上 下
415 / 1,270
第11章 出向社員的ダンジョンマスター

第413話 新たな冒険の始まりは、結構我儘

しおりを挟む
 一週間が経過し、どうにか黒川が戻ってくる頃、訓練しているのを見た三日月ナギサが全員に剣の訓練をつけてもらえることになり、全員で素振りをしていた。
「体幹をぶれないように。」
 流石に2時間ずっと素振りだと…全員の疲労もさすがだ。
「でもなんで…。」
「まずは疲れない素振りを覚える。それが大事だ。剣をフルに疲れない”姿勢”が作れれば後はそこから応用できる。まずは体力と素振り。」
 結構スパルタなのだが、恋天使でもある奥原たちはともかく、音無たちも一時間ちょいは素振りができるようになっていた。
「勇者だとその辺の最適化が速いから。」
 地味にさぼっているのを見ると、木刀で叩きに来る分…。スパルタではあるが。実際、ステータス差数百倍無ければ勝てないナギサ相手に戦う気はおきない。ついでにナギサに頼まれタミさんと、広い場所で一騎打ちをした場合…タミさんは受けるに精いっぱいで勝つことはできなかったという。その位にはナギサは強い。それを見た勇者たちが、剣を習うのは納得だろう。
「帰ったが…これは何です?」
「お父様。これはせっかく有名な勇者一行のナギサ殿がレッスンしてくれるというので。魔法も含め様々習っているところです。」
「…すまないな、」
「いや、同乗の門下生に教えていたのが懐かしくて、ついやっていたのだ、そっちの流儀もあろう。すまない。」
「気にしなくていい。」
 実際、黒川美玖は熱心に習っていた。体力はともかく…食らいつく姿勢が凄かった。その疲れているときも休憩を多めに取り、飯垣から魔法の理論について教わっていた。
「とりあえず休憩だ、少しぶれて来てるぞ。」
「は、はい!」
「んだば、リンゴジュースだべ。」
 全員にジュースを配っていくと、黒川たちも受け取っていた。
「今後だが…。お前たちはどうするんだ。我々も帰宅予定だが。」
「おらたちはこの子達を、北に連れて行かないといけないだ。」
 奥原たちを指さす。
「それは聞いてないわよ。」
「水木が言うには。しばらく後にザガートン国の首都で、どうもお祭りが開かれるらしいんだべ。」
 初心者ダンジョンが、成功か失敗が微妙な時に、ドルカスが持ってきたもう一つの報告。それが”豊年祭”と呼ばれる祭りをギルド加盟各国で開くとの事。一応義務はないものの出来れば賑やかしに来て欲しいと言われた。どうも首都ではオークションも開かれ、武術大会も開かれるという。
「そうなのか…。」
「お祭り。」
「どうも勇者大陸でも祭りを一週間後からどんどん開いていくらしいんだべ。で最後がこっちのザガートンだそうだべ。」
「そんな大きいのか?」
「一応王様号令の下、大国が開くんだべ。それに合わせてドワーフが武器オークションをやるらしいんだべ。一応亜人で募集中らしいんだけんど、かなり大掛かりらしいんだべ。」
「で、そこに行くと。」
「音無ちゃんをそこに送迎して、ダンジョン巡りとかさせるって話だべ。んだば、仕事や田舎ばっかりじゃ飽きるべ。んだから、休憩兼ねて…。」
「同行させてもらえないか?」
 タミさんがいきなり…手を握られる。
「んだば?」
「そう言うの…大好きなんだ。」
 一瞬気圧された。ナギサがキラキラした目で、タミさんの手を握っていた。あまりに早くて、全員…動作が取れなかったが。それ位彼女は興奮していた。
「そう言う大会とか、血が騒ぐ。」
「あ、これ。バトルジャンキーの目だ。」
「わ、私出るの止めましょうか?」
「…月下が行くなら我々も連れて行ってくれ。その調子だと…この大紗河、これる手段があるのだろう?
「ああ、それはあれだべ、おらが運んでいくべ、さすがにこの砂漠を馬車とかで渡るのは無理だべ。飛行持ちが飛んだ方が速いべ。」
「でも…砂の女王の領域だろ?」
「あ、それは大丈夫だべ。ちゃんとこの砂漠は”領域外”がいっぱいあるっぺ。んだっから。そこさ一部パクって基地にすッペ。」
 砂の女王は基本的にこの砂漠の全ては支配していない。人間た立ち寄りそうなオアシスに絞って占拠していた。水がないならモンスター含めこの砂漠は普通なら渡る前に死にそうな巨大な砂漠だった。
「砂漠の一部さ、ダンジョンにしちまえば。入り口張れるっぺ。そこから休憩すればいいっぺ。」
 本当なら、飛行で1週間はかかるが飛びながら移動すればどうにか飛べそうではある。但しミヨちゃんみたくダンジョン領域を飛び越せるほどのスピードは持っていないのでオアシスと、オアシスをつなぐ線を回避しつつ飛ぶとなると、それくらいかかる見込みだった。
「明日行くなら…兄上共々用意させる。兄は特にこういうのが大好きなんだ。」
「主に?」
「主に、武闘大会だ。」
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

あなたがそう望んだから

まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」 思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。 確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。 喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。 ○○○○○○○○○○ 誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。 閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*) 何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

称号は神を土下座させた男。

春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」 「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」 「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」 これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。 主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。 ※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。 ※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。 ※無断転載は厳に禁じます

あの味噌汁の温かさ、焼き魚の香り、醤油を使った味付け——異世界で故郷の味をもとめてつきすすむ!

ねむたん
ファンタジー
私は砂漠の町で家族と一緒に暮らしていた。そのうち前世のある記憶が蘇る。あの日本の味。温かい味噌汁、焼き魚、醤油で整えた料理——すべてが懐かしくて、恋しくてたまらなかった。 私はその気持ちを家族に打ち明けた。前世の記憶を持っていること、そして何より、あの日本の食文化が恋しいことを。家族は私の決意を理解し、旅立ちを応援してくれた。私は幼馴染のカリムと共に、異国の地で新しい食材や文化を探しに行くことに。

かつて最弱だった魔獣4匹は、最強の頂きまで上り詰めたので同窓会をするようです。

カモミール
ファンタジー
「最強になったらまた会おう」 かつて親友だったスライム、蜘蛛、鳥、ドラゴン、 4匹は最弱ランクのモンスターは、 強さを求めて別々に旅に出る。 そして13年後、 最強になり、魔獣四王と恐れられるようになった彼女ら は再び集う。 しかし、それは世界中の人々にとって脅威だった。 世間は4匹が好き勝手楽しむ度に 世界の危機と勘違いをしてしまうようで・・・? *不定期更新です。 *スピンオフ(完結済み) ヴァイロン家の少女が探す夢の続き~名家から追放された天才女騎士が最強の冒険者を目指すまでの物語~ 掲載中です。

処理中です...