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第11章 出向社員的ダンジョンマスター
第387話 よく考えてみると単純だったこと、結構あります。
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次の日に楽園から伝えてもらったのは、
『あの土に関しては、秘密にしてもらいたいため…今回は提供できません。すいません。』
という亜人同盟のそっけない回答だった。それはそのままタミさん経由で奥原たち勇者チームに伝えられた。
「なんでよ!冷たいわね。亜人も。」
「そんなものが本当にあるんですか?」
「どうも井原も一度聞いただけで、うろ覚えで注文したから、何とも言えないけどね。でも、どうする?」
「父も母ももう冷たくて…。」
「分かってるミレイさん。」
全員が、頭を抱えている。対応が速いのはうれしいが…現在ミレイは半分生贄みたいな形で、行商人の所に送られている。寒村において、気に入った娘がいた場合、支度金と称してその娘を売り払う”人身売買”は横行していた。法律上は禁止されていても、お互い(家族と購入者)同意の上なら 成立する。なので、地方では食料と引き換えに人を売る事例が多い。特に今回は納税迄関わる。最悪村の半数以上を納税として差し出すことを考えれば商人たちに気に入られてその一人で済むなら安い。そう考える事も多い。当時の村人の人口にはこうした”余剰資金的意味合い”も含む。この中において、村の政策に口出し、そして失敗した者…への風当たりは強い。それ位、このザガートン南部での村々は痩せていた。
「でも、手札としては…。」
「一応おらが森魔法もってるだ。但し、今のあの畑はもう育ち切ってるから無意味だべ。」
「そう言えば皆様は勇者とお聞きしましたが?}
「あ…いえ…。」
慌てて音無が否定する。
「でも森魔法なんて…。」
「一応、これは植物魔法だべ。種からでないと、意味がないべ。」
全員の落胆のため息が響く。
「え…あの…。一言いいですか?」
「何?}
「確か麦って、食べる場所、”種”ですよね・・・。」
「「ああー!!」」
その日の夜、村が寝静まったころ、が、勇者たちとタミさんが夜の麦畑の前に集合していた。一応お伺いを井原に立てたところ、そういう事ならタミさんに任せると来ていた。勇者を失うリスクを考えれば森魔法の公開程度なら、巻き返せると判断したためだ。そのあとの亜人の突き上げが怖い。
「何をするつもりだ。」
一応監視として月光が付き添っていた。他のメンバーは現在、転送でダンジョンに帰り、睡眠をとっていた。魔人は魔物に即するものの、それ以外の部分においては全て”人間”であった。特に魔人を人間運用して、”外見が変化しないスキルしかつけていない”月光たちにとって種族習性はほぼ人間と変わらなかった。その為、ダンジョン外での適度な睡眠と食事は必須だった。ので、起きていられる月光が今回彼らの見張り役となった。
「んだば。収穫するんだべ。全部。」
「は?」
流石に月光たちも呆れた。これはこのままでは泥棒になってしまうからだ。
「んで、植えてもう一回麦の実らすだ。そんで、その時に、魔法かけた麦実らすだ。」
「…いいのか?」
「ただ、極秘にやらないと、ミレイは…。」
「まずは何するんだ?}
「んだば、まず全部麦刈るだ。」
そう言った瞬間、一気に村のすべての麦の穂が…切断された。
「一応オラでも、この程度はできるだ。んだば、ここからがみんなだべ。」
「え?」
「切るのはいいだ。んでも、ここは月光さんの領域。麦の回収は自分たちでしないといけないべ。んだからみんな頼むっぺ。」
そう言うとタミさん自ら麦を抱えて端によけ始めた。
「後はどうするんだ。」
「そこから。麦を外すべ。」
中世時代麦の種は全て”手作業”で外すことが多かった。実際この村でそう言う”麦の収穫”で使う農具は見当たらなかった。
「それではだめだな。ダークマターでこういうの作れるか?」
飯垣が地面にある形の図面を書き始める。
「これはなんだべ?}
「歴史の教科書でよく出てくる農具の”千歯こき”だ。この狭い線の間に麦を通して引き抜くと麦が簡単に落ちる。だから…子供たちは麦を受け取ってそれで引き抜いてくれ。」
「んだ、それはおらがやるだ。」
「ん?」
「ま、この辺は秘策があるっぺ。任せるだ。」
しばらく黙々と全員が、麦を集め終わると、タミさんは一階だけ、ダークマターで千歯こきを使い麦を収穫すると、そのまま後の麦を影の中に押し込んでしまった。
「どうしたの?」
「んだば、採取の代わりにおらには植物学があるだ。それと連携させてこれをこうして…。」
タミさんの影から出てきたのは小山になった麦だった。
「ほんとはこっから、石臼引いて粉にスッペが。ここはこのまま、土作ってからだべ。」
一応こうして麦を買った後、即に”土壌”を使い、肥沃な土に変えてもいいが、飢える予定の種まで巻き込んでしまっては問題がある。そこで全員でのけてもらっていた。
「土生成!土壌!」
その言葉とともに、最初に何かが土の上に乗り、そして土がうねり始め、グルグル回り始める。
「これは…。」
「一応、うちの肥料入りの土混ぜただ。んで土壌でかき混ぜただ。これで…。」
「混ぜたのは正解だと思う。後は…。」
「オラは一反ずつ土壌整えていくだ。その間にみんなで種植えてくだ。」
「どうやって?」
「…飯垣さん頼んだだ。」
流石に都会の子供ともなると、麦がどうやって植えられ、そして粉になる釜で知らない子が多かった。
