魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”

第８章 勇者プロデューサーへの道

第３０３話 独占すると非難するなら、ご近所に分けてみる精神

「今まで、亜人同盟は勇者を独占するって話になってるのよ。で、勇者側も、装備や依頼とか訓練場、食事への不満。いくらでもこの世界では満足できないと思うのよ。」
　確かに…。この世界の食事のレベルは言っては悪いが俗にいう改革前異世界食だ。硬いパンや味気ないスープ、冒険者弁当だけが心の支えと言われてもおかしくないし市場調査的にも大方この新しい町での飲食はしばらくはそれが続くだろう。ラウンジでの食事も…スコッチモドキ一本とパンだった。ハムもない。
「でも支援する意味はあるだわさ？」
「現在ギルドが総力を挙げ、他の大陸の勇者を捜索しているのよ。でも現在勇者が生息しているのは、この大陸だけ。」
「え！？」
　全員がおどろのく゚のも訳がない。勇者がこの大陸にしかいないという事は私も信じがたいからだ。
「た？他の大陸があるんですか！？」
「うん、それが分かっている、千鳥万花の本拠地もそのはずよ。」
「確かに…。」
　一応所在地は来れまいという意味で公開している。そして、世界地図を作成中であるが、同じ地形は存在していない。
「で、勇者たちの生活を支えるのに一般冒険者だと、色々パワーだけが余るのと、他の大陸にも勇者が行って冒険して欲しいのよ。で、そこで欲しいのがスポンサーって事よ。」
　流石に話が飛びすぎて、勇者たちがこっちを見る目が…白目向いてるように見えるな。
「スポンサー？」
「一応、亜人同盟全体でも募集するし、取引相手であるあなた方にもできれば数人の勇者を引き受けて欲しい。こうすることで勇者独占という…そう言うのを回避したい。」
　勇者を支援させて…。俗にいうダンマス物で言う勇者取り込みをさせる国家というのも珍しいな…だが歴史によると、好き勝手に勇者を呼びまくった王様がいてその処理と考えれば、楽と言えば楽か…。
「素直だな。」
「あんまり鳥海さんに裏見せないと丁々発止だけで数年かかるわ。」
「確かにだわさ、ただし…。」
　鳥海さんが音無さんたちを睨む。確かに結論が出ないにらみ合いや皮肉の言い合いをして、相手の機嫌を損ねるよりとっとと話して、後は任せたという方がいいのだろう。
「うちらも選択権があるだわさ。面接させてもらうのと、後、ここに店をするから、その利権をアチシ達にくれるならいいだわさ。」
「いいわよ。但し、貸出規約は履行してもらう。後…ここで何を売るの？」
「どうする？」
「肉、後、革製品の店だ。後家具も置く予定だ。それでいいか？」
　現在ある商品のうち、塩を除く者だ。もう少し販路があれば昆布だしも売るところだが昆布はギリギリあるが。まだ若芽がない。塩もエルフ塩に負けるが、エルフ塩の本場で塩勝負を仕掛けるほど馬鹿じゃない。
「いいわよ、そう言えば、革製品は私達薄いのよ、できればミーアに皮…売ってあげて。かなり喜ぶと思うわ。」
「いいだわさ。」
　思いっきり二つ返事だ。
「じゃ。」
　立ち上がると手を叩く、しまうって事だろう、私たちも立ち上がると、ダークマターで作られたテーブルが消え…そして元の開店前の店に戻った。
「お願いね。後は…正式な日時はメールで送るけど…そのつもりで日を開けておいてねー。
　軽い足取りで去っていくブレザー少女を前に…。頭が痛くなる想いだった。