魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”

第６章 勇者と旅芸人

第２４３話 教授の章 戦乱

　通るたびに村を見ると、寄り道しては食料を売り、その食料で村は活気を戻し、ついでに魔法で水を作り、塩も売った。そんな行商人一味は当然狙われる。主に救援後にだ。
「が！」
　崩れ去る盗賊たちを見つめる教授の目は冷たい。少年の体と言えど、Ｓ級勇者である彼にかかれば基本盗賊はナイフの餌食でしかない。
「やるねえ…。」
「軽口はいいが、そこまで愚かか？」
「あの食料を周りに転売するにしても、他の村にあれだけあれば有利になる。あれだけ売った金もこっちにある。どっちを持って行っても、当然徳さ。」
「まあね…。」
「…働け、駄メイド。」
「いやあ、皆さん強いでしょ？働かなくていい。」
　ブラックが影から出てくると、ディルが、幌馬車の上から声をかける。実際護衛は教授以外動いておらず、ブラックでさえ出てこない。オウルは近隣に自分たちの領域を確認すると補給と金貨をＤＰに帰るためにそっちに向かい、商品の補充を行っている。今ジャン達がいるのはそう言う商業連合国の自分たちの領域外だ。
「まあいいと思うぞ、それにその能力値が働けばこの辺一帯の木が吹き飛ぶ、止めてほしいね。」
「俺はどっちでもいいがな、行くぞ？」
　ジャンが面倒そうに御者台に乗る。
「ん？死体はどうするんだ？」
「ああ、ここはもう魔人連盟領地だ。だから放置だ。勝手にダンジョンが食うだろ？あいつらがたとえ前の村の連中だろうが放置だ。変に殲滅すれば魔人連盟とか国家がこっちを嵌めに来る。こっちは向こうに要請されてる”慈善事業”だ。だから手を出さん方がいい。遠くに行けば諦めるだろ？」
「でもいいのか？」
　馬車に乗ると、全員が動き出す、オウルはある程度の指針さえあれば、移動しても捉えてくれるので、説明さえしていれば探して戻ってくれる。
「衣食足りて礼節を知る。今は戦乱だ。仕方ないさ。俺も昔はそれこそ盗人もやったさ。腹が減ってな。」
「そう言う物か？」
「連中の言い分もわかるっていうだけだ。が死にたくねえ。だろ？」
「まあな、行くか。早く去った方がいいな。
「本来のそこのメイドの性格だと、追っかけて村も滅ぼすんだが、さすがにさせてない。やったら最後、俺達が殺される。」
「そうなの？」
　ブラックも荷台に上ると、ゴーレム車が動き出す。
「だって、面倒ごとなんて根本から立った方が面倒じゃないよ？」
「それがまずいんだって、ＤＰ利益減るだろ？ご主人様に迷惑掛かるだろ？」
「…はい。」
　ジャンの苦言にディルはあえて黙ってうなずいた。
「主人様？マスターでなく？」
「まあな、この辺は、話せないでいいか？」
「…分かった。」