魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”

どたぬき

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第13章 新入社員と改革のススメ

第497話 報酬と情報で…割に合わない分払っている場合がある、

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 ドランの意見もなかなかまとまらないので、貯まった仕事の一部をやっておく事にする。
「ふむ…感謝する。思ったより報酬が多いな。」
「これが井原で。…こっちはウルフェちゃん?」
「そうだが、こちらは?」
 一応柳田に依頼した関係上。その報酬を受け取るにはトレードでもいいが…情報交換も絡むためにこうやって、直接渡しに来ていた。本来の報酬は500万DPだが1.2倍の600万DPを積んでおく。
「ああ、フェンリルを見たいという事で…ついてきた当主たちだ。」
「…よろしく頼む、貴様も見たかったんだ。」
 柳田の一応上役だという二人の女性だ。一人はまさに妖艶という尻尾をくねらせた女性だ。種族を見ると天狐人になっていた。狐系のお姉さんか。そしてもう一人が魔族になっていた。ただ、レベルの割にステータスが高いから進化の可能性があるが…。
「私は白の総長。徳永よ、獣のダンジョンマスター。」
「私は黒の総長。新井だ。森のダンジョンマスターだ。」
「黒じゃないんだ。」
「それが、地味に黒はボーナスに問題があってな。…黒いモンスターの召喚半額と言われて…。どのモンスターがというのがな…。そして後で知ったのだが…ダークエルフは”土色”であって、”黒”ではない扱いらしいんだ。そう聞くとな…。」
 ダークエルフが、黒くないという話か、そう言えば褐色が多いのであって、あれが黒人みたいな”黒”ではない。又チンパンジーやゴリラみたいな黒色ではない。という扱いか。
「後でいいから、モフらせて。」
「すまないな…。でもこれがフェンリルか?」
 思いっきり対応が付き添いのウルフェ一択だ。まあ、先方に言われて連れてきたから当然と言えばそうだが…。でも俗にいう普通に狼耳の少女だ。しかも地味だ…普通の女の子と思ったら特徴のないが意見だった。ついでにこの失敗以降変身を覚えさせる前に人間をダンジョンや町中で見せてから覚えさせることにしている。
「で?」
「…あの?マスター?」
 ウルフェは意味が分からないという顔で戸惑いを見せていた。混乱したと言っていい。
「…進めよう。話が遅々とし進まない。」
 いつの間にか二人のお姉さんはウルフェの傍に降り…隣で商談をしている私が…場違いな気がしてきた。
「ああ、色は付けておいた。向こうに全部払ってもらったからな。」
 契約が絡む仕事の場合、こういうだ死ぬ気合いは結構存在する。
「すまないな、後…。」
「この設計仕様書は見たが…すまないな。」
 今回、依頼である砦の仕様書を先んじて送っておいた。これでいいなら、ここから報酬交渉となるのだが…。
「どういう事だ?」
「発注された”石垣”はまず石切り場が無いと無理だ。その上…専門の職人がいない場合、木の棒を立てた方がいいまである。一応前の砦の画像も見せてもらったがなあ。」
「そうか?」
「あれには専門の職人が数百回は崩しては建てるを繰り返して覚えてようやく…壁としての機能を持つ、ただ石を置くだけならできるのだが、オーガクラスの突進や、破城槌を耐えるほどではない。」
 注文は人間でも建てれる”石垣”の作成だ。地味に石垣はどの城でも建築されたものだ。この建設には非常に時間がかかる上に低レベルだ砥石の矢を弾く程度でしかない。そうでないと石工を手配し成型するか…専門の職人がきっちり計算してくみ上げる必要がある。そして、事情を聴くと、それが不可能だった。彼らの求めた砦はどうも大森林にいる超巨大ゴブリンの巣とオーガの巣があり、そこの部隊相手に前衛基地を作るべく建設を行っていた。が、その途中で襲撃され職人は殺さるか…大けがをして帰ることが多かった。
 本来なら領域化からDP建築でいいんだろうがそこは柳田が断った。というのも…どうも人間側に維持させ、守らせたいらしい。そうなると、石垣はよっぽどでないといけない。そうでないと土壁+1程度の防御力しかない。当然3m以上あるオーガ達にフルボッコだ。ゴブリンも、攻撃次第では無駄になる。なので…という事だが建築時間だけはどうにもならない、ユニット工法の欠点に重さ男耐久度という話がまとわりつく。重い物を持って運んで…で、ちょっとでも手荒に扱えば壊れる。家は上下の力に弱い構造が多いのだ。しかも運ぶまでの未知も開拓する必要がある。おおきいからだ。が…敵の襲撃が絡めば…そんな時間があるのが疑わしい、
「となると…。」
「魔法を導入してはどうだ?」
「それが…そこまでの資産は無くてな。今回も補修費や食糧費など…。出すところが多い。」
 こうしてみると地味にパンダはパンダできついかもしれん常に敵国が襲ってくる前提の国家みたいなノリだ。巨大なモンスターのいる森はまるで潰れない敵国を見るようだ。しかも開拓が奥まで行けばさらにえぐい…オーガでさえ寄らない所の獣が出る可能性がある。きつい。
「あ…。あの…。」
「すべすべよねえ・・。」
「触り過ぎだぞ。」
 その間に徳永は頬を触り、新井は文句を言いながらも髪の毛をさすっていた。
「それは…さすがに。」
「できればさ、フェンリルの条件教えて?」
「頼む。」
「…無理だ、ともいうが、無駄だ。」
「どういう意味よ。」
「シングルモンスターは世界で一体だけだ。フェンリルは世界でウルフェしかいない。今後もできない。私が手放すこともない。私と苦楽を共にした部下だからな。」
「ぐ…。」
「情報交換に応じれるかわからないが…貸し1で頼む、そのシングルモンスターについて教えてくれ。」
 柳田も頭を下げているが、ここでむげに”勝手に調べろ”と言えば、あのうざったいスキュラの敵対勢力を潰しかねない、そして何より今後最悪…同僚になりかねない。なので…。
「無理に近いが…他言はしないでほしい。大方戦争になる。」
 その言葉に全員が息をのむ。井原はあきらめたように深くため息をついてから解説を始める。
「シングルモンスターは世界で一体だけ。最初に進化したもの以外生産できない。2体目以降はそのツリーごと消滅する。その為…探しているんだよ、進化先をな。でも…。あとは分かるだろ?」
 言いたいことは柳田は理解していた。例えばシングルモンスターを配下に加えるには相手のダンマスを滅ぼし…復活不可能な状態に追い込んだうえで自分が材料をそろえなくてなならない。もし相手のモンスターが欲しいならダンマス同士で殺し合うしかない。今は勇者の力が強い時だ。勇者を誘導し、相手に擦り付けて殺せば…フェンリルクラスが手に入るのだ。当然拡散すれば…自軍のためにと言って殺し合うだろう。当然情報も疑心暗鬼になる。
「…分かった。これ以上は聞かなかったことにする。いいな。」
「分かったわよ。」
「了承した。」
 そして、無言のまま…井原は立ち去った。
「でも…欲しい。」
「シングルモンスター。できれば一体は手に抑えておきたいな。」
「できればフェンリルが欲しい…ダークエルフ的にはな。」
 フェンリルは俗にいう異世界転生物において最強の”勝ちモンスター”だ。モフモフでもある。そうなると、あれこそ…パンダにあることがふさわしい。
「でも…。」
 だからと言って、今はスキュラ、ドランと敵に挟まれた環境だ。それを狙う気にはなれない。狙えば背中が怖いからだ。
「ね?」
「…やってみますが…文句は言わないで下さいよ。総長。」
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