魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”

第１４章 下部組織は基本押し付け

第５１２話 緊急事態での大物の足は素早い。

　オウルはまず、パルマキア公国の調査を行っていた。どうも謁見の間で勇者召喚を行ったみたいだ、召喚陣は光り輝き、強い光を放ったそうだが、肝心の勇者は現れなかった。
「ホッホッホ、これは…。」
　それにより、勇者召喚は”失敗した”と位置付けられた。が問題は他国から高額で買い付けた”魔石”だ。この消失は問題となっていた。使い道のない魔石を大量に消失したのだ。

「貴様！嘘を教えたな！」
「お待ちください、人は光り輝き、確かに儀式は成功したはずです。」
「なら肝心の勇者はどこに行った！」
「あ…が…。」
　ボロボロになった行商人をとらえ、謁見の間で王が尋問していた。・・・密輸で手に入れた魔石は１g金貨一枚にも及ぶのに２．５㎏も必要で…しかもそれが消失したのだ。しかも魔法使い１０名も、攫って来たものだった。そうなると費用は国家転覆並みとなる。それが失われたのだ、国王の焦りも理解できよう。ただ、即刻首をはねないのは損失を取り戻す算段を付けたいためだ。

「オウル様」
「どうした？」
「国境線にドワーフワイバーン部隊を確認。最悪、越境するかもしれません。」
　この損失に焦る理由は二つある、このパルマキア公国は草原諸国１０国の一つであり、体勢は”合議制”である。１０の国が会議を行い、各国の調整を行っている、その中でもザガートンと接する三つの国、パルマキア、エルメキア、サフォーレンの三つの公国はここ最近の侵攻においてザガートンがドワーフの協力を得て以来負け続きとなっている。そしてもう一つのカードとして、”勇者”による軍隊の蹂躙があげられる。魔法の力でボコボコにされたが、エルメキア、サフォーレンの２国は魔法の導入に慎重だった。が負けたのは事実だ。と独断でリラシルトと連絡を付け魔法使いと、最近売り出された”勇者召喚の儀式魔法”を購入したのだ。起死回生を狙ったが、外れたとなると、今後の国家運営どころか最悪、隣国が攻めてきかねない、その為、ここでついえれば…と思っていた。が事態は相当悪化していたらしい。が…。
「ホッホッホ。これは…。」
　政治体制的な合議制の欠点は”即応性に欠ける”という物だ。例えば責められた場合においては、草原諸国は何とか一国の力で耐えて援軍を待つというのが、基礎スタイルだ。が…。
「どうします？」
「最悪は制圧・・・かのぉ。ただし交戦時には…じゃの。私は念の為のサブマスターも持っておる。が、使わんほうがええがのぉ。監視を続けてくれるかのぉ。後、憑依も忘れないようにの。」
「はい。」

　送られてきた情報を基に…ミヨちゃんの所の打にダンジョンマスター基地から作った臨時の出入り口を設置。そこに本部をつなげ本部では情報を集めていた。
”最大３００人規模の勇者？”
”勇者確保に月下動く”
”ドワーフワイバーン部隊が草原諸国の国境待機”
　現在の情報はこうなっている、
「どうするだわさ。」
「勇者が３００？嘘だろ？」
　流石に井原でも勇者が三桁で来るとは…考えられなかった。そして亜人がこの情報を持っているからには、ある程度の確実性があるとみていた。そして、確保に動くのは月下の庭園一応ミヨちゃんは遠目から月下の庭園の監視に向かわせた。
『すいません。ダンジョンバトルの申し込みがありました。』
「…なんだわさ！」
『千鳥万花相手に…リューネ様からです。』
　その言葉に全員が凍る、ダンマスDP収益ランキング３位にして謎のダンジョンマスター。聞く限りそれらしい”稼ぎ”を一切していない唯一のダンジョンマスター。それがリューネである、ダンジョンバトルを受ける条件に”ゴブリン村と楽園、聖女の安息所からの勝利”を条件とし、それ以外をすべて断っている。かかわりもほぼなく、旧魔王軍のトップ幹部でもある。
「…どうする？」
「受けざる負えまい、いつもの交渉テーブル、２対２なら受け付けると伝えろ。」
『分かりました。』
　今回の件に対して、結構大事になりそうだな。