「あのな、これは結構常識だぞ。」
「いや、私も知らないが?」
月光の答えに飯垣はため息しか出なかった。
『あの土に関しては、秘密にしてもらいたいため…今回は提供できません。すいません。』
という亜人同盟のそっけない回答だった。それはそのままタミさん経由で奥原たち勇者チームに伝えられた。
「なんでよ!冷たいわね。亜人も。」
「そんなものが本当にあるんですか?」
「どうも井原も一度聞いただけで、うろ覚えで注文したから、何とも言えないけどね。でも、どうする?」
「父も母ももう冷たくて…。」
「分かってるミレイさん。」
全員が、頭を抱えている。対応が速いのはうれしいが…現在ミレイは半分生贄みたいな形で、行商人の所に送られている。寒村において、気に入った娘がいた場合、支度金と称してその娘を売り払う”人身売買”は横行していた。法律上は禁止されていても、お互い(家族と購入者)同意の上なら 成立する。なので、地方では食料と引き換えに人を売る事例が多い。特に今回は納税迄関わる。最悪村の半数以上を納税として差し出すことを考えれば商人たちに気に入られてその一人で済むなら安い。そう考える事も多い。当時の村人の人口にはこうした”余剰資金的意味合い”も含む。この中において、村の政策に口出し、そして失敗した者…への風当たりは強い。それ位、このザガートン南部での村々は痩せていた。
「でも、手札としては…。」
「一応おらが森魔法もってるだ。但し、今のあの畑はもう育ち切ってるから無意味だべ。」
「そう言えば皆様は勇者とお聞きしましたが?}
「あ…いえ…。」
慌てて音無が否定する。
「でも森魔法なんて…。」
「一応、これは植物魔法だべ。種からでないと、意味がないべ。」
全員の落胆のため息が響く。
「え…あの…。一言いいですか?」
「何?}
「確か麦って、食べる場所、”種”ですよね・・・。」
「「ああー!!」」
その日の夜、村が寝静まったころ、が、勇者たちとタミさんが夜の麦畑の前に集合していた。一応お伺いを井原に立てたところ、そういう事ならタミさんに任せると来ていた。勇者を失うリスクを考えれば森魔法の公開程度なら、巻き返せると判断したためだ。そのあとの亜人の突き上げが怖い。
「何をするつもりだ。」
一応監視として月光が付き添っていた。他のメンバーは現在、転送でダンジョンに帰り、睡眠をとっていた。魔人は魔物に即するものの、それ以外の部分においては全て”人間”であった。特に魔人を人間運用して、”外見が変化しないスキルしかつけていない”月光たちにとって種族習性はほぼ人間と変わらなかった。その為、ダンジョン外での適度な睡眠と食事は必須だった。ので、起きていられる月光が今回彼らの見張り役となった。
「んだば。収穫するんだべ。全部。」
「は?」
流石に月光たちも呆れた。これはこのままでは泥棒になってしまうからだ。
「んで、植えてもう一回麦の実らすだ。そんで、その時に、魔法かけた麦実らすだ。」
「…いいのか?」
「ただ、極秘にやらないと、ミレイは…。」
「まずは何するんだ?}
「んだば、まず全部麦刈るだ。」
そう言った瞬間、一気に村のすべての麦の穂が…切断された。
「一応オラでも、この程度はできるだ。んだば、ここからがみんなだべ。」
「え?」
「切るのはいいだ。んでも、ここは月光さんの領域。麦の回収は自分たちでしないといけないべ。んだからみんな頼むっぺ。」
そう言うとタミさん自ら麦を抱えて端によけ始めた。
「後はどうするんだ。」
「そこから。麦を外すべ。」
中世時代麦の種は全て”手作業”で外すことが多かった。実際この村でそう言う”麦の収穫”で使う農具は見当たらなかった。
「それではだめだな。ダークマターでこういうの作れるか?」
飯垣が地面にある形の図面を書き始める。
「これはなんだべ?}
「歴史の教科書でよく出てくる農具の”千歯こき”だ。この狭い線の間に麦を通して引き抜くと麦が簡単に落ちる。だから…子供たちは麦を受け取ってそれで引き抜いてくれ。」
「んだ、それはおらがやるだ。」
「ん?」
「ま、この辺は秘策があるっぺ。任せるだ。」
しばらく黙々と全員が、麦を集め終わると、タミさんは一階だけ、ダークマターで千歯こきを使い麦を収穫すると、そのまま後の麦を影の中に押し込んでしまった。
「どうしたの?」
「んだば、採取の代わりにおらには植物学があるだ。それと連携させてこれをこうして…。」
タミさんの影から出てきたのは小山になった麦だった。
「ほんとはこっから、石臼引いて粉にスッペが。ここはこのまま、土作ってからだべ。」
一応こうして麦を買った後、即に”土壌”を使い、肥沃な土に変えてもいいが、飢える予定の種まで巻き込んでしまっては問題がある。そこで全員でのけてもらっていた。
「土生成!土壌!」
その言葉とともに、最初に何かが土の上に乗り、そして土がうねり始め、グルグル回り始める。
「これは…。」
「一応、うちの肥料入りの土混ぜただ。んで土壌でかき混ぜただ。これで…。」
「混ぜたのは正解だと思う。後は…。」
「オラは一反ずつ土壌整えていくだ。その間にみんなで種植えてくだ。」
「どうやって?」
「…飯垣さん頼んだだ。」
流石に都会の子供ともなると、麦がどうやって植えられ、そして粉になる釜で知らない子が多かった。
「あのな、これは結構常識だぞ。」
「いや、私も知らないが?」
月光の答えに飯垣はため息しか出なかった。
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