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第13章 新入社員と改革のススメ

第491話 正式名称はジャッキアップユニット工法

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 着工から五日目。井原が到着するころにはどうにか、2F部分までの着工が終わっていた。井原は偽装用に馬車と資材を持ってきた。
「よくぞ。」
「工事は…ここで詰まったようだな。」
 私が下りてくると、さっとやってくるウルフェと、そして30人近い、柳田から借り受けた作業員だ。2回までは、鉄の棒と滑車を使って引き揚げたが、3Fまでとなると。普通には滑車も届かない。その上普通にやったのでは3Fまでに上げるに…。滑車や鉄の棒が重さに耐えれない。それは2階まで上げる段階で、全員が理解しておりそれが難題となっていた。
「後は普通に組み立てる…ではないよな…。」
「この時の為にこれを持ってきた。あとこれだ。」
 馬車から持ち出したのは”ジャッキ”だった。思い出召喚にあったもので、…これには苦い思い出がある。よく車に使うイメージがあるが、建築でも結構使う。重い物を徐々に上げたり、逆に圧迫するのにも使う。そう、このジャッキアップにはタイミングが重要でずれてやり直しとか起きるため、特にセンスや経験が必要となる。これにやったことない新人が混ざった時のいらつきときたら…。
「それは?」
「まずは2階の場所まで滑車で引き上げ、土台を作り、そこからこいつで徐々に高さをあげてからずらして、入れ込む。まずはそこに土台を作って木を噛ませて徐々にせり上げるぞ。」

 やり方はこうだ。

1,まずは土台を作り、その上に運ぶ予定の部屋を置く。この際に普通の設置ではなく材木を横にした”土台の木”を4隅に挟むのがポイントだ。

2、その傍の木にジャッキを設置。全員で傾き過ぎないように声を掛けつつジャッキを使い引き上げ、その下に枕木を設置してその上に畳んだジャッキ、ジャッキ作業用足場を設置。 固定を確認して元あったジャッキを下げ、回収する。

3、2で設置したジャッキを使い、土台を競り上げ2の工程を行う。2と3を交互に繰り返し、高さを調整し、建物を引き上げ、そのまま3Fの高さまで行ったら最初の部屋を設置するまで続ける。

4、最初の部屋を設置してしまえば、そこに滑車を設置して綱で引き上げる事が可能になるので、それで引き上げる。このために手動クレーンを魔界で設計して…こっちに運んできた。

 大型の工事現場になると。こういう時用の工事専用の機器を開発することが多く、こいつに多額の費用がかかるのだ。今回は工期短縮もあり、元々の設計だと”現地人の雇用”も考えたが…。体力面と教育面で不可能と判断し、柳田に人員派遣を依頼したのだ。こういう精密な作業には地味に、頭脳や経験、知識が欲しく、素人では普通に家を壊すだけという事も多いから…土木の建築での仕事仲間の評価は必ず覚えておく。いい人間に当たった時は楽だが。そうでないと、こっちの負担は死ぬほど増えるからな。
「せっせっせ!」
 全員が掛け声を合わせ、ジャッキを力いっぱい押し込む。それに合わせゆっくりと家がせり上がる。その工事の様子は掛け声共々周囲の関心の的となった。
「よっしゃ!いいぞ!挟め挟め!」
 掛け声とともに数人が材木を運び込みその上にバイラードの革を挟み、緩衝材を入れつつジャッキを仕込んでいく。こうしないと、土台が自重できしみかねず、完全な失敗となるからだ。こういう器具を使った工事では常に新工法を用いるため…失敗のロスが計算に入っている。ただ今回の工期にそれはない。なので前もって実験を魔界でしておいたのだ。こうして二日もたつと建物が完成し、屋根を素早く取り付け…どうにか工期ぎりぎりで完成したのだった。
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