしてそっちからすればその位置を秘密裏に知っておく事で、侵攻や交渉の足掛かりにする。」
 これが鳥海の言っていた交渉ラインだ。現代社会と違い、この頃の交渉には最低でも”正式文章を届ける”という行為が必要だ。がこの正式文章を届けるというのが地味にきついのだ。主に”盗賊に襲われないか?”という点と”戦争地域に踏み込めば、敵兵として殺されかねない”という事だ。その為に商人に化けたり、様々な交渉ルートがあってしかるべきだが、この草原諸国とザガートン国はその隙間となる交渉ラインの場所も地域もない。これは水木調べだ。なので…この2国においては交渉は現在できない。
「…交渉のか…。」
「ああ、その為にこのラインを向こうに覚えてもらう必要がある、ただし…。」
 ここで問題になるのが、ザガートン国の…首脳陣の性格だ。極めて脳筋で、腕力第一主義なので、まともに王に話を通せばこの話を消されるか、私の首が物理的に飛びかねない。それくらい…本音と建前が乖離してないのだ。そこが、非常に問題だ。そこで…一部の人間にだけ話を通して”お互い効かなかった事”にして便宜だけ用意。後は密輸業者共々通行に使う村を配備して、そこに監視員を置けばいい。
「…。分かった、村の建築は…俺から木材調達で、開拓村建築を打診しておく。」
「すまないな。」
「…ところで鳥野郎は?」
「…今顔を出すと、ぶん殴りそうだからと、自重してもらっている。」
「やっぱりか…。だめか?」
「今回は国辱だと言っていたからな。後、国辱で思い出した。これだ。」
 ドルカスの前に投げてよこしたのは、”勇者召喚の手記”だ
「これは…。」
「どうもこいつは商人から手渡されている、しかもそれは…リラシルトだ。」
「ぐ!」
 今回の件は地味に影響が大きい、勇者召喚は本来勇者大陸の3国”パルミダーク(エルシュウッド)、モートリア(亡国)、エクトネーゼ”しかないはずである。で、ザガートンも本来は勇者召喚を持たないはずだった。が、ギルド調べだと”リラシルト”から買ったとの報告を聞いていた。という事は、どこからこの国に勇者召喚の情報が流れたのか。である。それが今回の謎の一つだ。牢屋にいるはずの承認も…なぜかおとなしく捕まっている。という事は救援部隊の当てがあるのである。そう出ないならいつ処刑されるかわからない現状を…何も考えない訳が無いからだ。
「あの狸共が!」
「…ただ、今回の件は大きな貸しとなる。それも含めてな。」
「ぐ…ぐ…。」
 歯ぎしり思想にまでして、怒りを抑え込んでいるが、今回の件は全て・・・人間を舐めていた亜人の悪い癖が出たのであろう。
「最悪は私が…。」
「いや、やっておく。だから。少し待ってくれ。」
「分かった、私も調査をしないといけない事があるからな。」
 そう、今回の件には謎が多すぎるのだ。
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