上 下
390 / 1,270
第11章 出向社員的ダンジョンマスター

第388話 研究は2歩も3歩も進むから研究が実るのです。

しおりを挟む
「腰が痛い。これ、簡略化できない?」
 中腰になり、丁寧に地面に種を埋める作業をしていたが、これだけは流石にダークボックス等の自動化ができなかった。できるかもしれないが、今夜一晩だけのために開発するには期限が足りなかった。
「手を動かせ。でないと終わらんぞ、」
「でも…。」
「あの子たちを見ろ。」
 奥原は元々そこまで背が高くない上にゴースト系なので、宙に足を浮かせ座った体制のままスライドして、種を植えていた。
「あれを?」
「い、いや…。」
 陽華も丁寧に植えてはいたが。子供の為か…その奥で腰を叩き、遅々として進まない。月光の種植えをあざ笑うようだった。
「でも、タミさんって…大丈夫なの?」
「…あの人………。」
「ああ、タミさん。大丈夫よ、あれくらい。」
 奥原たちは気にしないように、種を植えていった。その間に、村の半分以上の土の撹拌を終えていた。
「あれはどこまで強いんだ?」
 実際、前回の戦いでは、月光とナギサを抑え、一人で戦っていた。月光はその言動とあのひょうひょうとした感じに、違和感を持っていた。
「さあ?」
「知らないのにその発言か?}
「だってあのタミさんよ。そう簡単には負けないわ。」
 実際知っている奥原たちからすれば、井原生え抜きの部隊長であり、”生産部門”である。実力としてはほぼ千鳥万花の上何番をほこる最強モンスターの一角である。最悪この月下の領域を勇者たちを抱え逃走するために用意された最大戦力である。
「…自信あるのだな。」
「ほらほら、手を動かす、早くしないと夜が明けちゃうよ。」

