魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”

どたぬき

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第5章 決戦!時山田!

第180話 フェルミィの散歩

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「いらっしゃい。」
「いらっしゃいませー。」
 挨拶が響き、夕暮れに来たにもかかわらず人が多い。この店は夜になる前に店を閉める事になっている。というのもこの世界には夜に出歩く風習がない。出れば強盗に殺されかねないからだ。その為夜まで経営するには”宿屋”を併設しないといけない。この定食屋は念のために2Fに寝床があるが、飲みに来たやつに金があるのか?又は夜まで掟材料提供するのか?というと違うって事で。夕方には追い出すことになっている。ただ、その為が、この時間で腹に飯を貯め込むべく大量の人でごった返していた。イーハ商店認定の飲食店でもあるからだ。しかも香草ステーキがある。ついでに裏メニューで、豚骨ラーメンとチャーシュー麺がある。これを大っぴらに出すと近くのイーハ商会の豚骨ラーメンやが怒りそうだからだ。ただ、奥原が考えるにはDPを稼ぐべく、現地人のバイトを雇う計画もあるという。
「あ、イーハ。と鳥海。こっち。」
 奥原が手招きするのはいつもの席であるカウンターだ。ちゃんと椅子が回転する。しないと出にくく怪我の元になる為だ。後テーブルの椅子は軽い素材に差し替えてある。
「どうだわさ?後リンゴパイ一つ、ホールで。」
「わたしはそれに茶を付けた物を頼む。」
「了解だよ、オーダー入りましたー。」
「らっじゃ―。」
「あ、あたし、ホットケーキ。ハワイアン仕立てで。」
 隣を見るとフェルミィもいた。
「あんた!」
「ノンノン。私はイーハと一緒にいるんだよ、ついでに首テレポートも可能。」
 双頭の効果に実は”首蘇生”と”首テレポート”がある。首になった物は死んだ場合どれか一個でも残っていればHP回復効果で蘇生が可能となる。そして首テレポートは
首がいる位置の真横なら無条件で、首がテレポート可能だ。
「腹黒というより意地悪だわさ。」
「井原の魂が混ざるから。本来、清く正しい裏でこっそりさんがこうなっただけだよ、そうだもう一人呼ぶよ。えっと、ベーコン焼きと酒を頼むって。」
「分かったわよ、ベーコン頼んだ。あとパンとミルクね。」
 奥原がカウンターの奥からパンとミルクをテーブルの上に置く、これは奥原のダンジョンで作られた発酵ミルクとバターが混ぜられたパンだ。あのゴブリン村パンよりも進化した感じのパンで”風切り亭”名物パンとなっていた。甘くて少ししょっぱいのだ。そしてミルクも旨味が強い。ので、すっきりする。
「さっきの件ね…。本当は…私は本来・・・。」
 言葉を紡ぐ先にはミラージェがいた。ドレス姿の貴族対応の姿だ。
「仕事はいいだわさ?」
「ああ、向こうに影残してから来たからいいわ。ああ、ンん…。ふふ。」
 ふんわりとしたあったかい微笑みをするミラージェは柔らかい空気だった。
「…。」
「どうかしましたか?あらあら…。」
「…全然違うだわさ?演技?」
 にっこりと微笑み、ゆっくりと首をかしげる姿は貴婦人というか、温和に見えた。がすぐにいつものシャープな目のいつものミラージェに戻った。
「となるのよ、私も少しここのベーコンが欲しくてね。肉を切らしてるの。」
「分かったわよ、でもイーハ、あんた本当に変わってるわね。」
「言うな、一応私だからな、全部、」
 照れた顔で牛乳を喉に流し込む。その脇では光海がホットケーキをゆっくりと肩の鳥と分け合って食べていた。ホイップクリームたっぷりのハワイアン仕立てだ。
「…本当に変わっているだわさ。変人。」
「言うな。」
「でもそう言えば、こっちにダンジョン難民だっけ、そいつらが結構流れて来るね。どうするのよ?」
 ちらっと建物の中を見ると半分は見慣れない顔だ。ついでに要望があり、カウンターには椅子があり、座れるようになっている。
「それが抱え込んでもいいんだけど、食肉が増えすぎてもダメだわさ。で、あれが家族単位の移民があるだわさ、この城外もその難民が建物を作った難民町があるだわさ。
助けてやりたいけど、共和国がどうなるか次第では叩き返さないといけないだわさ。うちの村人返せっていう言い訳だわさ。」
「それは酷いな。」
「対処が遅れてるだわさ、しかも新年の処断のせいで予算がないだわさ。…あるにはあるかもしれないが、無いふうにしてないと自活がないだわさ。だからこそ。」
「何よ。」
「明日の会談が重要だわさ。」
「どこと?」
「魔王国だわさ。ただ奥原ちゃんは気にせず料理をショップ売りして欲しいだわさ。かばうのはうちらの仕事だわさ。頼みたいことができたらガンガン頼むだわさ。」
「分かった。でも井原は?」
「ああ、あたしがショップ売りのルーム担当ザマス。だから商品入れ替えもしてるザマス。後、そろそろ春先、麦の開拓もあるザマス、まだ戦争は来ないザマス。」
 フェルミィがホットケーキをな不で崩しながら食べている、
「あんた酷いだわさ!」
「ならやめたら?キャラ立て。」
「生きがいに何言うだわさ。怖いだわさ。」
「陽華ちゃん、ああなっちゃだめだからね。」
 フェルミィが陽華に微笑みかけるが、見える微笑みが愛想笑いだ。
「じゃ、仕事に戻るよ、じゃーねー。」
 そう言うと、フェルミィが消えていった。
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