魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”

第８章 勇者プロデューサーへの道

第２９７話 建築家の夢は都市建設が多いです。

　我々はとりあえず、ギルドから外に出て丘の上に向かう、ここ個から開かれた草原があり、そして、リンシュメルトの全容が…。
「おおー、見えて来たぜ。」
「俗にいう、ファンタジー系の基本みたいな城だわさ。王都とは違う…。」
　…見えた全貌は定番の門にその外周を包み、中に街並みが…５階建てのアパートが包む。その一階には店舗が並び…。
「確かにきれいですね。」
「ああ…・凄いな、さすがファンタジーだ。」
「異世界に来た気がしました。」
　ノートルダム寺院にも似た巨大な尖塔型の教会からは金が鳴り響き…。数多くの…数多くの…。
「どうしただわさ？」
　城壁のその工夫と白亜の壁には天使が描かれ、奥にある城はイシュバンシュタイン城に似せて…。
「どうした、ミラージェ…。」
　その欠点を思いつく限り改善し…。そして心血を注いだような…。
「おい！」
　城門はつり橋式で、ちゃんと堀まである…。そう…。
「あんた…。」
　思った通りの城がそこにある。俺の…私のという余裕さえない…。そう…私の”設計した街”そのものだった。
「泣いてるだわさ。」
「建物好きだからな。」
　否定したいが、この町が設計した者なら大方…この設計図を渡した相手は一人しかいない。そしてそいつはどこで使うか言わなかった。そうか…そうか…。
「そうなのか？」
「この世界で建築家名乗るほどの建物好きだわさ。城の設計とか様々してもらっただわさ。」
「確かに、あの城…そうなのか？」
　設計者の多くは必ず茶目っ気で自分にしかわからない癖や符丁を入れる。私は無名の建築家であり、建築も当然友達の家一軒しかない。がその意匠を入れておくのを頼まれた設計図から外したことが無い。当然だ。それが好きで建築家しているからだ。それが今街を覆い、それが街として動き、街に生きている。なんという僥倖。
「おい！大丈夫か？膝をついて、いや、おい！」
「大丈夫だわさ？」
「ああ…ああ…ああ…。すまない。すまない。少し感に入るところがあってな。」
　これが建築家の夢の一つである。設計した街に人が住み、その生活が便利であること。そして私の町がそこにある事。建てた金も物もないかもしれない。けど…。でも”僕の考えた街”がそこにある。間取りの配置は確かに違うが、そのパーツの全てが私の設計した”定番のファンタジー建築”を踏襲している。定番を侮るな。定番っていいんだぞ！
「大丈夫か？」
「ああ、ああ、
　私は立ち上がると涙をぬぐう。コアを持って来て撮影したい、作った建物がどうなっているのか、まるで、私がサプライズパーティでプレゼントで街一個送られたみたい内インパクトだ。凄すぎて泣き…ない…泣いてまうやろ！