魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”

第１４章 下部組織は基本押し付け

第５２５話 交渉は何でもありの決闘みたいなものだと交渉者は言う、

「そう言えば、毎回、2対２の交渉だな。あれに意味はあるのか？」
「あれはいみがあるというより、アチシ必勝布陣だわさ。あれは俗にいう”局長級とか、もっと下”用の交渉せっディングだわさ。」
　鳥海はこう見えて、地味に交渉がうまい、そして彼女の談を借りるなら交渉はする前に”9割以上勝敗が決まっている”のだ。相手とのセッティングや情報、能力。そのすべての情報法を探るだけ探り、相手の苦手な編成で勝ちこみ、できるだけ誘導する。欄外工作当たり前、ざっくばらんな昼食会というセリフは交渉者に言わせれば”場外乱闘で殴り合う”と言わしめる。そこまで、下での土台交渉は熾烈を極める。わいろは当たり前。贈り物の質を見て、相手の情報力を探りつつこちらの情報力を見せつけ、相手に自分の持っている情報を類想させる。それ位当たり前にやる。脅し、賄賂、接待なんて普通。海千山千の交渉の世界代表が争うのが…国際会議とかの事前交渉だ。その中で2対2の交渉は、賄賂には地味にきつく、監視者がいるので、たらし込むのが難しく、且つ、交渉者は有利な二人目を選択できる。有名人やあえての一般人など、様々なオブザーバーを使い交渉を操る。そう言う、何だろう、聞いていて思ったのが恐ろしく高尚なフィギュアスケートを思い出した。ついでに情報は交渉中から出てくることもある、それを引き出すなど、即座の判断力も求められる。
「…私だと不味くないか？」
「もともとはあんたの、知名度を使い、こっちの地位をあげるのに使っているだわさ。最近はあんたの動かない顔を見て。それを利用した…こっちの動揺を隠すためと、技術系の人間の専門職溢れる提言は、時として、交渉の突破口になるだわさ。だからこそあんたを連れてきているだわさ。」
　こう聞いているのは、あれからもう一回”亜人同盟”の南からダンジョンバトルでの交渉をともめられたからだ。…先日の件もあるが…。どう出るのか。
「断るのも手では？」
「それも交渉手段としてありだわさ。ただ、それを今やるにはきついだわさ。せめて遺憾の意を表明してから、そう言う手に出るだわさ。」
　こいつに言わせると遺憾の意は”交渉材料として使うが今は放置する”という意味で。後で交渉では議題にあげる。そう言う意味だそうだ。が、大抵こういう事を言わせる相手は碌にいう事を聞かない。じゃあ、どうするのか。戦争などの手段での勝敗や、これ以上の発展の際には必ず合意文章を出せ。すなわち”こっちに何か寄こせ”というサインだ。大抵は無視を決め込むので、これ以上の優遇はなし、解決しないなら（こっちに何かくれない）なら、向こうの意見を突っぱねるという意味だ。但し、交渉の多くは”実行された後”に弱い。実行されてしまえばどんな交渉も、無に帰すからだ。
「さて…ショウダウンだわさ。」
　毎回思うが、この鳥海、交渉を…戦闘だと思ってやがる。

「クックック。お初にお目にかかる…でいいのかな正確には。」
「いや、そうでもないな、勇者さんよ。久しぶりだな。」
　今回鳥海が連れてきたのは”ジャン”だ。そう、リンシュメルトの”革防具店”の撤退を天秤に交渉するつもりだった。だからこそだが…。
「…少年でいいのかな。」
「だな。」
　交渉に立つのは…あの少年が”教授”。勇者界のトップであり、伝説の勇者、そしてそれに従うのが南だ。
「どういう事だわさ。」
「…先日の件で…。」
　南の言葉を教授が手で遮る。
「…ふむ…。今回は魔王軍として、謝罪を兼ねてここにきている。ドルカスが君たちと和解すべきだと。そのために私に権限を与えたうえで、交渉を妥結しに来た。」
「…ふざけないでほしいだわさ。」
「今回は、不幸な事件だった。然担当者のリューネは悲しくとも強くはあったが、交渉は苦手だった。」
「そうだわさ？」
「一往落としどころとして、たたき台を用意してきた。まずはこれを見てくれ。」
　教授が数ページのレポートをテーブルに置き、それを黙って鳥海が見る。
「かなり虫がいいだわさ。」
　私はコアルーム経由で画像を見ている、鳥海はこっちを意識してページをめくって、こっちに見せてくれていた。
「そうだな、裏切りの後にこれか？」
「私が知る限り、今回の決定のうち、動かせない物がある。それを除いた最大限のこちらの譲歩だ。」
　書かれている内容は、パルマキア公国はこのまま4人の手で調略をさせるが、4人を千鳥万花の下部組織として”従属”の立場を取らせる。そこで交渉した結果に亜人同盟は感知しない。また、謝罪として交渉担当者が許す限りの譲歩を行う。但しあまりに不利なら、断る胸も書いてある。確かに虫がいい。
「どうだね？」
「…これだと、うちのメンツをつぶした分の賠償が無いな。それにだ。下部組織って、ここまで来たら連中を亜人に突っ込む予定じゃねえのかよ。」
「…やりにくいが…ここはジャンの顔を立てて説明しよう、彼らを亜人に入れると、落ちた勇者関連の法律で。処罰…即ち滅ぼさないといけない。そうなれば保護した意味はない。」
「…あんたらの規則だわさ。」
「…それにだ、この亜人一強は…私張るリューネ達みたいな傲慢さを初心者ダンマスに与える、元々の方針だと。一定の援助が終わればもとより手放す予定だ。」
「どういう事だわさ？」
　…画面を見ると南さんでさえぎょっとした顔をしている。聞いたことが無いのかな？