「やっと終わった。」
 5時間はかけたであろう、収穫が終わるとそこには、肥料の入った土がある、本来は土のアルカリ性等を調べ、植物に最適な環境を整えたり様々な障害がある。ついでに言うとこれでもこの世界は一日48時間の為、5時間ぐらいなら夜が明ける事はない。
「では行くっぺ。成長!」
 だが、成長に至っては実はそれらは関係なく”成長させる”性質がある。ただ、この魔法は一つ毎の単体で行う。が、光魔法後光を連携させた後その照射範囲に浴びせればそのまま全体化する。但し敵味方問わずだが
「すげぇ…。」
「んだばこれ、数十万MPはつかう大物だべ。」
「そうなのか?」
「んだ。」
 この後光の範囲化の欠点は自分にもあたる事。そしてもう一つは、対象が多すぎるとその分全部効果が分散する事である。その為、このような畑にかければ普通の魔力では何も起きないと判断してもいいくらい、効果が小さくなる。その為、後光はこの世界でも非常に人気のない魔法だった。…だったである。その使い道を研究し使えるようにしたのが南だった。クラウドドラゴン戦の直後開かれた”魔法の使い方”映像動画により様々な魔法の効果が出展された。その中には”ダークボックス処理”などの新事実やレベル9や10の魔法についても書かれた物だった。そして、そこに出てくるのが神秘のベールに包まれた現在でもダンジョンDPランキング3位の強者リューネだった。その為、この映像はすぐさま全ダンジョンで買われ。そして研究された。当然リューネに挑もうと考えている者はいなくなった。差があり過ぎるのだ。が、その中において、有志で研究を開始されたのがこの”後光”である。光魔法レベル6の魔法ではあるが。”連係専用”で効果は”後光の魔法の光の範囲内に連携させた魔法を発動させる”ことである。特に反応したのが、”柳田”だった。即座に専用ハッシュを設け、実験を募った。
「これが…。」
「んだが。ちょっと休憩だべ。」
 そこで分かってきたのが、この対象が多すぎると分散しすぎて効果を発揮しない事や、魔法の連携時は双方の倍率が加算されることである。光魔法LV6なら、計210%の倍率がある。そして、森魔法ならそこにも210%の倍率がある。これを連携させた場合双方の倍率を足した”420%”の効果が発揮される。ただしこの効果を”対象人数”で割ったのが正確な値のとなる。さらに設定した時間に応じてさらに火力は下がる。そしてもう一つの欠点がこの”対象人数に自分を含む”である。その為、港かは微妙に低く、そして対象が2個しかないとか、そう言う事態は少ないため、地味につらい効果がある。がこれを解消するすべの一つが”何回もこれを打てばいい”である。ただ、当然魔法は連係含めいくら無詠唱が可能でも思考時間が欲しい。となると、これも実戦には使えなかった。が、井原はここで止まらなかった。
「だいじょうぶ?」
「んだば、色々疲れたべ。」
 魔法には物理系含め様々ある。特にバフ系は重ねれないのか、井原は研究していた。が、この多くは無駄となった。攻撃魔法は持続するが、バフは効果時間のみで重複できず、作成系は後光があっても大して変わらない+光の範囲に行くと消えるが、自分が意識しなくても維持され便利になる。という者だった。一番相性がいいのは”透明化”であり、幻覚である。が視点を変え、後光の維持時間を最小に、全体化のみを取ってみた。そうしたところ、重複はした。が消費はお互いの分を食うため、非常に高く、且つ、使える範囲と時間は非常に短いという…微妙仕様だった。がこれに噛んだのが”成長”である。成鳥用の魔力は濃厚なまま散布されるので、成長が促進された。が、魔力も大量消費なら魔法も連続て使用する分、非常に神経を使い、脳負担が巨大化した。その為…使い手はいない筈であったが。そこを超えたのがタミさんのステータスだった。
「凄い…。」
 暗闇ながら、そこにあったのは垂れるほどに実った麦畑だった。
「で、これか。」
「んだ。」
 飯垣が地面を見ると、またもほぼ粘土化した農耕地だった。
「これも。」
「んだ。当然成長には栄養がいるっぺ。それを準備しないとすぐに枯れるっぺ。だから…。」
「ファンタジーにはいかんな。」
「んだば、この”土壌”を多めにかけたりして、多めに栄養入れれば、維持も可能だべ。」
「それだと水は?」
「もともと土壌に含んでるっぺ。水を含まねえ土は”畑”にならないべ。」
「でもこれでも…。」
「んだば。これで一応助かるっぺ。」
「後…雨は降らせておけ。」
 飯垣は地面を見つめつぶやいた。
「どうしてだ?」
「恵みの雨っていうだろ?」
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

あなたがそう望んだから

まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」 思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。 確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。 喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。 ○○○○○○○○○○ 誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。 閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*) 何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

称号は神を土下座させた男。

春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」 「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」 「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」 これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。 主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。 ※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。 ※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。 ※無断転載は厳に禁じます

あの味噌汁の温かさ、焼き魚の香り、醤油を使った味付け——異世界で故郷の味をもとめてつきすすむ!

ねむたん
ファンタジー
私は砂漠の町で家族と一緒に暮らしていた。そのうち前世のある記憶が蘇る。あの日本の味。温かい味噌汁、焼き魚、醤油で整えた料理——すべてが懐かしくて、恋しくてたまらなかった。 私はその気持ちを家族に打ち明けた。前世の記憶を持っていること、そして何より、あの日本の食文化が恋しいことを。家族は私の決意を理解し、旅立ちを応援してくれた。私は幼馴染のカリムと共に、異国の地で新しい食材や文化を探しに行くことに。

かつて最弱だった魔獣4匹は、最強の頂きまで上り詰めたので同窓会をするようです。

カモミール
ファンタジー
「最強になったらまた会おう」 かつて親友だったスライム、蜘蛛、鳥、ドラゴン、 4匹は最弱ランクのモンスターは、 強さを求めて別々に旅に出る。 そして13年後、 最強になり、魔獣四王と恐れられるようになった彼女ら は再び集う。 しかし、それは世界中の人々にとって脅威だった。 世間は4匹が好き勝手楽しむ度に 世界の危機と勘違いをしてしまうようで・・・? *不定期更新です。 *スピンオフ(完結済み) ヴァイロン家の少女が探す夢の続き~名家から追放された天才女騎士が最強の冒険者を目指すまでの物語~ 掲載中です。

処理中です...