魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”

どたぬき

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第11章 出向社員的ダンジョンマスター

第375話 ワープができるのがダンジョンマスターの利点の一つです。

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「でも急だよな…。」
「決まったのも急なの。」
 この話、言いだすのに二日、向こうでもどうも新人用プログラムを組んでくれるらしくそのセッティングに一週間あると聞いて、先仁王に説得。王子に先にこの話をして一日で煮詰めた後、決定した。
「でも、ふと思ったんだ、海の向こうだろ?どうやって行くんだ?」
「アラン。私はあなたに言っていないことがあるの。できれば他の人には秘密にしてほしいの。」
「何だい?」
「私はダンジョンマスターでダンジョンを持っているの。だから、ダンジョンを使えば行けるのよ。そこまで。」。
「…。」
 しばらく…静寂が訪れた。
「ダンジョンマスターとは?}
「…あっ…。]
 ダンジョンマスターという言葉さえ…知らなかったのか…。
「ダンジョンマスターはダンジョンを滑る魔王とも、神とも言われる存在、その力を使って今まで雨を降らせてきました。」
「では、巫女の力なのだな?}
 …何か理解してもらえない。
「それも力の一端です。私が持っている力の。なので、私の家に来てもらえますか?」
「準備は?」
「必要な物は向こうにある宿舎です。後寝る際に必要な物さえ持って行けばいいので、」
「分かった。待っていろ。すぐに戻ってくる。」
 アランは廊下を走り、…行ってしまった。

「そう言えば。そなたの家に来たことが無かったな。」
「そうですね。」
 歩いて向かったのはこの王国にしても小さい建物で、可愛い文字で”水の巫女診察院”と日本語で書かれていた。
「ここか…。」
「はい。」
 アランの格好もお忍びで使う”一般冒険者”の格好であり、普段の格好である。
「あ、言われた通り今日は閉店しておきました。」
 出てきたのは、エルフの少年だった。
「ミサキ君。ありがと、地下、使うから。」
「あ、はい。どうぞこちらに。今日出発で?」
「うん。早く行って現場に慣れたいんだ。」
 そう言っているものの、王子の頭には理解ができなかった。
「どういう意味だ?」
「私も一大決心なんです。応じ、私はダンジョンマスターであり、人間ではありません。」
「は?」
「私は種族上は”水の精霊”です。こうして変身して人間になっていますが、実は精霊なんです。」
「そ、そうなのか?全然見えないけど。」
「はい。それでも、愛してくれますか?」
 じっと王子は水木さんを見つめる。どうも、顔を見た感じ理解していない。分かる。が…。
「愛そう。君は君だろ?」
「水木様。」
 水木は泣いて…その場に跪いた。
「ありがとう。ありがとう。」
「それで、こちらに。」
 水木は手招きすると、診療所の床の一部を取り外す。そこには、石造りの階段があった。
「ここが私ダンジョン”水巫女の庭園”です。正確にはここもそうなんですけど、この奥に、リンシュメルトに入り口があります。」
「はい?船ではないのか?」
「船で外洋に出ると大方私たちは死んでしまいます。」
 偽装で出発を考えた際に、亜人同盟のトップの南から聞かされたのが”外洋の危険性”だ。どうもかなりの確率で嵐に会い一部を除いて運航もできないらしい。新大陸発見の報を聞き、数人の勇者が外洋に挑んだがいずれも大嵐ではじき返された。また、井原さんの所にミヨちゃんとによると、嵐は一年中頻発しており雲を超え上を飛ばない限り越える事はできない。だそうで、船の旅は近海のみとなった。但し、海を自分のダンジョンの”領域”にすればそこはこっちの制御下になり嵐は…DPで抑えれる。という事になるのではないかと思われる。スキュラの本拠地が海の上という話が出たからだ。
「そ、そうなのか?」
「はい、なので、船も建設したものの、外洋は出港せず、2国間の往復のみとなっています。」
 この国と、マルワール帝国は脇に割譲された魔王国や商業連合国に囲まれていて、しかも国の大きさがマルワール帝国の町二つ分しかない小国である。その隣接した商業連合国共、こちらから納税代わりの献上品でどうにか国に攻めさせることをやめさせていた。といういきさつがある小国である。そこでマルワール帝国が船を持ってきたことで海洋法面が期待された。で、これである。
「では、リンシュメルトには行けないではないか?」
「確かに、だからこそ、ダンジョンマスターの力を使う。」
「どういう事だ?」
「ついて来て。」
 アランと水木が階段を降りていくと、廊下があり、その奥にはもう一つの扉がある。
「これは?」
「中に入って。それからよ。」
 中に入ると、そこは品物…なめした革が積まれた倉庫だった。
「ここは?}
「リンシュメルトです。正確には私達の拠点の一つである”イーハ商会”の拠点の一つ、リンシュメルト支部です。」
「はい?」
「ささ、上がってください。挨拶したいので、」
 上に上がると数人のメイドがメジャーを片手に来た男性の背丈や細かい寸法を測っている。そして、ちょうどすぐそばのカウンターでは少年が一人、帳簿に何かを書いていく。
「ん?おう、水木。」
「ジャン。この方がアラン王子です。」
「おう、よろしくな、にーちゃん。当分ここで暮らすことになるからよ。」
「ここは?」
「ここはもうリンシュメルトだぜ。外に出て見ろよ、おっと、一つ注意な。ここはもうリンシュメルトだから外に出たら普通の人だ、覚えておくことだな。」
「わ、分かった。」
 アランが外に出てみると、そこは高層マンションや5階建ての建物が乱立する、漆喰みたいな壁の建物だった。
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